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カジキ類の分類学的研究( 3 )

京都大学みさき臨海研究所特別報告別冊
Misaki Marine Biological Institute Kyoto University Special Report
No.4, pp.1〜95 June 10, 1968

中村泉・岩井保・松原喜代松:カジキ類の分類学的研究
NAKAMURA, I., T. IWAI K. MATSUBARA: A Review of the Sailfish, Spearfish, Marlin and Swordfish of the World

 
●カジキ類(成魚)の科・属および種の検索
 
第9図
カジキ類の外部形態。各図の右側の図はそれぞれの胸鰭基部における側扁度を表わす。矢印は検索の際に重要な点を示す。A. メカジキ Xiphias gladius B. バショウカジキ Istiophorus platypterus C. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans D. フウライカジキ Tetrapturus angustirostris E. チチュウカイフウライ Tetrapturus belone F. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri G. ニシマカジキ Tetrapturus albidus H. マカジキ Tetrapturus audax I. クロカジキ Makaira mazara J. ニシクロカジキ Makaira nigricans K. シロカジキ Makaira indica
 

 a1. 腹鰭はない。尾柄隆起は1対。吻は長く剣状で、その横断面は扁平である。体に鱗がない。歯がない。第1背鰭の基底は短く、第2背鰭といちじるしく離れている(メカジキ科Xiphiidae、メカジキ属 Xiphias )。…メカジキ X. gladius LINNAEUS、第9図・A
 a2. 腹鰭はある。尾柄隆起は2対。吻は比較的短く、その横断面はほぼ円形である。体は細長いとげ状の骨質鱗をこうむる。歯は小さい。第1背鰭の基底は長く、第2背鰭と接近する(マカジキ科 Istiophoridae)。
 b1. 第1背鰭はいちじるしく高くて、帆状である。腹鰭条は非常に長くて、鰭膜がよく発達する(バショウカジキ属 Istiophorus)。
 c1. 体長90cm前後の個体では、胸鰭および尾鰭が短い。インド・太平洋に分布する。…バショウカジキ I. platypterus (SHAW and NODDER)、第9図・B
 c2. 体長90cm前後の個体では、前種より明らかに胸鰭および尾鰭が長い。大西洋に分布する。…ニシバショウカジキ I. albicans(LATREILLE)、第9図・C
 b2. 第1背鰭は体高より僅かに高いか同高または僅かに低い。腹鰭条はあまり長くなく鰭膜はあまり発達しない。
 d1. 第1背鰭前部は体高とほぼ等しいか、体高より高い。体の側扁度はいちじるしい。眼前部から第1背鰭起部にいたる頭部外縁の隆起はないか、ややいちじるしく認められる(フウライカジキ属 Tetrapturus )。
 e1. 第1背鰭の前部鰭条はやや高いがそれ以後、後部までほぼ同じ高さである。肛門は第1臀鰭起部よりかなり前方に位置する。第2臀鰭は第2背鰭よりかなり前方に位置する。
 f1. 胸鰭は幅狭くて短い。
 g1. 吻はいちじるしく短い。…フウライカジキ T. angustirostris TANAKA、第9図・D
 g2. 吻はやや長い。…チチュウカイフウライ T. belone RAFINESQUE、第9図・E
 f2. 胸鰭は幅広くて長い。…クチナガフウライ T. pfluegeri ROBINS and DE SYLVA、第9図・F
 e2. 第1背鰭前部の鰭条は体高よりやや高いかほぼ同じ高さで、後方にいたるにしたがって次第に低くなる。肛門は第1臀鰭起部の直前に位置する。第2背鰭と第2臀鰭はほぼ対位する。
 h1. 胸鰭は幅広く、先端は丸い。第1背鰭および第1臀鰭の先端は丸味をおびる。…ニシマカジキ T. albidus POEY、第9図・G
 h2. 胸鰭は幅狭く、先端は尖る。第1背鰭および第1臀鰭の先端は尖る。…マカジキ T. audax (PHILLIPI)、第9図・H
 d2. 第1背鰭前部は体高より低い。体の側扁度はいちじるしくない。眼前部から第1背鰭基部にいたる頭部外縁はきわめていちじるしく隆起する(クロカジキ属 Makaira )。
 i1. 胸鰭は体側に接着させることができる。側線は1本でなく複雑である。
 j1. 側線は単純なループ状である。…クロカジキ M. mazara (JORDAN and SNYDER)、第9図・I
 j2. 側線は複雑な網目状である。…ニシクロカジキ M. nigricans LACÉPÈDE>、第9図・J
 i2. 胸鰭は体側に対してほぼ垂直に直立し、体側に接着させることができない。側線は不明瞭であるが1本ある。…シロカジキ M. indica (CUVIER)、第9図・K

