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WHAT'S THE SPORT FISHING BOAT?

フィッシングボートの基礎知識(1)

中島新吾

 

ボートの造作やその名称には、ボーティング先進国で育まれた歴史と、その時間の中で培われた意味が込められている。別に些細なことにこだわったり、能書きをタラタラと述べるつもりはまったくないけれど、そういった“文法”を理解することは、即、ボートという乗り物自体を理解することにつながる。と、いうわけで、フィッシングに供されるボートを中心として、その基礎知識についての記事を連載することにした。ボートそのものの話から艤装品、航法機器、日本の法的規則など、話は毎回あちらこちらに飛ぶと思うが、とにかく「継続は力なり」と考えて続けることにしたい。第1回は、まずは基本中の基本というべきあたりから。

キャニオン・ランナーの資質

非常に大まかに分けると、スポーツフィッシングに使われるフネというのは2種類になる。ひとつは、外洋まで出かけていって、場合によっては数日の釣行まで可能なタイプ。もうひとつは、いざとなったらすぐに母港なり避難港なりに逃げ帰れる程度の海域での釣行に使われるタイプである。
特に、外洋まで出かけることを前提としたフネについては、米国の東海岸で“キャニオン・ランナー”と呼ばれるものの考え方がひとつの基準になる。
キャニオンというのは、グランド・キャニオンなどと同じ峡谷のこと。とはいっても、べつに渓流下りに使われるフネのことではない。この峡谷は海底峡谷、つまり、大陸棚からガクッと海底が下がるドロップ・オフが作り出している峡谷のことだ。簡単な世界地図を見ても分かるのだが、米国の東海岸は、延々と大陸棚が続き、かなり沖まで行かないとドロップ・オフが無い。最もそれに近いノースカロライナのハトラス岬あたりでも50カイリ以上あるだろう。ビッグゲームを狙うなら、まず、そこまで悠々と往復できる、そして場合によっては洋上で漂泊できる、フネが必要になるのだ。そしてそういった能力を備えたものがキャニオン・ランナーと呼ばれるというわけなのである。

外洋向けスポーツフィッシングボート

外洋向けのスポーツフィッシングボートは高い凌波性を確保し、なおかつ船尾で魚のランディングを容易にするため、フリーボード(乾舷。水面からデッキまでの高さ)はバウを高く、スターンを低く設定する。スターンの高さは、人間の身体のサイズが基準なので、フネの大きさが変化しても、それほど変わらない。


A/デイビスヨットの44フッター。掲げた配置図は同社のサンプルプランで、このフネはキャビンの配置に関してカスタム仕様が可能である。取り付けられているタワーはフライブリッジの屋根とタワー・コントロール(タワー上の操舵席)の床が別になっている2層式の背の高いタイプで、ツナ・タワーと呼ばれる。
 
B/ハルはAと同じ。Aのサロン部分がまるまるブリッジとなっている。船尾コックピットのサイズは同様だが、多少の段差はあっても、直接そことつながるオープンスペースの存在は、精神的にも物理的にもフィッシャビリティに貢献する。こういう1層式の背の低いタワーはマーリン・タワーという。
 

Fig.1のAとBは、ノースカロライナの名門、デイビス・ヨットの44フッターである。自他共に認めるキャニオン・ランナーのひとつで、そのバウ形状はカロライナ・フレアーと呼ばれ、美しく、また優れた凌波性を生み出すスタイルとして知られる。
Aはいわゆるコンバーチブルで、標準プランでは、船内に広々としたサロンと2つのステートルームが用意されている。これに対して、デッキハウス(デッキ上部の家状構造)のないBのオープンモデルでは、Aに比べてステートルームもバスルームもひとつずつ少ないものの、フォアデッキ下にかなりの居住性が確保されたキャビンを備え、またサロンはやや狭いが、ブリッジ・エリアには広大なオープンスペースが用意され、フィッシング時のちょっとした休息のスペースとして機能するように考えられている。
外洋まで出かけようというフネは、その航走能力はもちろん、居住性とフィッシャビリティのバランスにも優れたものでなければならない。それはまた、ある程度の大きさを必要とするということでもある。

