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マグロ類の分類学的研究( 2 )
 
京都大学みさき臨海研究所特別報告別冊
Misaki Marine Biological Institute Kyoto University Special Report
No.2, pp.1〜51 February 20, 1965
 
岩井保・中村泉・松原喜代松:マグロ類の分類学的研究
IWAI, T., I. N and K. MATSUBARA: Taxonomic Study of the Tunas
 

●マグロ属魚類の種の検索
マグロ類の検索は外部形質によって作製するのが望ましいが、この類の外部形質は魚の成長とともに著しく変化するので、全成長段階に適用できる簡単な検索を案出することは困難である。そこで、ここでは外部形態にもとづく検索(約70cm以上の個体を対象としたもの)、内部形態にもとづく検索、および新しく考案した頭部だけによる検索に分けて記載する。

(1)外部形態にもとづく種の検索
a1. 胸鰭は短く頭長の4/5以下で、後端は第2背鰭の起部下に達しない。
b1. 尾柄隆起は黄色。体長は胸鰭長の4.4〜4.6倍…ミナミマグロT. maccoyii(CASTELNAU)
b2. 尾柄隆起は黒色(未成魚では半透明)。体長は胸鰭長の4.6〜6.0倍…クロマグロT. thynnus(LINNAEUS)
a2. 胸鰭はややあるいは著しく長く、頭長の4/5以上あり、第2背鰭起部下にわずかに達しないか、またははるかにこえる。
c1. 尾鰭後縁は白く縁どられる。胸鰭はきわめて長く、背鰭第2副鰭下に達す…ビンナガT. alalunga(BONNATERRE)
c2. 尾鰭後縁は白く縁どられない。胸鰭(成魚の)は長くても背鰭副鰭下に達しない。
d1. 第1鰓弓の鰓耙数は25〜33。
e1. 体は肥満し、体高は尾叉体長の約1/4以上。第2背鰭と臀鰭はあまり伸長しない。臀鰭は鰓蓋後縁と尾柄隆起後縁を結ぶ線の中央より後方に始まる。眼および頭は大きい…メバチT. obesus(LOWE)
e2. 体はやや細長く、体高は尾叉体長の約1/4以下。第2背鰭と臀鰭は成長とともに著しく伸長する。臀鰭は鰓蓋後縁と尾柄隆起後縁を結ぶ線の中央より前方に始まる。眼および頭は比較的小さい…キハダT.albacares(BONNATERRE)
d2. 第1鰓弓の鰓耙数は19〜25。
f1. 副鰭は生時には黄色くない(生時には背鰭副鰭は薄青銅色で、臀鰭副鰭は暗灰色であるが、死後両者ともあせて黄色となることがある)。第2背鰭起点は吻端と尾柄後縁を結ぶ線の中央より後方にある…タイセイヨウマグロT. atlanticus(LESSON)
f2. 副鰭は生時には黄色。第2背鰭起点は吻端と尾柄隆起後縁を結ぶ線の中央付近にある…コシナガT. tonggol(BLEEKER)

(2)内部形態にもとづく種の検索
a1. 完全血管弧(第8図A)は第10脊椎骨に始まる。肝臓腹面に脈管条が発達する(第8図B)。
b1. 副楔骨は幅狭い。第1血管棘は著しく側扁する(第14図B)…ビンナガT. alalunga(BONNATERRE)
b2. 副楔骨は幅広い。第1血管棘は側扁しない。
c1. 翼楔骨は眼窩の中央より下方へ突出し、成魚ではほとんど副楔骨に接着する(第9図)…クロマグロT. thynnus(LINNAEUS)