 カジキ類の外部形態による検索は、この類の外部形態が魚の成長とともに著しく変化するので、全成長段階に適用できる検索を作製することは困難である。ここに示した検索はほぼ成魚にのみ適用できるものである。将来各成長段階について充分な資料が得られたならば、各成長段階に応じた検索を案出することが望ましい。(カジキ類の検索図

 

●カジキ類の各属の標徴

 メカジキ科魚類とマカジキ科魚類の相違についてはすでにカジキ上科魚類についての記載と検索のところで述べたので、ここでは各属の他の属から明確に区別し得る標徴について簡単に述べる。
・メカジキ属 Xiphias
 成魚に鱗および歯がない。腹鰭も腰帯もない。尾柄の両側にそれぞれ1個ずつ尾柄隆起を有する。尾柄部腹側と背側に1個ずつの欠刻がある。成魚では第1背鰭基底が短くて第2背鰭と著しく離れている。吻は長く、幅広く扁平である。体はほとんど側扁しない。頭蓋骨はやや強固で、幅が広い。頭蓋骨背面にせつじゅ隆起と翼耳骨隆起が後端部でやや発達するが、上耳骨および翼耳骨の後突起はほとんど発達しない。上後頭骨隆起はやや発達する。脊椎骨中央部の神経棘および血管棘はやや扁平である。脊椎骨数は26(15+11=26または16+10=26)。翼状突起は発達しない。
・バショウカジキ属 Istiophorus
 背鰭はいちじるしく高い帆状を呈す。腹鰭条は非常に長くて、ほぼ肛門に達し、鰭膜がよく発達する。体側に淡青色の数個の円点からなる横しま紋様が10数列ある。体の側扁度はいちじるしい。眼前部から第1背鰭基部にいたる頭部外縁上の隆起は明瞭である。頭蓋骨は幅狭く細長い。脊椎骨中央部の神経棘および血管棘はほぼ三角形状を呈す。脊椎骨数は12+12=24。翼状突起はあまり発達しない。
・フウライカジキ属 Tetrapturus
 背鰭は体高よりやや高い。腹鰭条はやや長いが鰭膜の発達はよくない。体は側扁する。眼前部から第1背鰭基部にいたる頭部外縁は、マカジキとニシマカジキを除いて、直線状である。頭蓋骨は幅狭くて細長い。脊椎骨中央部の神経棘および血管棘はほぼ平行四辺形状を呈する。脊椎骨数は12+12=24。翼状突起はあまり発達しない。
・クロカジキ属 Makaira
 背鰭は体高より低い。腹鰭条は短く、鰭膜の発達は悪い。体はやや側扁する。眼前部から第1背鰭基部にいたる頭部外縁上の隆起はいちじるしく発達する。頭蓋骨はがっちりしていて幅が広い。脊椎骨中央部の神経棘および血管棘は高い台形状を呈す。脊椎骨数は11+13=24。翼状突起はきわめてよく発達する。

 

