●種の記載 記載は成魚について行なった。この類は成長に伴う形態の変化がいちじるしいので、稚仔魚についての詳しいことはそれぞれの種の記載のところに主な文献をあげたので、それらを参照されたい。稚仔魚についての総括的な研究はJONES and KUMARAN(1962a)、UEYANAGI(1962b)、上柳(1963a)などによってなされた
第7図
カジキ類の中央部脊椎骨の模式図。側面図および腹面図。腹面図は翼状突起の発達の様子を示す。
A. メカジキ Xiphias gladius B. バショウカジキ Istiophorus platypterus C. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans D. フウライカジキ Tetrapturus angustirostris E. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri F. ニシマカジキ Tetrapturus albidus G. マカジキ Tetrapturus audax H. クロカジキ Makaira mazara I. ニシクロカジキ Makaira nigricans J. シロカジキ Makaira indica
第8図
カジキ類の尾部骨格。
A. メカジキ Xiphias gladius B. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans 1. 第1番目の下尾軸骨(first hypural) 2. 下尾軸骨板(hypural plate) 3. 最後から2番目の下尾軸骨(hypural before last) 4. 最後の下尾軸骨(last hypural)。
分布 本種は全世界の熱帯・温帯さらには寒帯にまで広く分布し、かなり沿岸にまで回遊する。本種は地中海・黒海・紅海などのいわゆる付属海へも入り込む。地中海からの本種がとれた報告は多いし(FARBER、1883;CARUS、1893;SELLA、1911;BORCEA、1927;SANZO、1931;LUTHER and FIEDLER、1961;BINI、1965など)、黒海からも(ROSA、1950;PAVLOV、1959)、またその縁海であるマルマラ海(DEMIR、ACARA and ARIM、1957)、そのほか紅海からも(ROSA、1950)本種が漁獲されることが報告されている。また北方のアイスランド(SAEMUNDSSON>、1936、1946)や北海(АНДРИЯШЕВ、1954)からも本種が漁獲されている。JONSGÅRD(1959)は南極海で捕獲されたシロナガスクジラに本種の吻がつきささっていた例を報告している。
本種の稚仔魚はメキシコ湾やメキシコ湾流流域(ARATA、1954)、北西大西洋温帯域(TÅNING、1955)、北西太平洋熱帯域・温帯域(NAKAMURA et al., 1954;矢部、1951;矢部ほか、1959)、その他インド洋(JONES and KUMARAN、1962b)などから多数採集されている。SANZO(1910、1922、1930、1931)は地中海で本種の卵と仔魚を採集している。
第11図
メカジキ Xiphias gladius の成長に伴う外形の変化。A. 全長6.4mmの個体 B. 全長11.0mmの個体 C. 全長160mmの個体 D. 全長240mmの個体 E. 全長359mmの個体 F. 眼の後縁から尾叉まで268mm(全長約380mm)の個体 G. 全長554mmの個体 H. 全長827mmの個体 I. 全長約1.2mの個体 J. 全長約3mの成魚。A〜Hは矢部ほか(1959)より略写。