 
第8図
クロマグロの第10脊椎骨前面(A)と、肝臓腹面(B)。
1. 椎体 2. 神経棘 3. 完全血管弧。
  第9図
クロマグロ成魚の頭蓋骨側面。
1. 翼楔骨 2. 副楔骨。
  第14図
ビンナガの第3〜10脊椎骨腹面(A)と、第17〜21脊椎骨の側面(B)。
1. 側突起 2. 第9側突起 3. 第1完全血管弧 4. 神経棘 5. 第1血管弧。
 
c2. 翼楔骨は眼窩の中央部まで突出するが、成魚になっても副楔骨に接着するようなことはない…ミナミマグロT. maccoyii(CASTELNAU)
a2. 完全血管弧は第11脊椎骨に始まる。肝臓腹面に脈管条がないか、あっても縁辺部に限られる。
d1. 肝臓下面の縁辺部にのみ脈管条がある(第10図A)。椎体下孔は小さい(第10図B)。後血管関節突起は短い…メバチT. obesus(LOWE)
 
第10図
メバチの肝臓腹面(A)と、第23・24脊椎骨側面(B)。1. 椎体下孔。
  第11図
キハダの肝臓腹面(A)と、第22・23脊椎骨側面(B)。1. 椎体下孔。
 
d2. 肝臓下面に脈管条がない(第11図A)。椎体下孔は大きい(第11図B)。後血管関節突起は長く針状。
e1. 副楔骨下面は中央部でくぼむ…タイセイヨウマグロT. atlanticus(LESSON)
e2. 副楔骨下面は平坦。
f1. 鰾がある。側突起はよく発達する…キハダT. albacares(BONNATERRE)
f2. 鰾がない。側突起の発達程度はふつう…コシナガT. tonggol(BLEEKER)
 
(3)頭部だけによる種の検索
a1. 鼻腔の嗅房の外半部に肉質隆起が発達する。
b1. 肉質隆起はきわめてよく発達し、嗅房の外半部には嗅板が全くない(第12図A)…ビンナガT. alalunga(BONNATERRE)
b2. 肉質隆起は発達するが、一部では嗅板のヒダが嗅房の縁辺まで延長する(第12図B)…メバチT. obesus(LOWE)
a2. 嗅房の外半部に肉質隆起がない。
c1. 嗅板の縁辺は一般に円滑で切込みがないか、あってもごくわずかである。
d1. 嗅板の縁辺は円滑で、切込みは全くない(第12図C・D)…クロマグロT. thynnus(LINNAEUS)
d2. 嗅板の縁辺はふつう円滑であるが、成魚では縁辺にわずかに切込みがある(第12図E)…ミナミマグロ T. maccoyii(CASTELNAU)
c2. 嗅板の縁辺には不規則な切込みが多数ある。
e1. 嗅板の縁辺の切込みは著しく発達し、成魚では嗅房の中心部に黒色素胞が密に沈着する(第12図F)。第1鰓弓の鰓耙数は27〜34。…キハダ T. albacares(BONNATERRE)
e2. 嗅板の縁辺の切込みは発達する。第1鰓弓の鰓耙数は19〜25。
f1. 嗅板の縁辺部はしだいに薄くなり反転しない(第12図G)…コシナガT. tonggol(BLEEKER)
f2. 嗅板の縁辺は多少上方へ反転する(第12図H)…タイセイヨウマグロT. atlanticus(LESSON)
  第12図
マグロ類の嗅房模式図。
A. ビンナガ
B. メバチ
C. クロマグロ(成魚)
D. クロマグロ(若魚)
E. ミナミマグロ
F. キハダ
G. コシナガ
H. タイセイヨウマグロ
 