●考察

 カジキ類はサバ亜目魚類のうちでもっとも特化の程度が高い1群と考えられているが、この類は他のサバ亜目魚類と、(1)鰾に気道をもたないこと、(2)主上顎骨は伸出不能の前上顎骨に固着すること、(3)頭蓋骨の眼前部・吻部が延長し、眼後部が縮小していること、(4)ろ頂骨は上後頭骨の介在により分離すること、(5)眼窩楔骨がないこと、(6)基底楔骨が存在すること、(7)前耳骨は動眼筋室の骨質の屋根部になっていること、(8)脊柱は神経弓門および血管弓門と癒合した強固な椎体を有すること、(8)肩帯は分岐した後せつじゅ骨で頭蓋骨に付着すること、(10)中烏喙骨がないこと、(11)胸鰭の輻射骨は多少とも砂時計状を呈し、その数は4個であること、などの重要な共通形質を有する(REGAN、1909)。しかしこの類は(1)前上顎骨が非常に長く突出して剣状の吻を形成し、(2)主上顎骨が吻長の半ばにも達せず、(3)長い吻を支えるために鼻骨が著しく発達し、額骨と前額骨が著しく幅広く、(4)頭蓋骨背面上の薄板状隆起があまり発達せず、(5)腹鰭はないか(メカジキ科)、あっても1棘2軟条で互いに固着してひも状となり、溝中にたたみこむことができ、(6)脊椎骨中央部の神経棘および血管棘はメカジキ科魚類ではやや平坦になり、マカジキ科魚類では著しく平板状を呈することなどの多くの形質で特化している。また特異な鰭や吻の形態などの外部形態からもこの類は明確に他のサバ亜目魚類から区別される。そして松原(1955)の分類体系にしたがえば、カジキ類はサバ亜目 Scombrina 内の1上科、カジキ上科 Xiphiicae に置かれる。現在までのところ世界に産する本上科魚類を前述のごとく2科4属11種に分類するのが妥当であると考える。
 メカジキ科 Xiphiidae のメカジキ Xiphias gladius は多くの外部形質や内臓系の違いからも、GREGORY and CONRAD(1937)の論じた眼下骨、後翼状骨、縫合骨、基底楔骨、鼻骨、篩骨、前歯骨、後せつじゅ骨、腰帯、脊椎骨数、推体の形、前神経関節突起、後神経関節突起、神経棘、前血管関節突起、後血管関節突起、血管棘、下尾軸骨などの重要な骨格上の形質の違いなどからみてもマカジキ科 Istiophoridae の魚類とはっきり区別される。
 マカジキ科内の3属については、従来多くの研究者によって、バショウカジキ類は Istiophorus に、フウライカジキ類は Tetrapturus に、シロカジキ・クロカジキ類は Makaira にふくめられた。マカジキ類は Tetrapturus にも Makaira にも入れられたが、本研究の結果では Tetrapturus に入れるのが妥当と思われる。骨格上の形質からみると、クロカジキ属 Makaira は(1)がっしりとした幅広い頭蓋骨を有すること、(2)鋤骨腹面と副楔骨腹面の前部が幅広いこと、(3)脊椎骨中央部の神経棘と血管棘は脊の高い台形を呈すること、(4)翼状突起がきわめてよく発達すること、(5)脊椎骨数が11+13=24であることなどの形質から他の2属、バショウカジキ属 Istiophorus およびフウライカジキ属 Tetrapturus とはっきり区別できる。
 Makaira はクロカジキ M. mazara 、ニシクロカジキ M. nigricans およびシロカジキ M. indica の3種をふくむ。クロカジキとニシクロカジキは側線系の違いを除いては形態的にはもちろん、生態的にもきわめてよく似ている。胸鰭の強直性を重視してシロカジキを別属 IstiompaxMarlina に入れる研究者もあるが(第11表)、胸鰭の強直性と側線系以外の形質でシロカジキ、クロカジキおよびニシクロカジキの3種はきわめてよく似ているので、筆者らはこれら3種を Makaira に入れるのが妥当であると考える。
 IstiophorusTetrapturus の2属は外部形質からは、はっきりと区別できるが、骨格上の形質ではやや類似している。しかし頭蓋骨の形態と脊椎骨中央部の神経棘および血管棘の形態などから両属を区別することができる。
 Istiophorus はバショウカジキ、I. platypterus とニシバショウカジキ、I. albicans をふくむ。この両種は非常によく類似していて、現段階の研究結果ではこの両種の成魚期における分類形質が明確でない。
 Tetrapturus はフウライカジキ T. angustirostris 、チチュウカイフウライ T. belone 、クチナガフウライ T. pfluegeri 、ニシマカジキ T. albidus およびマカジキ T. audax をふくむ。多くの多部形質および内部形質について検討してみると、このうちフウライカジキ、チチュウカイフウライ、クチナガフウライはきわめて多くの共通形質を有する。一方ニシマカジキとマカジキも多くの共通形質を有する。Tetrapturus のうちで前3種と後2種の間にやや相違がみられるが、頭蓋骨や脊椎骨などに重要な共通点がみられるので、属を分けたり亜属を設けたりする必要はないと考える。
 HIRASAKA and NAKAMURA(1947)および中村(1949)は脊椎骨数、体の側扁度、背鰭の高さ、体高、腹鰭長、側線系などの違いからシロカジキ属 Marlina およびクロカジキ属 Eumakaira をシロカジキ亜科 Marlinae に、フウライカジキ属 Tetrapturus 、バショウカジキ属 Istiophorus およびマカジキ属 Kajikia をフウライカジキ亜科 Tetrapturinaeに含めた。ROBINS and DE SYLVA(1960)はこれらの形質に吻の成長型の差異と魚体の大小を加え上記の分類方式を支持したが、この2群を亜科に置くことには賛成していない。松原(1955)は彼らによってとりあげられた形質は亜科を設定するほどの論拠にはなり得ないとして、2亜科の設定に反対してマカジキ科を HistiophorusTetrapturus および Makaira (マカジキはこの属にふくめられている)の3属に分類した。上柳(1963b)は吻の成長型、背鰭の成長に伴う変化および若干の生態的知見について考察し、マカジキ科魚類をA・B2群に分け、A群にフウライカジキ、バショウカジキ、マカジキを、B群にクロカジキ、シロカジキを入れ、A群のうちではマカジキがB群に最も近いと結論しているが、亜科の設定には積極的に賛成していない。上柳・渡辺(1965)はマカジキ科魚類の脊椎骨の比較研究を行ない、上記上柳(1963b)の結論をほぼ裏付けている。筆者らも多くの外部形質および内部形質を比較検討して、マカジキ科のうちで Makaira は他の2属 Istiophorus および Tetrapturus とかなり多くの形質で明確に区別できることは認めるが、そのために亜科を設定する必要はないと考える。
 現段階の研究結果からすると、バショウカジキとニシバショウカジキの成魚期における分類形質が明確でないし、クロカジキとニシクロカジキは側線系の違いを除くときわめてよく似ている。これらの種についてはさらに将来の研究にまたねばならない。その他の種に関しては外部形質によりかなり判然と区別することができるし、また内部形質もそれを裏付けている。しかしカジキ類の体の各部の体長に対する割合は魚の成長段階によって著しく変化するので、つねに魚の相対成長を念頭において分類形質および類縁関係について論じなければならない。

