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アルゴスシステムによるポップアップタグのデータ収集、その実際

弥富秀文

さて、魚体から切り離されたタグは、水面に浮上すると、それまでに蓄積したデータをアルゴスシステムによって伝送します。アルゴスシステムとは、環境調査や環境保護を目的とした、人工衛星によるデータ収集システムで、CNES(フランス国立宇宙研究センター), NOAA(米国海洋大気局)、およびNASDA(日本の宇宙開発事業団)が協力して運用しています。

海上の海洋観測ブイによって観測される気温や気圧、水温などの観測データを利用するには、こういったデータを衛星を介して伝送するほかありません。アルゴスシステムはこのような目的で開発されたデータ収集システムで、1978年から、すでに20年以上稼働しています。収集したデータを活用するためにはまた、その観測データがどの場所で観測されたものなのかを知る必要があります。当初は、位置を知るためのGPSもまだ存在していませんでした。アルゴスシステムでは、データを収集するのと同時に、送信機から受信した電波の周波数から、その位置を計算することができます。ごく小さな送信機によって、このようなデータ収集、位置算出ができることから、現在では、漂流・繋留ブイや中層フロートなどの海洋観測だけでなく、大型回遊魚やウミガメやアザラシ、イルカなどの海洋生物の生態調査、渡りルートなどの鳥類の生態調査、ニホンザルやゾウなどの陸上動物、あるいは火山や河川水位の観測など、さまざまな分野でアルゴスシステムが利用されています。(図1)

 

アルゴスの利用分野(図1)
 

アルゴスシステムは、送信機、衛星、地上設備の三つの要素から構成されています。

送信機

アルゴスシステムの送信機は、401MHz 帯域の電波を、一定周期で、ごく短い時間発射します。ポップアップタグの場合には、45秒周期で0.92秒間電波を発射します。この電波には、送信機を識別するID番号などの情報が含まれるほか、256ビットまでの任意のデータをのせることができます。
送信機の出力は、海洋観測ブイなどの場合は通常1W程度ですが、ポップアップタグの場合、携帯電話よりも微弱な0.2W以下の出力の電波を用います。アルゴスシステムではこのような低い出力でも通信が可能なため、ポップアップタグのような小さな送信機が利用できます。

   

さまざまなタイプのアルゴス送信機(図2

 

衛星

アルゴスシステムの衛星装置は、フランスのCNESが開発・製作し、米国のNOAA衛星および日本のADEOS-II(みどりII)衛星に搭載されています。2003年5月現在、6基のNOAA衛星およびADEOS-IIの合計7基の衛星によって、サービスを行っています。
これらの衛星は、地球の回りを,高度約850km,周期約100分で周回しています。1日に地球を約14周します。極軌道とよばれる南北方向の軌道で、毎回南北両極の上空を通過します。軌道面は太陽に対し固定されていますが、地球が自転しているため、14周するうち、地球上のあらゆる場所が必ず何度も視野範囲に入ります。
衛星からは、常にその真下直径約5000kmの円の範囲内にある送信機が「見え」ます。衛星は周回しているので、送信機の側から見れば,上空を通過する衛星は平均約10分間見えていることになり、この間に発射された電波が衛星に届きます。45秒の送信周期の場合には、一度衛星が通過する間(衛星パスと呼びます)に、十数個のメッセージが衛星に届くチャンスがあります。
ある送信機の上空を、1日に衛星が通過する回数、すなわち1日の衛星パスの回数は、衛星の軌道が南北方向の極軌道であるため、送信機のある場所、正確にはその緯度によって異なります。赤道付近で最も少なく、衛星7基の場合1日に約25回となります。日本付近では35回前後、南極や北極では、毎周回ごとに衛星が見えるため1日に90回以上にもなります。衛星パスはしかし、均等な時間間隔でやってくるわけではありません。いくつかのパスは連続しており、また、次のパスまで2時間ほど間があくこともあります。
衛星に搭載されたアルゴス装置は、その視野内にある送信機から次々に送られてくるメッセージを受信し、内蔵の記憶装置に保存します。と同時に、受信したメッセージをただちに地上に向けて再送します。

 


NOAA衛星(上)(図3)
宇宙開発事業団(NASDA)提供


衛星(下)(図4)
宇宙開発事業団(NASDA)提供

 

地上設備

地上には、図6に示すような受信アンテナとデータ処理センターのネットワークが整備されています。衛星が受信してただちに地上に向けて再送するメッセージは、世界中に現在30ヶ所以上ある地方受信アンテナが受信します。また、衛星の記憶装置に保存されたメッセージは、数ヶ所あるグローバル受信アンテナの上空に衛星が達したときに、一周回分がまとめて地上にダウンリンクされます。
アンテナが衛星から受信したデータは、データ処理センターに転送されて処理されます。フランスのトゥールーズと米国のラルゴに、全データを処理するグローバルデータ処理センターがあり、東京、メルボルンなどに、その国のユーザのデータのみを処理する地域データ処理センターがあります。;
データ処理センターでは、送信機の位置の計算を行い、受信したメッセージのデータを変換・整理するなどした後、これらの位置データやセンサーデータをデータベースとして蓄積します。各ユーザは、データ処理センターのデータベースにインターネットを介してアクセスすることにより、自分の送信機のデータを取り出します。