小型モデルの考え方

同じスポーツフィッシングに供されるフネでも、船上で“暮らす”ことを前提としない場合、その居住スペースはいくらでも削ぎ落とすことができる。その端的な例は、センターコンソーラーであろう。
完全なオープン・スタイルのボート上に設けられるものは、唯一、操船のためのコンソールのみ。あとはまるまるフィッシングのためのスペースとして、アングラーは自由に動きまわれる。こういうアレンジならば、20数フィートの小型艇で、(少なくとも数値的には)40フィートのコンバーチブルのコックピットに匹敵するオープンスペースを確保することが可能である。しかし、どんなに優れた設計のハルでも、こういったフネは荒天には弱い。不沈構造でセルフベイリング(自動排水)を採用していたとしても、大波を被ればそれを遮るモノがないだけに船内は水浸しだろうし、フネやエンジンに支障がなくとも、ジャンプの衝撃を受け、雨風に叩かれているうちに、乗員は疲労困憊してしまう。
こういったフネにとって、そしてその乗員にとって、荒天の気配を感じたらさっさと逃げ帰るだけの脚の速さというのは、唯一、積極的に身を守るすべなのである。だからこそ、本場のセンターコンソーラーの多くは、高馬力の船外機を装備し、35ktを越える最高速度を誇っているのだ。
そんなセンターコンソーラー乗りでも、生理現象はいかんともしがたいし、濡れては困るものの保管場所も欲しいはず。そうしてできたのが、バウにカディ(小船室)をもうけたセンターコンソール・バウカディというタイプだ(Fig.-2,B)。

センターコンソーラーの例

センターコンソーラーのメリットは、とにかく広々としたオープンスペースが確保できることである。ただ、通常のV型ボトムだと、バウ側はハルが狭く、ボトムのVがきつくなるため、どうしても平らな床を確保しにくくなる。それを嫌って、そこを一段高く設定したりするボートはかなり多い。

A/センターコンソーラー。床面が極端に狭くなるバウ側は、図のように一段高くするケースが多い。コンソール内部や床下がわずかな収納スペースとなる。<br>
B/センターコンソール・バウカディ。バウにデッキとその下のカディ(小船室)を設けたもの。内部は狭いが収納、仮眠、トイレット装置などに有効な造作。<br>
C/サイド・バイ・サイド・コンソール。中央に通路を確保。操船者以外の乗員にも航走中の“定位置”がある。バスボートにも同様のアレンジがある。

 

 

 
 
こういったセンターコンソーラーとは別に、最初から小型艇でも居住性を確保しようという考え方で生まれたのがバウカディ・タイプ(Fig.-3,A)である。基本的には前項Fig.-1,Bのものの小型版だから、スタイルは同じようなものだが、フネが小さい場合、その居住性に差が生まれてくるのは当然。それで小型艇の場合は“キャビン”ではなく“カディ”程度の内容ということになる。しかし、このスタイルは20フィート・クラスの小型艇から前項のオーバー40フィート・クラスまで存在しているわけで、それだけ優れたアレンジということもできるわけだ。最近はカディ周辺にウォークアラウンド通路を設け、バウでのフィッシャビリティを向上させたタイプも多くなっている。
 

バウカディの基本アレンジ

カディというのは小船室の意。一般的には小型キャビンくらいの感じの使われ方で、仮眠、休息、広いものでも週末の1泊程度が前提と考えればほぼ間違いない。

A/バウカディ。ただし同様のスタイルはFig-1, Bクラスのフネにもあるので、センターコンソーラーなども含め、単に“オープン”と呼ばれることもある。<br>
B/ウォークアラウンド・タイプ周囲の通路部分はコックピットより高いが、バウへのアクセスは非常に良く、作業やアングリングが安全に行なえる。

 
 

2回目のボート図説

このページに掲げたものは、当ウェブ『第3章』、“カジキを釣る”内の『ビッグゲームフィッシング入門 Part1 ボート編』で「スポーツ・アングラーのためのボート図説」として掲載されたものである。ここでは各部の名称に加え、改めてそれぞれにいくらかの説明を付けて再掲載した(“SMALL FISHING BOAT”は重複が多いので割愛)。
ほとんどが外来語なので、どうしてもカタカナばかりになってしまうが、これはそもそも日本のフネには無かった概念が多いため。また、日本で通用しているボーティング英語の中には、明らかな間違いでありながら、カタログやパンフレットといった印刷物にまで堂々と使われているものもあるので、それらとは異なった表記をしている場合も当然ある。そういったものについては、字数の許す範囲で、できるだけ説明を入れたが、今後のウェブ・マガジン連載の中でも取り上げる予定だ。
この種の用語のほとんどは、その造作の由来や形状から生まれた。正確な名称を知ることこそ、理解につながるのである。