●考察
(1)分類形質について
すでに述べたように、世界に産するマグロ類は現在のところ7種に分類するのが妥当であると考えられる。これらの種を比較すると、外部形質、たとえば体形・鰭式などに顕著な種的差異はほとんどみられない。また、体の各部の体長に対する割合も魚の成長段階によって著しく変異する。たとえば、従来の報告では胸鰭、第2背鰭あるいは臀鰭の長さが種の特徴として重要視されたこともあったが、これらの形質もクロマグロ・ミナミマグロを除くと、魚の成長段階によって変化し、種の査定にはあまり有効でない。一般にマグロ類では、鰭の長さとか眼の大きさは成長段階によって異なり、とくに体長30〜50cmの個体では、ほとんどの種で一様に長い胸鰭と、大きい眼をそなえる。したがって、多くの外部形質はマグロ類の種を一括して論ずる際には重要な分類形質とならない。
内部形質では、骨格系・内臓・血管系などが種の分類形質として有効である。頭蓋骨では翼楔骨の形態とか基底後頭骨後縁の形態、脊柱では第1完全血管弧の起点・第1血管棘の形態・椎体下孔の大きさ・側突起の発達程度、内臓では肝臓の形態とその腹面の脈管条の有無、血管系では皮膚血管系の分布様式などが、それぞれ分類形質として役立っている。これらの内部形質は解剖学的にみた場合には重要な分類形質となるが、漁場あるいは魚市場などでの種の査定に直ちに応用することは困難である。
このような意味で、この研究ではじめて明らかにした嗅房および嗅板の形態による種の査定法は、鼻腔をおおう皮膚を切開するだけで比較的容易に観察でき、しかも、若魚期に見誤りやすいキハダ・メバチ・ビンナガを判然と区別できる点で意義があると考えられる。この形質に鰓耙数・肝臓の形態・採集海域などを組合わせて種の査定を行なえば、マグロ類の分類はまず間違いなくできるであろう。

(2)類縁関係について
外観的にはマグロ類はみなよく似た種類のようにみえるが、外部形質・内部形質を総合して種間の類縁関係を検討すると、種間の相違点とか類似点がいくつかあることに気づく。1例として、鼻、肝臓、脊椎骨および皮膚血管系の各形質をとりあげ、たがいに共通した形質をそなえる種を線で結ぶと、第24図のようになる。すなわち、嗅板の形態では(a)ビンナガ・メバチ;(b)クロマグロ・ミナミマグロ;(c)キハダ・タイセイヨウマグロ・コシナガの3群に分けられる。肝臓と椎体下孔では(a)ビンナガ・クロマグロ・ミナミマグロ・メバチと(b)キハダ・タイセイヨウマグロ・コシナガの2群に分けられる。また、第1完全血管弧の位置と皮膚血管系では(a)ビンナガ・クロマグロ・ミナミマグロと(b)メバチ・キハダ・タイセイヨウマグロ・コシナガの2群に分けられる。この図では、種間を結ぶ線が多い種ほど共通形質を多くそなえていることになる。つまり、(1)ビンナガ・クロマグロ・ミナミマグロの3種および(2)キハダ・タイセイヨウマグロ・コシナガの3種はそれぞれの群内では共通形質を多く有するが、第1群の種と第2群の種の間にはこれらの形質において共通点が全くない。そして、メバチは両群の中間に位置することになる。このような関係は二・三の外部形質にもみることができる。たとえば、キハダ・タイセイヨウマグロ・コシナガの若魚は、体形・胸鰭長・眼の大きさなどの諸点でメバチの若魚によく似ているし、若魚期に胸鰭が長く、眼が大きい点ではメバチはまたビンナガによく似ている。
さらに、ここに図示した各群が、従来設けられていた属とある程度関係あるのは興味深い。いま、この関係をKISHINOUYE(1923)のマグロ類の分類体系と比較してみると、マグロ属(Thunnus)が第24図左側のビンナガ・クロマグロを含む群に相当し、メバチ属(Parathunnus)が同図中央のメバチを含み、キハダ属(Neothunnus)が同図右側のキハダ・コシナガを含む群に相当する。ただし、タイセイヨウマグロはかってメバチ属に入れられたことはあったが、キハダ属に入れられたことはない。このようにマグロ類を3群に大別することは可能であるが、数多くの形質を比較すると、メバチが一部の形質では第1群に属し他の形質では第2群に属すというようになり、3群を明確に分離できなくなる。また、さきにも述べたように、外部形質からみても3群の間に顕著な属的差異は認められない。このようなことから考えて、マグロ類をいくつかの属または亜属に分ける必要はなく、現在多くの研究者に認められているようにマグロ属Thunnus1属のもとに統合するのが合理的であろう。以上のような理由で、筆者らはマグロ属をサバ科Scombridaeの1属とし、これに7種を含めるのがよいと考える。
従来の分類体系(松原 1955)ではサバ科の下にマグロ亜科Thunninaeがあり、これにマグロ類(ここで取扱ったマグロ属に属する魚類)とハガツオが入っていた。しかし、中村(未発表)は中軸骨格系の形態について研究した結果、カツオ亜科に属していたカツオとスマをマグロ亜科へ移し、ハガツオはマグロ亜科からはずした。この点に関しては別に報告されるはずである。

