BIG GAME POLICY 釣りに対する姿勢 会社案内
 
   
 
BIG BLUE CHASE KAZIKI
 
 
HOME KAZIKI カジキの研究報告 ビッグゲームを取り巻く環境と制度について( 1 )
 
ビッグゲームを取り巻く環境と制度について( 1 )
 

第一回:自己紹介と今後のトピック紹介

今回から、本コーナーを担当させていただくことになりました、牧野光琢(まきのみつたく)と申します。現在は横浜国立大学の大学院環境情報研究院に所属し、21世紀COEプログラム「生物・生態環境リスクマネジメント」という研究グループの一員として、研究・教育活動に従事しています。第一回目の今回は、筆者の自己紹介と研究のバックグラウンドを紹介した後、このコーナーの目的、今後のトピックを簡単に紹介したいと思います。

21世紀COEプログラム

この「21世紀COEプログラム」という言葉を耳にしたことのある読者はあまり居られないと思いますので、ここで少しだけ説明したいと思います。「21世紀COEプログラム」とは、もともと遠山敦子文部科学大臣(当時)が発表した「大学の構造改革の方針」(いわゆる遠山プラン)における「トップ30構想」から生まれたものです。これは、国公私大の中から各研究分野のトップ30を選び、その30の研究グループを世界最高水準に育成するために重点的に予算を割り振るという構想です。この「トップ30構想」は必然的にその他の大学の切捨て・廃統合につながるので、文部科学省の内外で非常に大きな反響・反対が起こりました。よってその内容を部分的に修正して、名称を変更したものがこの「21世紀COEプログラム」です。COEとはCenter of Excellence の略で、もともと欧米では広く使われている表現です。
我々の「生物・生態環境リスクマネジメント」は、環境科学分野のCOEの一つとして、様々な専門領域から現在32名の博士研究者を擁しています。その専門領域は、地質学、土壌生物学、植生学、毒性学、安全工学、海洋生物学、数理生態学、経済学、情報学、リスク学…など広範にわたり、自然科学と人文社会科学の枠を越えた学際的な研究を目指しています。基本的な研究の発想としては、将来起こるかもしれない、或いは現在起こっている環境問題を「リスク」として認識し、その適切なマネジメント策を提案しようというものです。具体的には、生物の絶滅や生態系機能・生物多様性の減耗、河川や海の水質の劣化、食の安全性などをテーマにリスク管理が研究されていますが、我々のCOEの研究については、後日また詳しく紹介しようと思います。その一番の特徴は、とにかく広範な専門家が一同に会する機会に恵まれているということです。
例えば先日、COEのメンバーで共通研究フィールドである神奈川県丹沢山系・水系に調査に行ってきました。そこでは地質学者と生態学者が初めて一緒に調査したのですが、お互いが実は自分の研究対象のみを見ていて、他の要素が見えていなかったことについて、とても興味深い議論がありました。植生がいかに地質学的・地球科学的要因(たとえば、その地域の地盤の性質や断層の分布など)に影響をうけているか、あるいは、河川の水質もいかに生態学的・地質学的要因(植生の分布やその構成、岩石の組成など)に影響されるかについて、この調査で新たな解釈や議論がいくつも生まれました。環境問題にはもともと学問領域の壁はありませんから、こうした学際的な議論は非常に面白く、学問的関心を喚起してくれます。

自然科学と社会科学

次に筆者の専門を簡単に紹介したいと思います。筆者はもともとは農学部水産学科の出身で、物理・化学・生物など、いわゆる自然科学的な方法で海の勉強をしておりました。ある程度この分野の全体像が想像できるようになった頃、長年にわたり世界中の研究者が多大なエネルギーをつぎ込んだ膨大な研究成果に、圧倒される思いを抱いたことを覚えています。
ただそこで同時に感じたのは、そうした非常に貴重な知見が、あまり政策には活用されていないのではないか、ということでした。その理由として、もともと自然科学には政策への活用とか人間社会への還元とか、そうしたいわば俗世間的なものへのかかわりを避ける傾向もあるという点が指摘できると思います。それゆえ非常に自然に近いところ、自然の理を明らかにするということに多くの研究者の興味が限られており、そこからどう応用できるのか(あるいは応用するべきか)という、もう一段階人間寄りの段階の研究がほとんどなされていないのが現状です。
これではもったいない。というのが、筆者が政策研究に転向した率直な理由です。政策研究の分野には、法律学や経済学、社会学など純粋に社会科学的な方法から専門にやられている研究者がたくさん居り、その知見も自然科学同様膨大なものがあります。この両者をうまくつなぐような研究分野が必要ではないか、それが海洋環境問題や食糧安全保障などの、21世紀の社会的課題には役立つのではないか、と考えています。
では筆者が何を主に研究しているのかというと、人による海とのお付き合いのなかで最も長い歴史をもつもの、すなわち食料生産としての漁業です。