 

●要約

世界の文献をひろく調査し、できるだけ多くの標本を調査して、吻の形態、各鰭の形態、体の側扁度、肛門の位置、側線の形態、鱗の配列型、第2背鰭と第2臀鰭の相対的位置、色彩斑紋などの外部形質と、頭蓋骨の形態、脊椎骨の形態、内臓の形態、嗅房の形などの内部形質に基づいて、全世界のカジキ類をつぎの2科4属11種に分類した。
 メカジキ科 Xiphiidae
 メカジキ属 Xiphias
 メカジキ Xiphias gladius LINNAEUS
 マカジキ科 Istiophoridae
 バショウカジキ属 Istiophorus
 バショウカジキ Istiophorus platypterus (SHAW and NODDER)
 ニシバショウカジキ Istiophorus albicans (LATREILLE)
 フウライカジキ属 Tetrapturus
 フウライカジキ Tetrapturus angustirostris TANAKA
 チチュウカイフウライ Tetrapturus belone RAFINESQUE
 クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri ROBINS and DE SYLVA
 ニシマカジキ Tetrapturus albidus POEY
 マカジキ Tetrapturus audax (PHILIPPI)
 クロカジキ属 Makaira
 クロカジキ Makaira mazara (JORDAN and SNYDER)
 ニシクロカジキ Makaira nigricans LACÉPÈDE
 シロカジキ Makaira indica (CUVIER)
なお本研究において Istiophorus albicansTetrapturus belone および Makaira nigricans に対してそれぞれニシバショウカジキ、チチュウカイフウライおよびニシクロカジキなる新和名を提唱した。

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