 
外洋向きスポーツフィッシングボート
         
1 フラッグ・スタッフ
旗竿
2 バウ・チョック
チョックはクリートされた繋船索などを挟むための金具。バウにあるからバウ・チョックで、ここに繋船索を通すことで、ロープの位置決めもしっかりと決まり、艇体やその構造物へのロープの当りも防げる。
3 クリート
ロープの端を止めるための金具。イラストの場合は繋船索用だが、他の用途にも使われる。なおクリートという言葉は動詞としても使われる。
4 パルピット
(アンカー・ローラー付き)

日本では、これを“バウ・スプリット”と呼ぶケースが多いが、それは大間違い。バウ・スプリットというのは、帆装されたフネがマストを固定し、前帆を上げるためのフォアスティをより前方からとるために、バウに突き出した棒状のものをいい、人間の乗る台のことではない。その昔、米国などでも日本のツキンボ漁のようなものが行われていたが、そのモリ打ちが舳先で乗っていたのがパルピットと呼ばれた造作である。原義的には教会に置かれている説教壇。アンカーローラーはアンカーやアンカー・ラインの揚降が滑らかになるように取り付けられたローラーのこと。
5 ウインドラス
揚錨機。アンカー用ウインチのことで、チェーン巻き取り用のギザギザのついたドラムをジプシ、ローラ用のドラムをキャプスタンと呼ぶ。その両方を備えたものが多くなってきた。
6 バウ・レイル
レイルは手摺りとか柵とかの総称。この場合はフォアデッキを囲む手摺りで、バウにあるからバウレイル。これをパルピットと呼ぶのはもちろん間違いだが、パルピットを構成する要素ではある。
7 ハッチ
蓋だけをさす場合と、その造作全体をさす場合がある。特に区別するときは開口、あるいは造作をハッチと呼び、蓋はハッチカバーと呼ぶ。
8 ガンネル(ラブレイル付き)
gunwaleまたはgunnelと綴る。もともとは帆船がこの位置に大砲を並べていたところから。現在はハル(船殻)とデッキの継目の位置をいう。ラブレイルは擦れ止めのために取り付けられる長尺材で、アルミ、ゴム、樹脂、木製などがある。
9 ポートライト
舷窓。舷側に設けられた窓。オープンポートという呼び方もある。
10〜13 ヘルム・ステーション
ヘルムは舵取りやそのための装置。つまり、操舵所とか操舵席のこと。略すときは単にヘルムで済ませることも多い。ヘルムという言葉を使わない場合は、コントロール・ステーション、つまり操縦席。といっても、ここをコックピットと呼ぶのは大間違いで、フネの場合、コックピットの原義的な意味に添った造作が別にある。
10 コンソール
11 エンジンコントロール・レバー

ひとつのエンジンをトランスミッション用とスロットル用の2本で扱うのがツイン・レバー、両方の機能を1本でまかなうのがシングル・レバー。
12 ステアリング・ホイール
いかにも“舵輪”というタイプはラットと呼ぶ。
13 ヘルム・シート
操舵席の椅子。ヘルム・チェア、ヘルムス・ベンチと呼ぶべき造作もある。
14 ウィンド・シールド
これはごく一般的な言い方だが、ディフレクター(走行風の偏流器)とか、スプラッシュボード(飛沫避け)などと呼んだ方がいいような形状のものもある。
15 グラブ・レイル
グラブはgrab。つかまることを強調してあるが、要は手摺り。この場合はサイドデッキを歩くときなどのためにつかまるためのもの。
16 トップサイド(ハルサイド)
舷側。ハル側面。
17 ウォーター・フィラー
フィラーはfiller。生活用清水の給水口。
18〜21 トラスビルト型アウトリガー
張線とスプレッダーを使ってトラス構造にしたアウトリガー。
  18 ストラット
前後方向の支持材。
19 サポート・ストラット
上下方向の支持材。
20 スプレッダー(メタルスパイダー)
スプレッダーは幅を広げるものの意。張線をポールから離して張りださせ、これと張線とアウトリガーポールで三角形を構成、トラス構造を成り立たせている。メタルスパイダーは材質と形状からの愛称。
21 アウトリガー・ポール
22 タワー