 

データ処理ネットワーク(図6)
 

位置の計算

アルゴスシステムの位置計算は、よくGPSと比較されますが、GPSでは、端末が衛星からの電波を受信することにより自分自身の位置を計算するのに対し、アルゴスシステムでは、送信機の側では自分自身の位置はわかりません。衛星が、送信機からの電波を受信してその情報を地上のコンピュータに転送し、その情報を解析することにより初めて送信機の位置が算出できます。位置情報は送信機のユーザに配信され、ユーザが自分の研究室などで、はるか遠くにある送信機の位置をモニターします。

GPSでは、同時に複数の衛星からの電波を受信しその情報から位置を計算します。アルゴスシステムでは、一つの衛星がある送信機の上空を一回通過するときに、何度もその送信機からの電波を受信し、その複数の受信情報から位置を計算します。
位置の計算には、電波の周波数のドップラー偏移を利用します。ドップラー偏移とは、救急車が近づいて来て、また遠ざかっていくときに、サイレン音の高低(音の周波数)が変化するような現象です。これと同じように、衛星が近づいてくるとき

は、衛星が受信する電波の周波数は高くなり、遠ざかって行くときは逆に低くなります。この様子を示したのが図7です。送信機上空を衛星が近づいていき、去っていく約10分の間に、送信機は何回か電波を発信しますが、衛星は受信するたびにその周波数を測定します。このときの周波数の変化をグラフ化すると図7のようなカーブを描きます。このカーブは、送信機のある場所によって決まるので、測定した周波数からこのカーブを推定することにより、送信機の位置を逆算することができます。

 
 

ポップアップタグのデータの流れ

ポップアップタグは、魚体への装着から切り離され、浮上するまでの水温や水深、照度などのデータを蓄積します。切り離され浮上すると送信機のスイッチが入り、これらのデータの送信を開始します。蓄積したデータを、256ビットごとの数十個の「メッセージ」に分割し、このメッセージを一つずつ、45秒ごとに送信していきます。すべてのメッセージを送信し終わると、また最初のメッセージから順に送信を繰り返し、これを電池の寿命がある限り続けます。
送信機から発射される電波は、必ず衛星によって受信されるわけではありません。というのも、衛星は地球の回りをぐるぐると回る周回衛星であり、その送信機の上空にいつもいるわけではないからです。送信されたメッセージは、衛星が上空にいるときだけ受信されます。しかし、微弱な電波を用いているため、衛星が上空にいるときであっても、受信されなかったり、あるいは受信されても、ノイズによって、誤りのある無効なメッセージになってしまうこともあります。
そのため、ポップアップタグは、送信すべき数十のメッセージを何日にもわたって繰り返し発信します。衛星が上空にくるたびにそのうちの一部を少しずつ受信し、やがてすべてのメッセージが正しく伝送されます。
衛星は、タグからのメッセージを受信すると、記憶装置に保存するのと同時に、そのメッセージを地上に向けてただちに再送します。地上の地域受信アンテナがこのメッセージを受信すると、データ処理センターに転送し、位置計算などのデータ処理が行われて、位置情報およびセンサーデータがデータベースに登録されます。衛星がメッセージを受信してから、だいたい30分ぐらいでデータが利用できるようになります。
衛星が地上に向けてメッセージを再送したときに、その視野範囲に地域受信アンテナがまったくないこともあります。しかし、衛星は、受信したメッセージを記憶装置にも保存しており、この記憶装置に蓄積されたデータは、地球上に数箇所あるグローバル受信アンテナの上空に衛星が来たときに、一周回分がまとめてダウンリンクされます。このデータも同様にデータ処理センターに送られ、処理されてデータベース化されます。
データベース化されたデータには、そのユーザに与えられるユーザネームとパスワードがあれば、インターネットを介してどこからでもアクセスすることができます。また、タグの回収などですぐにデータが必要な場合には、Eメールによってユーザの手元に配信されます。

アルゴスシステムのサービス

アルゴスシステムのデータ処理や配信、ユーザの利用申し込みなどの日常業務は、フランスCNESの子会社であるCLS社が担当しています。日本では、その代理店である株式会社キュービック・アイが、ユーザの窓口となるとともに、日本の地域データ処理センターを運用しています。

アルゴスについてのお問い合わせ先

アルゴス日本総代理店(株)キュービック・アイ
〒141-0031 東京都品川区西五反田2-15-9 ブルーベルビル7F
TEL:03-3779-5506 FAX:03-3779-5783 E-mail:argos@cubic-i.co.jp

 
 
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