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カジキ類の分類学的研究(6 )

京都大学みさき臨海研究所特別報告別冊
Misaki Marine Biological Institute Kyoto University Special Report
No.4, pp.1〜95 June 10, 1968

中村泉・岩井保・松原喜代松:カジキ類の分類学的研究
NAKAMURA, I., T. IWAI K. MATSUBARA: A Review of the Sailfish, Spearfish, Marlin and Swordfish of the World

 
ニシバショウカジキ Istiophorus albicans(LATREILLE)
LATREILLE(1804)はブラジルからえられた標本をもとにして大西洋産のものに対し Makaira albicans を創設した。その後CUVIER(1831)はアメリカのものに Histiophorus americanus を、ケープタウン付近の東大西洋からのものに Histiophorus pulchellus をそれぞれ命名し、またCUVIER(1832)はサントドミンゴからのものを新種 Machaera verifera とし、NARDO(1834)はLATREILLEの用いた標本と同じものに対して新種 Skeponopodus guebucu としてそれぞれ報告した。この間にCUVIER(1831)はフランスで得られたカジキ類の吻に基づいて、属名を与えないで一時的に gracil-rostris および anticipirostris として報告した。GOODE(1880、1882)はこれらを Histiophorus anticipi-rostris および Histiophorus gracilirostris として記載している。しかし大多数の研究者はこれらを不明種として扱っている。そしてついにJORDAN and EVERMANN(1926)およびBREDER(1929)は大西洋産バショウカジキとして4種を認めている。最近では本種の属名として一般に Istiophorus が適用され、大西洋のバショウカジキ属の魚類として1種、I. americanus または I. albicans が認められている(第3表:ニシバショウカジキの学名の変遷)
かつてROBINS(1967年8月23日付私信)はカジキ類の分類の中でバショウカジキ属 Istiophorus の分類が最も混乱しているので、より進んだ研究が行なわれるまでは、インド洋と西太平洋のバショウカジキ属魚類に I. platypterus を、東太平洋のものに I. greyi を、大西洋のものに I. albicans を適用するのが妥当であろうとの見解を表明していた。
 

●種の記載
記載は成魚について行なった。この類は成長に伴う形態の変化がいちじるしいので、稚仔魚についての詳しいことはそれぞれの種の記載のところに主な文献をあげたので、それらを参照されたい。稚仔魚についての総括的な研究はJONES and KUMARAN(1962a)、UEYANAGI(1962b)、上柳(1963a)などによってなされた。

呼称
Aguhhao de veaa、Agulhao(ブラジル);Sailfish、Billfish(英領西インド諸島);Aguja voladora(キューバ);Espadon voilier(仏領西アフリカ);Voilier(フランス);American sailfish(黄金海岸);Fetiso(ファンテ語、黄金海岸);Guebucu(ブラジル土語);Zegl-fisch(オランダ);Becasse de mer(西インド諸島);Pez vela(メキシコ);Atlantic sailfish、Sailfish(アメリカ);Aguja veia(ベネズエラ)。

外部形質
第1背鰭42〜47鰭条。第2背鰭6〜7軟条。第1臀鰭11〜15鰭条。第2臀鰭6〜7軟条。胸鰭17〜20軟条。腹鰭1棘2軟条。
体は延長し(体長は体高のほぼ6.4〜7.3倍)、側扁度は著しい(体長は体幅のほぼ17.4〜23.0倍)。吻は長く(頭長は上顎長のほぼ0.77〜0.93倍)、その横断面は丸い。鱗は多くは1尖頭形で、先端はあまり鋭くなく、ややまばらにならぶ(第1図・C)。鱗の形態もその配列様式もほとんどバショウカジキのそれらと同じで区別がつかない。両顎および口蓋骨に微小な鑪状歯がある。側線は胸鰭の上あたりで湾曲し、以後尾部まで直走する。頭は大きく(体長は頭長のほぼ4.0〜4.6倍)、眼は中庸大、頭部の眼上域はやや隆起する。尾鰭は強大で、深く二叉し、尾柄部付近の両側にそれぞれ2条ずつ隆起線がある。胸鰭はやや下位で、かなり長く(頭長は胸鰭長のほぼ1.1〜1.5倍)、先端は尖る。第1背鰭の形には個体差がみられ一概に記述するのは困難であるが、ほぼバショウカジキのものと同様である。第1背鰭は中央部でもっとも高く、体高よりはるかに高く、帆状を呈し、その外廓は前半ではくぼみ、後半では隆起し、第2背鰭起部の直前で終わる。第2背鰭と第2臀鰭は小さく、同形同大で、後者は前者よりやや前方に位置する。第1臀鰭は中庸大で、その先端は尖り鎌状を呈す。腹鰭は胸鰭より著しく長く、ほぼ肛門に達し、その鰭膜はよく発達する。
第1背鰭の鰭膜は濃青色ないしは青黒色でその上に小黒点が散在する。その他の各鰭はほぼ黒褐色、第1臀鰭基底部と第2臀鰭基底部は多少銀白色を帯びる。体側に淡青色ないしはコバルト色の数個の斑点からなる横しま模様が10数列あるが、これには個体差がある。体の背側は濃青色、体側は褐色がかった青色、腹側は銀白色である。

