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WHAT'S THE SPORT FISHING BOAT?

フィッシングボートの基礎知識(4)
フィッシュウェル

文・図/中島新吾

 
フィッシングボートならではの装備のひとつがフィッシュウェルである。キャッチ&リリースが盛んになってきたとはいえ、水を貯め、そこに魚を入れておく装備が全く不要になったというわけではない。ライブベイトを使う場合などを考えれば、必要不可欠な装備でもあるわけで、さまざまな釣法への対応を考えれば、やはりあったほうが便利ではある。その呼び方はいろいろだが、今回は、とにかくこの“ウェル”について考えることにする。
 

水貯めの総称“ウェル”

ウェル(well)というのは、一般的に井戸だとか、井戸状の造作をさす言葉である。地下水を汲み上げるためのものは、もちろんウェルだし、石油を得るために設けられるオイル・ウェル(oil well=油田)とか、天然ガスのガス・ウェル(gas well=ガス井戸)なんていうのもある。また、エレベーターの昇降路も、その造作が井戸状ということで、ウェルと呼ぶのだそうだ。もっとも、最近ではエレベーター・シャフトという言い方のほうが分かりやすいが……。
で、こういった意味からの派生で、フネの船倉に設けられた水貯めとか、いわゆるイケスの類が、ウェルと呼ばれるようになったわけだ。フィッシングボートでは、フィッシュウェルとかライブウェル(live well)、ベイトウェル(bait well)などと、いろいろウェルという名称を使っているが、要は、水を貯めることのできる魚の入れ物の総称が、ウェルということになる。それを生かしておくというところに着目した呼称がライブウェルだし、餌となる小魚などを入れておくのに都合の良いものがベイトウェルだというわけだ。ちなみに、船外機を使ったボートでは、エンジン取りつけ部の凹をモーターウェルと呼ぶが、これも基本的には同じ意味(井戸状のということ)のウェル。ただし、こちらは魚とは関係がない。
魚を入れる装備の中には、ウェルとは別に、フィッシュボックス(fish box)とか、フィッシュホールド(fish hold)と呼ばれる造作があるが、こういったものは、いわゆるクーラーボックスのように氷詰めのような状態で魚を入れておくためのもので、水を貯めることは前提としていない。ウェルとは少々異なるシロモノである。日本語に訳すならば、ウェルは“生け簀”、フィッシュボックスやフィッシュホールドは“魚艙”というあたりになるだろう。
ライブウェルでも、ベイトウェルでもいいが、とにかくこの種のウェルは、とにかく水を貯めなければならない。一般的なウェルは、そのフネが浮いているところの水を取り込んで貯め、必要に応じて循環させる。フネの周りはすべて水だから、簡単そうなものだが、実は結構難しい。なにしろ、フネというのは水に浮いてこそフネで、通常はそのために船内には水を“入れないように”作ってあるものだ。水をどう取り入れて、どう排出するか、これが問題なのである。

“水を入れる”と“水が入る”
 
         
Fig.1
AとBはウェルの底まで、完全に吃水よりも上部にあるため、排水は自動。給水にはポンプが必要となる。Cは給水栓をあえて吃水よりも持ち上げてポンプ給水とし、水が勝手に入ってこないようにしている。排水はこの位置ではポンプだが、浅くすれば自動にもできる。Dは周囲の水が内部に入っているという状態。
Fig.1は最近の小型スポーツフィッシャーマンに備わっているいくつかのウェルを示したものである。A〜Dすべてのウェルを装備しているものにはお目にかかったことはないが、この中の2種類程度を備えているものはけっこうある。Fig.2-A〜C・Dにはそれぞれの構造の概略を示したので、合わせてご覧いただきたい。
         
まずAとB。Aはチャミングやライブベイトのリギングに便利なトランサムのウェル。Bはヘルムステーションやヘルムシートの台座など、コックピットソールから一段立ち上がる部分を利用して設けられるウェルである。これらは完全に吃水よりも高い位置に設けられるウェルであるため、給水はポンプで行うことになるが、排水は自然に可能である。図では排水口に循環用パイプを立ち上げてあるが(これについてはFig.3で説明)、とにかく底の栓を抜きさえすれば、水は完全に排出される。つまり、なんらかの故障があっても、排水だけは可能なのである。    
  Fig.2-A
もともとはコックピットに余裕のある大型艇に多かった装備だが、最近はかなりの小型艇でも見られるトランサムのウェル。小魚を使ったチャミングやライブベイトのリギングなどに便利な位置なので、ベイトセンター的な造りとしている小型艇も少なくない。船外への排水口を吃水より高い位置に設けたフネが多い。
  Fig.2-B
最近の多くの小型艇が採用しているウェル。ヘルムシートやナビシートの台座部分や、コックピットよりも一段高くなったヘルムステーションの段差を利用してウェルを設ける。多くはすぐ脇の舷側、吃水より高い位置へ排水するようになっている。給水方法やそのポンプの位置はビルダーによって異なる。
         
         
Cの場合、ウェル内の給水栓は吃水よりも高い位置に設けられ、わずかな高さではあるが、ポンプによる汲み上げを行う。つまり、船外の水が勝手にウェル内に入り込むようにはなっていない。排水はいったんビルジに落としてビルジポンプで排出するか、専用のポンプで排出するかだが、ウェルの底が吃水より高い位置に来るようにすれば(コックピットソールが吃水よりかなり高い場合や、ウェル自体が浅い場合)、AやBと同様、自然排水とすることも可能だ。
Dはコックピットソールの下の一区画を仕切って、船底に開けた穴から水を導き入れるという方法。当然、このウェルの水面の高さは吃水とまったく同じ。当たり前のことだが、この状態では、ウェルの中の水をいくら汲み出しても減ることはない。船底の穴に蓋をして、中の水を汲み出して排出することは可能だし、フネが滑走状態となると、設置場所によっては負圧で水が吸い出されるが、止まればまた入ってくる。
A〜CとDの決定的な違いは、A〜Cがボーターの意志で“水を入れる”のに対し、Dは“水が入ってくる”ということだ。Dの船底の穴には蓋をすることが出来るわけだが、蓋を開けた状態だと、この船内の一区画は、そのまま周囲の水とつながっているということになる。筆者には、この方式がとても無防備に思えるのだが……。
 
 

Fig.2-C
コックピットソールの下にウェルを設ける場合でも、船底に穴を開けることは本来避けたいところである。Cの方式だと、給水栓を吃水より高くすることで、船外の水が勝手にウェル内に流入することを避けている。図ではビルジへ落とすか、専用ポンプでの排水となるが、ウェルが浅ければ自動排水も可能だ。

Fig.2-D
国産の小型ボートは、ほとんどこのスタイル。水密区画を設け、そこに“浸水口”を作ってウェルとするというもの。構造的にも単純で、コストもかからないというメリットはあるが、ウェルの壁面に一ケ所でも穴が出来ると、フネ全体に浸水する。米国系ボートでは、かなり以前からタブー(禁忌的)手法となっている。

       
 
  Fig.3
ウェルの水量を一定に保つための工夫。aはただ底にある排水口に栓をした状態。bはその栓の代わりにパイプを差し込んだもので、パイプの先端がウェル内の水面レベルとなる。多くはこの方法でウェル内の水面レベルを保ちながら給水ポンプを動かし、水を循環させる。Fig.1〜Fig.2もこのタイプ。cは最初からウェルにオーバーフロー用の排水口を設けているタイプ。一番確実だが、ちょっとだけコストがかかる。
         
 
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