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カジキ類の分類学的研究( 13 )

京都大学みさき臨海研究所特別報告別冊
Misaki Marine Biological Institute Kyoto University Special Report
No.4, pp.1〜95 June 10, 1968

中村泉・岩井保・松原喜代松:カジキ類の分類学的研究
NAKAMURA, I., T. IWAI K. MATSUBARA: A Review of the Sailfish, Spearfish, Marlin and Swordfish of the World

 
ニシクロカジキ Makaira nigricans(LACÉPÈDE)
1803年にLACÉPÈDEはフランスのラロシェールから送られてきた記録と図をもとにして、Makaira nigricans を創設した。しかしこの記載は長い間、研究者の間で疑問視され、それ以後、GRAY(1838)がケープタウン付近からの標本によって Tetrapturus herschelii を、LOWE(1840)がマデイラからの標本によって Tetrapturus georgii を、POEY(1860)がキューバからの標本によって Tetrapturus amplus を、MMakaira bermudae を、DE BUEN(1950)がウルグアイのモンテビィディオからの標本によって Makaira perezi を、それぞれ新種として発表し、本種の学名の適用にいちじるしい混乱が起こった(第10表:ニシクロカジキの学名の変遷)。そしてGOODE(1880、1882)およびJORDAN and EVERMANN(1926)は大西洋の各地からえた本種と目されるカジキ類を4種に分けて報告した。その後、多くの研究者が本種に対して Makaira ampla もしくは Makaira nigricans を適用している(第10表)。本種はインド・太平洋のクロカジキときわめてよく似ているので、亜種の段階で両種を区別し本種に Makaira ampla ampla を適用する研究者もある(LA MONTE and MARCY、1941;MORROW、1957c;BRIGGS、1958;CADENAT、1961bなど)。またバハマ諸島を中心とする北大西洋に分布するものに対して Makaira nigricans ampla を適用する研究者もある(CONRAD and LA MONTE、1937;SHAPIRO、1938;LA MONTE、1945;ROSA、1950;MATHER、1952;BULLIS and CAPTIVA、1955;BETANCOURT、1956など)。
最近、MORROW(1959a)は Makaira nigricans の妥当性を立証する論文を発表した。それ以後、 Makaira nigricans を用いる研究者が比較的多い(第10表)。もちろん前述のように本種をインド・太平洋のクロカジキと同一種であるとする研究者もある(RIVAS、1956b;ROYCE、1957;BRIGGS、1960;ROBINS and DE SYLVA、1960;JONES and SILAS、1962など)。 属名としてMakairaXiphiasTetrapturusOrthocraeros などが本種に対して適用されたが、今日ではほとんどの研究者が Makaira を用いている。
 

●種の記載
記載は成魚について行なった。この類は成長に伴う形態の変化がいちじるしいので、稚仔魚についての詳しいことはそれぞれの種の記載のところに主な文献をあげたので、それらを参照されたい。稚仔魚についての総括的な研究はJONES and KUMARAN(1962a)、UEYANAGI(1962b)、上柳(1963a)などによってなされた。

呼称
Peito(マデイラ);Aguja de caste、Castero(キューバ);Blue marlin、Squadron(英領西インド諸島);Blue marlin、Cuban black marlin(アメリカ)。

外部形質
第1背鰭41〜43鰭条。第2背鰭6〜7軟条。第1臀鰭13〜15鰭条。第2臀鰭6〜7軟条。胸鰭18〜21軟条。腹鰭1棘2軟条。
体は延長し(体長は体高のほぼ4.9〜5.6倍)、側扁度が小さい(体長は体幅のほぼ9.5〜12.4倍)。吻は長く(頭長は上顎長のほぼ0.86〜1.03倍)、その横断面はほぼ円形。鱗は体長に密に分布し、その先端は鋭く長い(第1図・K)。

  第1図
マカジキ科魚類の鱗の配列の模式図。
A. バショウカジキ(成魚) Istiophorus platypterus 
B. バショウカジキ(若魚)Istiophorus Platypterus
C. ニシバショウカジキIstiophorus albicans
D. フウライカジキTetrapturus angustirostris
E・F. クチナガフウライTetrapturus pfluegeri
G. ニシマカジキ Tetrapturus albidus
H. マカジキ(成魚)Tetrapturus audax
I. マカジキ(若魚)Tetrapturus audax
J. クロカジキ Makaira mazara
K. ニシクロカジキ Makaira nigricans
L. シロカジキ Makaira indica
 