それぞれの魚の習性からか、イラストのような1層式のものをマーリン・タワー、2層式の背の高いものをツナ・タワーと呼ぶ習慣がある。材質は通常アルミ。
23 ハードトップ
またはキャンバストップ
イラストのものはタワー・コントロールのためのプラットフォームを兼ねている。
24〜25 タワーコントロール
タワー上に設けられた操船装置。通常タワーヘルムとは呼ばないが、それはヘルムという言葉が“航海”のための舵取り的ニュアンスがあるからだろう。タワー・ステーションと呼ぶことはある。
24 エンジンコントロール・レバー
25 ステアリング.ホイール
26 サン・ドジャー

日除けの総称。オーニングという言葉もよく使われるが、こちらは天幕という意味。
27 センターリガー
用途はアウトリガーと似たようなものだが、イラストのように1本のセンターリガーの場合、左右への展張はできないから、もっぱらフネの中心線から出すラインを上方へ引き上げる機能を持つ。2本のセンターリガーをV字型に配すなどしたフネもある。
28 ロケットランチャー
&イラストのものはロッドスタンド専用。連装ロケット打ち上げ器のようなスタイルからの命名。
29 レイル
手摺り、柵の総称。この場合はフライブリッジ後部に設けられた手摺のこと。
30 ベイト・プレップ・ステーション
プレップはprep。preparatoryと同意。ベイトの準備をするための造作。シンク、用具入れ、マナイタ、冷凍庫などで構成される。形状によってはベイト・プレップ・カウンターなどとも呼ぶ。
31 ボルスター
詰めモノをした緩衝材とかパッド類の総称。フィッシングボートの場合はコックピットの内側周囲に貼られる人体保護のためのパッド。コーミングパッドという言い方をするケースもあるが、イラストの場合はコーミングが無いので本当は少々違う。
32 サイドデッキ
高さで言えば、“ガンネル高”だが、水平面はコックピットを凹ませた名残りなので、正確にはデッキということになる。ここをコーミングと呼ぶ人もいるが、コーミングというのはデッキ開口部の周囲に立ち上げられた“縁材”のことで、かつては多くのフネがコックピットの周辺にコーミングを設けていたため、その名残りである。表現としては、少々不正確。
33 ロッド・ホルダー
人間がロッドを保持する代わりに、ヒットまでの間、ロッドを保持するためのもので、ロッドスタンド(使わないとき置いておく)とは区別して使う。
34 ロッド・ラック
(ホリゾンタル・タイプ)
直訳すると竿棚。ホリゾンタル・タイプは水平に置く方式のもの。これに対して垂直に置くものをバーチカル・タイプという。
35 ホーズ・アイ
(ホーズ・ホール)
舫いなどを通すための穴、あるいは金具。イラストのようなフィッシングボートではコックピット周辺に突起物を突出させないため、クリートはコックピット内壁に取り付け、ホーズ・アイでロープを導く。
36〜39 ファイティング・チェアー
非常に大きな力がかかるので、取り付け部にはかなりの強度が要求される。いくつかのビルダーではコックピット・ソールだけでなくキールに直接応力が分散されるような補強をいれている。米国のいくつかの文献では、フットレストなし、バックレスト取り外し不可のものは“フィッシング・チェアー”としている。
  36 バックレスト
ファイト時は取り外せるか、水平近くまで倒して、アングラーのポンピングを妨げないようにできる。
37 シート
付属のクッションを外すと、バケット・ハーネスなどが滑りやすい仕上げとなっていることが多い。
38 フットレスト
通常調整可能。ノンスリップ仕上げも多い。
39 ジンバル
高さの調整ができるものもある。
40 コックピット・ソール
こういった造作の、この部分をアフトデッキと呼ぶのは完全に間違い。こんな風にデッキに開口を設け、周囲を囲まれたところのことはコックピットと呼ぶ。コックピットとはそもそもその造作から付けられた名称で、飛行機の操縦席がそう呼ばれるようになったのは、当初、胴体上部から開けられた単なる穴だったからだ。当然、デッキに設けた開口だから、その床はデッキではない。かつてフネが木造だったころには、“ビーム”(梁)に張られているのがデッキで、フレームに設けられる床が“ソール”という定義もあった。現在のFRP製の小型艇では、原則として、ガンネル高、あるいはそれより高いところに設けられているものがデッキと呼ばれるべきだろう。
41 スターンライト
42 スイム・プラットホーム