漁業管理論と環境科学

人類は大昔から海の恵みを享受してきました。各地の貝塚の研究により、日本でも縄文時代には既に大規模で定期的な漁獲が行われていたといわれます。そして現在も日本は世界有数の水産物消費国です。食べ物(魚介類)をいかに自然(海)から採って来るかという、狩猟時代から人間にとって非常に根源的な課題を扱うのが、漁業管理論や水産政策論と呼ばれる分野です。筆者は博士論文まではこうした漁業管理論を中心に研究してきました。
どの時代においても、それぞれの社会経済的背景の下で、その時代の人々が工夫して考案した漁獲に関するルールがあります。これが漁業制度と呼ばれるものです。一方で海の側には、人間界の都合など一切お構いなしの自然の理があります。いわば海の理です。人類は我々の都合に合うような、コンビニエントな漁獲の実現を目指して、新技術の開発や新漁場の発見などに力を注いできました。しかし、やはり自然の理を超えるような漁獲は不可能でした。海の資源(恵み)にも限界があるということが分かってきたのです。よって、海の理を前提としていかに人間社会側が上手にお付き合いしていくか、換言すれば、自然科学的な知見を基にしていかに公平で効率的な社会制度を構築していくか、それが筆者の考える漁業管理論の目的です。管理という言葉は、自然を管理するという意味で解釈すると抵抗を感じてしまいますが、人間側の態度、海との接し方を管理する為の知恵という意味で筆者は捉えています。また公平という意味は、もちろん社会的な公平と共に将来世代と現世代との間の公平という意味も含めなければなりません。つまり持続可能な利用(Sustainable Use)という人間側の目標です。
日本の漁業制度は世界で最も発達したものの一つです。筆者が京都大学に提出した博士論文では、日本の漁業制度の歴史、現在の漁業制度の内容、漁業権の法律的な性格、海外の漁業制度との比較、などの考察を行いました。また、漁業管理が非常にうまくいっている京都府の底引き網漁業を事例として、どのような施策によりどの程度の経済効果が生じたのか、その施策はどのような自然科学的知見を応用したのか、そしてこの方法は他の方法に比べてどの程度効率的であったのか、それを金融工学のリスク・ヘッジの理論で分析するとどう評価できるのか、といった経済分析を行いました。
ただしこれらの分析は、漁獲物の量のみを対象としています。いかにたくさんの量を採るか、その為にどういう工夫があるかという話が中心です。ここには、もう一つ非常に重要な要素が抜けています。それは、どのような「質」のものを取るのか、その為にどういう工夫が必要か、という観点です。
良い魚を採るためには、親魚の他にも良い餌と良い水、そして良い生息場が必要です。つまり、良い魚のためには、良い環境が必要なのです。そしてその際には、海だけではなく陸上のことも同時に考えることが不可欠です。いくら海でうまくやっていても、陸から大量の汚染物質が流れてきては意味がありません。森が枯れると海も枯れるという言葉にあるように、今後は少なくとも「集水域(Watershed)」という単位で山頂から海までを捉える必要があります。事がここに至ると、研究は漁業管理研究の範疇におさまらず、まさに環境科学研究が必要となります。それはとても一人の手に負えるものではありません。現在COEの中で、筆者はこの研究テーマに取り組んでいます。成果が上がり次第このコーナーでもご紹介したいと思います。