両顎と口蓋骨に微小な鑪状歯が存在する。側線は複雑な網目状を呈し、表皮下に埋没しているので、表皮がはがれると側線が現われる(第23図・F〜I)。頭は大きく(体長は頭長のほぼ4.0〜4.3倍)、眼は中庸大。第1背鰭起部から眼前部にいたる頭部外縁は著しく隆起する。尾鰭は非常に強大で深く二叉し、尾柄部付近の両側にそれぞれ2条ずつ隆起線がある。胸鰭はやや下位で長く(頭長は胸鰭長のほぼ1.0〜1.2倍)、その先端は尖る。第1背鰭は前鰓蓋骨の後縁の上方に始まり、前端部は体高より低く、後方へいくに従って低くなり、第2背鰭起部のやや前方で終わる。第1背鰭の前端部先端は尖る。第1臀鰭は大きく三角形をなし、その先端は尖る。第2背鰭と第2臀鰭はほぼ同形同大で、後者の方が前者よりやや前方に位置する。大きな個体では腹鰭は胸鰭より短い。
第1背鰭の鰭膜は黒みがかった濃青色。その他の各鰭は黒褐色、時には濃青色を帯びる。第1臀鰭と第2臀鰭の基底部は銀白色を帯びる。体の背側は黒青色で、腹面は銀白色である。体側にうすい10条前後のコバルト色の横帯のある個体が多い。外部形質において、側線系の違いを除いては本種とクロカジキとの間に大きな差異は認められなかった。
  第23図
クロカジキ Makaira mazara とニシクロカジキ Makaira nigricans の側線の形態の個体変異。A〜Eは中部太平洋域で漁獲された体長1.5m前後のクロカジキによる。F〜Iは北大西洋域の体長1.8m前後のニシクロカジキによる。ニシクロカジキの側線系は表面に出現している部分のみ描写した。
 
内部形質
嗅房は放射状で、ほぼ47〜54の嗅板からなる。嗅板上にはっきりとした毛細血管の分布が認められない(第4図・G)。嗅板の基部のところにわずかに毛細血管の認められるものも少数ある(第4図・H)。内臓の形態はほぼバショウカジキのそれと類似する。生殖巣は左右相称である。肛門は第1臀鰭起部の直前に開く。
頭蓋骨は強固で吻部が延長し、眼後部が短いが、全体としての幅の広いがっしりとした形態を示す。せつじゅ隆起と翼耳骨隆起はほぼ平行する。鋤骨腹面と副楔骨腹面の前端部の幅は広い。脊椎骨中央部の血管棘と神経棘は脊の高い台形状で、翼状突起はきわめてよく発達する(第7図・I)。脊椎骨数は11+13=24。
  第4図
カジキ類の嗅房の模式図。
A〜C. メカジキ Xiphias gladius 
D. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans 
E. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri 
F. ニシマカジキ Tetrapturus albidus 
G・H. ニシクロカジキ Makaira nigricans 1. 軸(axis) 2. 嗅板(nasal lamina)の側面図。
第7図
カジキ類の中央部脊椎骨の模式図。側面図および腹面図。腹面図は翼状突起の発達の様子を示す。
A. メカジキ Xiphias gladius B. バショウカジキ Istiophorus platypterus C. ニシバショウカジキ Istiophorus albicans D. フウライカジキ Tetrapturus angustirostris E. クチナガフウライ Tetrapturus pfluegeri F. ニシマカジキ Tetrapturus albidus G. マカジキ Tetrapturus audax H. クロカジキ Makaira mazara I. ニシクロカジキ Makaira nigricans J. シロカジキ Makaira indica
 

最大体長
標準体長あるいは全長で約3.86mに達する(LA MONTE、1955)。DE BUEN(1950)はウルグアイのモンテヴィディオからえた全長3.82mの個体について報告した。SCHWARTZ(1961)は本種の最大記録は全長約3.9mであると述べている。

分布
本種は大西洋の熱帯・亜熱帯・温帯海域に広く分布する(第10表)。北はカナダ大西洋岸(Mc ALLISTER、1960;LEIM and SCOTT、1966)から南は南アフリカ(SMITH、1962;TALBOT and PENRITH、1962b)にまで分布する。

付記
本種は大西洋においてわが国マグロ・カジキ延縄漁船によってかなり多く漁獲され(塩浜・明神・坂本、1965)、インド・太平洋のものと区別されないで、単にクロカジキと漁業者によばれている。漁獲統計を処理する場合などに、インド・太平洋のクロカジキと区別するのが望ましいので、ここに本種の和名としてニシクロカジキを提唱した。本種はインド・太平洋海域のクロカジキときわめてよく似ている。現在までのところ側線系の差異によってのみ両種を明確に区別できるにすぎないので、今後、充分な資料を集め、世界的な規模で徹底的に両者を比較研究する必要がある。
本種の稚魚はDE SYLVA(1963b)とCALDWELL(1962b)によってそれぞれジャマイカから報告されている。

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