デッキに作られた凹状の場所がコックピットだといっても程度は種々あるわけだが、アチラの用語辞典は、“a well or sunken”という表現をしている。
wellは井戸とか井戸状の造作で、フィッシュウェル(fishwell)のwellもそれ。sunkenはsinkの昔のスタイルの過去分詞(今は形容詞として使われる)で、水没したとか沈下したとかの意。目が落ちくぼんだ状態などもsunken eyesなどと言うから、けっこうゴボッと沈む感じ。
フネの造作の一部で“水没した”とかいうことになると、また意味が変わってしまうから、それはないとしても、デッキからは相当に低められた場所ということになる。つまり、コックピットというのはデッキの一種ではなく、デッキに設けられた、ある種の開口部と考えたほうが分かりやすい。当然、開口部なのだから、小型艇ではその底は船底だが、それでは人間がそこで過ごすのに都合が良くないから床を作る。この床はソール(sole)と呼ばれるのが普通。“底”に設けられた床なので、感覚的にも分かるような気がする。小型艇の場合、キャビンの床も同様な位置付けなので本来はソールである。
Fig.1は小型艇の構造を概念的に示したもので、Fig.2はそれをバラしたところ(というか、組み立てるところというか)である。もちろん、実際のフネは、単純化して一体成形としてある部分もあるし、逆に、もっと複雑な組み合わせとなっている部分もあるが、概ね、こんなものだと思っていただいてかまわない。