WHAT'S THE SPORT FISHING BOAT?
フィッシングボートの基礎知識(5) フィッシュファインダー
文・図/中島新吾
フィッシュファインダー。要するに“魚探”である。さまざまなメーカーからさまざまなスタイルのものが発売されており、選択に迷うエキップメントのひとつといえるだろう。しかし、音波を発射し、それが何かに当たって跳ね返ってくる時間を測る、という基本的な原理はどこのものも同じなのだが、それでも音波の質や、発射の方向と方法を変化させると、新しいスタイルのフィッシュファインダーの可能性はまだまだありそうな気がする。
超音波にも違いがある
フィッシュ・ファインダー。直訳すれば、魚発見機である。日本では、この器械が出来た当初から“魚探=魚群探知機”と、なんとも職漁向き機器風の名称になっていて、それについては誰かに、早く、なんとかしてほしいものではある。しかし、音波を発射して、それが跳ね返ってくる時間を測定し、それによって水深を測るというあたりに着目する名称として、エコー・サウンダー(この場合のサウンドは“水深を測る”の意で、綴りは同じだが音を示すわけではない)というのがあるし、もっと測深を強調するディプス・サウンダーという言葉もある。 で、名称はともかく、このフィッシュファインダーの原理自体は簡単である。水中に向けて音を出す、何かに当たる、跳ね返る、それまでの時間を測る。さらに、単位時間あたりに音が進む速さは分かっているから、必然的にその音を跳ね返したもののある距離は分かる、という仕組みである。 これを実現するためには、まず、音の出口と、それが跳ね返って来たときに聞くためのものが必要。これを通常はトランスデューサーといい、水中に向けて取り付けなければならない。Fig.1は、その方法を示したもの。いろいろな方法があるが、とにかく大切なのはトランスデューサーと水の間に、空気が入らないようにすることである。なにせ、空気と水は密度が違うため、その境界が音波を屈折させ、多くを反射してしまうのだ。
サーチライトスキャン
一般的なフィッシュファインダーは、音波を発射する機械も、反射音を受信する機械もひとつだけなので、一回の測定では、“その場”のことしか分からない。単に水深を測るだけならそれでもいいわけだし、フラッシャー式魚探というヤツは、まさにその場を1本の線(を円形にしたもの)で表したものだが、それでは水底の様子などが、なかなか分からない。で、なんとかトランスデューサーを動かして水底をスキャン(走査)しようということになると、これはとりもなおさず、フネを動かすということになる。
しかし、ここで問題がひとつ。一般的な機器では、測定の回数というのはフネの速度に関係なく、時間単位で行われ、それがCRT(ブラウン管)とかLCD(液晶)の画面に表示され、順次送られる。それを示したのがFig.3-AとFig.3-B。BのフネはAの半分の速度で走っている。つまり、同じ時間で進んだ距離は半分。だから、画面にはAの半分の画像が、横一杯に描かれることになる。こういったタイプのフィッシュファインダーというのは、画面上の縦軸は深度を表すが、横軸は“時間軸”であるということを念頭においてそれを見なければならない。たとえフネが止まっていても画面は書き替えられていくが、これは時間が経過していくので当然なのである。最近は、速度計からの信号を基にして、画面に距離目盛りを表示するタイプなどもあらわれてきた。フネを動かさないと水底の様子が分からないというのでは、少々不便なこともある。で、考えだされたのが、トランスデューサーに“首を振らせる”ということである。これをサーチライトスキャンという。その概念図がFig.4。たとえフネが止まっていても、トランスデューサーが首を振って、扇形に水中をスキャンするため、フネの真下と両側は把握できるというわけだ。この発展型として、この状態でフネを前進させると、記憶装置に貯えられた数枚の水底図をもとに、3次元の画像を出力するものがある。米国の結構有名な機種、ご存じの方もおいでだろう(500ドルしないのだ!)。また、左右ではなく、前後に扇を描くものもある。
そして、サーチライトスキャンの極め付けが、Fig.5のタイプ。水平からほとんど真下真っすぐまで、音波ビームの旋回面を変化させられる。水中レーダーというべき機能を持つ機種といえるだろう。