●要約
世界の文献をひろく調査し、かつ、できるだけ多くの標本を調査した結果、世界に産するマグロ類を、ビンナガThunnus alalunga(BONNATERRE)、クロマグロThunnus thynnus(LINNAEUS)、ミナミマグロ(インドマグロ・ゴウシュウマグロ)Thunnus maccoyii(CASTELNAU)、メバチThunnus obesus(LOWE)、キハダThunnus albacares(BONNATERRE)、タイセイヨウマグロThunnus atlanticus(LESSON)およびコシナガThunnus tonggol(BLEEKER)の7種に分類し、これら7種をマグロ属Thunnusに含めた。
分類形質としては外部形質と内部形質を併用するのが望ましい。前者は種間の差異にとぼしく、また、魚の成長段階によって変化するので、分類形質としてはあまり重要視できない。骨格系を中心とする後者は種の分類に有効ではあるが、漁場あるいは魚市場での種の査定には不便である。そこで、種々の内外諸形質を研究したところ、鼻の嗅房と嗅板の形態、体の色彩、鰓耙数、肝臓の形およびその腹面の脈管条の有無などを種の分類形質として用いるのが便利であるということが明らかになった。

 

TAXONOMIC STUDY OF THE TUNAS
Tamotsu IWAI, Izumi NAKAMURA and Kiyomatsu MATSUBARA
(Department of Fisheries, Faculty of Agriculture Kyoto University, Maizuru)

Summary
The taxonomic status of tunas was evaluated on the basis of previous descriptions and new materials taken from various localities of the world. A number of tunas were carefully examined on many characteristics, i, e., proportinal measurements, skeletal system, sensory organs and visceral organs. From the data obtained, seven valid species, all referable to the one genus Thunnus, were recognized: T. alalunga (BONNATERRE) , T. thynnus (LINNAEUS), T. maccoyii (C>ASTELNAU), T. obesus (LOWE), T. albacares (BONNATERRE), T.atlanticus (LESSON), and T. tonggol (BLEEKER). The bluefin tunas inhabiting the Atlantic, Mediterranean, Pacific, several regions of the Indian Ocean, etc. belong to the single species, T. thynnus. But, the problem whether the Atlantic and Pacific populations should be classified to respective subspecies requires further comparative study. In comparison with the bluefin tuna, the southern bluefin tuna, T. maccoyii, taken chiefly from the eastern Indian Ocean and east seas of Australia, is distinguishable in having some distinctive features. e. g., yellow caudal keel, larger eye, and longer pectoral fin.
In general, none of external features, taken singly, can be uesd for separation of species of young tunas except for T. thynnus and T. maccoyii, because of their resemblance in proportional measurements and meristic characters. The comparative study revealed that olfactory resettes are valid feature distinguishing species of genus Thunnus. As it is generally understood, number of gill rakers and structural diagnoses of liver are also useful features in tuna systematics. In this respect, a combined key of these features may ensure the identification of seven species of tunas.

 
カジキの研究報告
   
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