こういった造作をトランサムステップと呼ぶこともあるようだが、少なくとも欧米の雑誌や文献でその表現を見たことがない。水遊びには非常に役に立つが、スポーツフィッシングの場合、ギャフィングやランディングの際に邪魔になることが多く、ここに出て作業できる静かな水面以外、こういったインボードエンジンのフネの場合、有効な造作とは思えない。
43 トランサム
滑走艇の場合、航走時にフネの下を通ってきた水流を船尾で断ち切り、抵抗を減少させる。結果、こういった船尾になるが、その船尾を形成する船尾板をいう。
44 トランサム・ドア(ランディング・ドア)
ツナ・ドアと呼ぶ場合もある。イラストのように外開きとするのは、内開きだとランディングの際に衝撃で留め金が外れ、ドアが暴れて乗員がケガをするケースを避けるため。ドアのみでなく、ガンネルより上部(正確にはここがアフトデッキ)を跳ね揚げ式ゲートとして、完全に開口できる造作も少なくない。
45 フィッシュ・ウェル
イラストのように水を貯めて使うものをウェルという。魚を生かしておくことに注目すればライブ・ウェルだし、それがベイト用というのならベイト・ウェル。氷詰め用などのものはフィッシュ・ボックス。
46〜48 コックピット・コントロール
アングラー間近での操船、あるいは少人数での操船などを考慮し、コックピットに操船装置を備えるフネがある。イラストではステアリング・ホイールも備わっているが、エンジンコントロール・レバーのみというケースも少なくない。2基掛けインボード・エンジンの場合、それだけでかなり自在にフネは操れる。
46 コンソール
47 エンジンコントロール・レバー
48 ステアリング・ホイール
49 エンジン室ベンチレーター

前進時に空気が入ってくる形状のルーバーのものはエア・インレット、逆に吸い出される形状のものはエア・アウトレット。最近は舷側にエア・アウトレットを設置し、エア・インレットはコックピット内側の、水が入りにくい場所という手法が多くなった。
50 フューエル・フィラー
ウォーター・フィラーと同様、こちらは燃料タンクへの燃料供給口。2カ所以上の燃料タンクそれぞれに、別々のフィラーを備えたフネもある。

バイキング38コンバーチブル。最初の項で説明した、キャニオン・ランナーとしての資質を備えた、トーナメント・サイズの1艇である。船尾にはフィッシングのためのコックピットを備え、ライズド・シアーで凌波性とフィッシャビリティを確保している。フライブリッジ後端に5連のロケットランチャーが見える。
 

米国系コンバーチブルの造作

スポーツフィッシングのために作られたフネを代表するもののひとつとして、米国系のコンバーチブルがある。もちろん、小型のフィッシングボートの中には、それこそ“戦闘的な”という表現がぴったりするくらい、スポーツフィッシング向きのものもあるわけだが、ここで、あえてコンバーチブルを取り上げたのは、それがフィッシングだけでなく、その他のものも含めたフネの造作を説明するのに都合がいい艇種だからなのだ。
コンバーチブルという言葉は、あのハトラス・ヨットが“フィッシングもでき、船内の寛ぎも得られる両用艇”という意味で、初めて用いた言葉といわれ、以来、数多くのビルダーが使っているが、実際、最初の項でも述べたように、フィッシャビリティと居住性が、とてもうまくバランスした艇種なのである。コックピットやヘルム・ステーションといったスペースは、とことん機能的にできていて、パーティーなどを開けるようなエレガントな造りではないが、キャビン内に入ると、一転して高い居住性と寛げるインテリアが用意されているのである。
特に、その中でも40フッター前後のクラスは“トーナメント・サイズ”と呼ばれ、時間制限の設けられたフィッシング・トーナメントでも有利に戦える条件を備えたものとして注目されている。

 
少人数でも比較的自由に操れるサイズなので入出航に手間がかからず、最近は30kt近い速度が出せるためポイントまでの時間も節約でき、ヒットを待つ間はエアコンの効いたキャビンで十分に寛ぐことができる。さらに、いざヒットともなれば、その優れた操縦特性を利してファイトでき、多少の荒天ならばタフな走りで乗り切れる。むろん、さらに大きなフネならば、キャビン内での寛ぎや、荒天に対するタフさというのはもっと上回っているだろうが、少人数で扱えるかどうか、また、ファイト時に機敏な操船が可能かどうかということになると、少々つらい。逆に小さなモデルとなると、操船は楽だし、フネによってはスピードも速いだろうが、それにエアコンが効いた、広々としたキャビンは望めないし、荒天時の疲労も大きくなる。
そんなこんなで考えると、落ち着くところは40フィート前後ということになるわけだ。そのためもあってか、各ビルダーとも36、7フッターから44、5フッターにかけて、かならず主力艇種の1〜2艇はラインナップしているのである。そして、そういったフネは、米国系コンバーチブルがどんなものか、うまくあらわしてくれていると思う。
モデル艇はバイキングの38。1990年に発表された同社の新世代ラインナップの先駆けとなったフネだ。このページにはその一般配置図(こういう風に船内のようすを表した図面のことを呼ぶ)と、各部の造作を撮影したものを掲げた。前項の「ボート図説」などと比較しながら、ご覧いただきたい。
 