  第1図
マカジキ科魚類の鱗の配列の模式図。
A. バショウカジキ(成魚) Istiophorus platypterus 
B. バショウカジキ(若魚)Istiophorus Platypterus
C. ニシバショウカジキIstiophorus albicans
D. フウライカジキTetrapturus angustirostris
E・F. クチナガフウライTetrapturus pfluegeri
G. ニシマカジキ Tetrapturus albidus
H. マカジキ(成魚)Tetrapturus audax
I. マカジキ(若魚)Tetrapturus audax
J. クロカジキ Makaira mazara
K. ニシクロカジキ Makaira nigricans
L. シロカジキ Makaira indica
 
内部形質
嗅房は放射状型で47前後の嗅板よりなる。嗅板上に肉眼で毛細血管が認められない(第4図・D)。内臓の形態はほぼバショウカジキのそれと同様である。生殖巣は左右相称。肛門は第1臀鰭起部に接近する。
頭蓋骨は強固で、吻部が延長し、眼後部が短く、全体として細長い。鋤骨腹面および副楔骨腹面の前端部の幅はやや狭い。せつじゅ隆起と翼耳骨隆起はほぼ平行して走る。
脊椎骨中央部の血管棘および神経棘の形状はほぼ三角形であり、翼状突起はほとんど発達しない(第7図・C)。脊椎骨数は12+12=24。
  第4図
カジキ類の嗅房の模式図。
A〜C. メカジキ Xiphias gladius 
D. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans 
E. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri 
F. ニシマカジキ Tetrapturus albidus 
G・H. ニシクロカジキ Makaira nigricans 1. 軸(axis) 2. 嗅板(nasal lamina)の側面図。
第7図
カジキ類の中央部脊椎骨の模式図。側面図および腹面図。腹面図は翼状突起の発達の様子を示す。
A. メカジキ Xiphias gladius B. バショウカジキ Istiophorus platypterus C. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans D. フウライカジキ Tetrapturus angustirostris E. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri F. ニシマカジキ Tetrapturus albidus G. マカジキ Tetrapturus audax H. クロカジキ Makaira mazara I. ニシクロカジキ Makaira nigricans J. シロカジキ Makaira indica
 

最大体長
尾叉長でほぼ2.5mになるといわれる。LA MONTE(1945、1952)によると本種の最大体長は太平洋産のバショウカジキより小さいという。本研究で測定した最大のものは体長200cmであった。バハマで全長約3mのものが漁獲された記録がある(SCHWARTZ、1961)。

分布
本種は大西洋の熱帯域・亜熱帯域・温帯域に広く分布する。とくにメキシコ湾・カリブ海・西インド諸島・フロリダ近海などに多数回遊してくる。北方ではニューイングランド近海でえられた記録がある(BAIRD、1873;KENDALL、1908;NICHOLS and BREDER、1927)。また地中海への回遊も知られているが、これについての報告は少ない(LA MONTE、1958a)。PERONACI(1966)は本種について大西洋東部には多いが、地中海には稀であると述べている。
標識放流の結果(MATHER、1960)から推定すると、本種はマグロ類が行なうような大規模な渡洋回遊を行なわないようである。
本種の稚仔魚はメキシコ湾(JONES、1962)やメキシコ湾流流域(とくにフロリダ近海とアメリカ東海岸沖)で多く採集されている(VOSS、1953;GEHRINGER、1956)。

付記
本種は大西洋海域におけるマグロ・カジキ延縄漁業でかなりの漁獲を見る。漁獲統計を処理する場合など、インド・太平洋のバショウカジキと本種とを区別した和名を本種に与えた方が望ましいと判断されるので、大西洋海域に分布するという意味で、本種にニシバショウカジキなる和名を提唱する。
本種はインド・太平洋海域のバショウカジキと成魚期のものでは著しく類似し、両種を区別する明確な種的差異を見出せない状態にある。しかし少くとも体長90cm前後の段階では、両種は外部形態においてはっきりとした相異を示す(第14図)。本種はインド.太平洋のバショウカジキより長い胸鰭と大きい尾鰭を有する。今後さらに多くの資料を集めて、全成長段階を通じてこの両種の比較検討を行なう必要がある。
本種の稚仔魚に関する研究成果は古くから非常に多い。代表的なものはCUVIER(1831)、DE SYLVA(1963a)、TINSLEY(1964)などである。BEEBE(1941)、VOSS(1953)およびGEHRINGER(1956)は本種の初期生活史を明らかにした。

第14図>
バショウカジキ Istiophorus platypterus(B)とニシバショウカジキ Istiophorus albicans(A)の外部形態の比較。目盛りは30cm。
 
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