本コーナーの目的と今後の予定

環境問題は誰か一人の手によって解決するような性質の問題ではありません。人間文明のスタイルを変えること、つまり文明のさらなる進歩が必要です。よって、最終的に環境問題を解決できるのは一般市民であり、またその進歩の目標である「良い環境」とは何かを決めるのも一般市民です。
本コーナーでは、海と人との付き合い方に関連する科学的・学問的なトピックをできるだけ分かりやすく紹介していきたいと考えています。様々な研究者がどのような考え方でどのような研究を行っているのか、そしてどのようなことが分かったのか、次にどういう課題があるのか、などをここで紹介することによって、読者の方々が海の環境問題を考える際の参考となれば筆者にとっては望外の喜びです。
今後この場で取り上げる予定のトピックを簡単に紹介します。まず次回以降では、日本の漁業制度について紹介します。日本の漁業制度については近年国際的に非常に注目が集まっており、今年2004年7月には世界各国から400人以上の研究者が集まる国際会議が東京海洋大学で開催されます。なぜ日本の漁業制度に注目が集まっているのか、日本の漁業制度にはどのような国際的特徴があるのかを紹介します。またこのテーマと並行して、マグロ類に関するリスク学の研究を紹介します。マグロ類がCITES(絶滅の恐れのある動植物の国際取り引きに関するワシントン条約:通称ワシントン条約)の絶滅危惧種に指定されるという動きがありますが、その科学的背景についての絶滅リスクの研究、さらにはマグロに含まれる有害物質が人の健康に及ぼす影響についての研究も紹介する予定です。
その後は遊漁(レジャーによる釣り)と漁業の関係をめぐる法律学的研究や、上述の集水域管理の研究、生態系に基づいた海洋生物資源管理に関する研究、海や空気のようなコモンズ(共有資源)と呼ばれる資源の利用制度に関する研究、環境リスク論の考え方とリスクマネジメント、横浜国立大学21世紀COEプログラム「生物・生態環境リスク」における研究、国連生物多様性条約における自然と人間との関係についての取組み、予防原則とよばれる環境問題に対する新しい考え方、などを順次紹介していく予定です。
本コーナーをお読みになった感想・御意見等についても、著者までいただけますと幸いです。読者の皆様のご意見を参考にしながら、よりよいコーナーを作っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

 

筆者プロフィール
牧野 光琢(まきの みつたく)

1973年佐賀県唐津市生まれ。愛知県立旭丘高校卒業後、京都大学農学部水産学科入学。ケンブリッジ大学修士を経て、京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は環境政策論。主に海と人との関係について、制度学・経済学的手法と自然科学的知見の結合を目指す。尺八奏者としての号は「琢水」。
HP:http://risk.kan.ynu.ac.jp/makino

 

 
カジキの研究報告
   
カジキの類の分類
カジキの類の幼期の形態と生態
伊豆近海における突棒漁業とカジキ類の摂餌生態
太平洋のマカジキ資源
太平洋のクロカジキ資源について
世界のかじき類の漁業とその資源について
カジキ・ギネスブック&小事典
マグロ類の分類学的研究( 1 )( 2 )( 3 )( 4 )( 5 )( 6 )( 7 )( 8 )( 9 )
カジキ類の分類学的研究( 1 )( 2 )( 3 )( 4 )( 5 )( 6 )( 7 )( 8 )( 9 )( 10 )( 11 )( 12 )( 13 )( 14 )
上顎の短いクロカジキ
ポップアップ式衛星通信型タグとは?
アーカイバルポップアップタグの可能性について
アルゴスシステムによるポップアップタグのデータ収集、その実際
カジキのトロウリングと我が国の漁業関係法令
かじき類への通常標識の装着について
Still Missing!? ポップアップタグ、未だ浮上せず !!
カジキをもっと知るために〜遠洋水産研究所からのお願い〜
ビッグゲームを取り巻く環境と制度について( 1 )( 2 )( 3 )( 4 )( 5 )( 6 )( 7 )( 8 )( 9 )( 10 )( 11 )( 12 )( 13 )( 14 )( 15 )( 16 )( 17 )( 18 )( 19 )
釣ったカジキの重量は !?
 
 
 
 
 
 
 
Copyright (C) 2006 HATTEN-SHIYOH All Rights Reserved.