1. この部屋の物理的な位置を示す名称はフォクスル(船首室)。格付けとしてはオーナーズ・ステートルーム、あるいはマスター・ステートルーム。バウ側を頭にしてダブルバースを配置したオーナーズ・ステートにするのは最も普及した手法。バウ・バルクヘッド(船首隔壁)のミラー張りもまた、けっこう普通。


4. フネの調理場はギャレーという。一般にサロンなどと同じ床レベルに置かれた配置をギャレー・アップ、下層の床に置かれたものをギャレー・ダウンと呼ぶが、このフネはその中間レベルにそれを配した、新しいスタイルを採用した。サロンとはカウンター越しに会話ができ、飲み物などのサービスも行ないやすい。


7. コックピット。トランサムの右舷側には、跳ね揚げ式ゲートの付いたトランサム・ドア。もちろん外開き。ソールに設けたフィッシュボックスのハッチはチェア取り付けポイントを避けて設けられている。このモデルの場合、ボルスターはオプションとなっており、撮影したフネには装着されていなかった。

 


2. バウ側はフォアデッキの下にキャビンが設けられることになるので床が下がる。ちなみにサロンはエンジンルームの上にあるので床レベルは高い。ここは食事のために設けられている場所で、フネ用語ではダイネットという。このフネは、ケーブルを下げ、その上にマットを置けばバース(寝台)にもなるという造りだ。


5. キャビン内のサロン。米国北東岸のコンバーチブル(バイキングはニュージャージー産)は、伝統的に濃い目の色調のチークを使った、落ち着いた内装を得意とする。このフネは後部から左舷にかけてL字型のソファを置くが、小型艇の内装などで見かける作り付けの長椅子はセティと呼ばれる。


フライブリッジを左舷側から。ハードトップはFRP製。こういったものを、タワーの上半分を取り去ったものという考え方でハーフタワーと呼ぶことがある。周囲に張られた透明なカバーはエンクロージャーという。こういうエンクロージャーを完全に外すには、まるでパズルのような手間がかかる。


コックピットのアングラーとコミュニケーションしやすい、フライブリッジの最後端に位置するヘルム・ステーション。天井に設けられているのは、ラジオボックスとかオーバー・ヘッドコンソールと呼ばれるもの。ステアリングはほぼセンターライン上で、左舷奥の席にはナビゲーターが座る。

 


3. トイレットのための部屋はヘッド・コンパートメントという。トイレットをヘッドというのは、その昔、船首の先端に水夫用のそれが設けられていたところから。このクラスのフネになると、独立したシャワールームや洗面台を設けたものが多い。また、通路とステートルームの両方からのドアがあるのも普通。


6. コックピットのデッキハウスに寄せて設けられているベイト・プレップ・ステーション。中央はシンクとカッティング・ボード(マナイタ)のセットで、シャワー状の蛇口で簡単に洗い流せる。オプション類がほとんど未装着だが、オプションリストには冷凍庫やライブベイト用エア・インフレータなどが並ぶ。

 

今だからこそ基礎知識

この記事で述べたかったのは、そしてこれから連載していくうえで根底となるのは、フネの造作やそれを示す名称というのが、決してそれぞれが勝手気儘に決められたのではなく、造作が名称を生み出し、また逆にその名称が造作の基本を理解する手助けとなってきた、ということ。そして、現在世界中のフネで、まるで基本文法のように採用されている造作は、歴史の淘汰の中で、完成されてきたものであるということである。
もちろん、これまでの常識を打ち破る新しい試みは行われ続けなければならないだろうし、そういった果敢なチャレンジこそが新しい発見を生み出すことは事実だ。しかし、それが新しい試みなのか、そして画期的なことなのかは、基本が分からなければ判断のしようがないではないか。
日本ではまだボーティング黎明期だ。いま間違った知識が蔓延したら取り返しがつかなくなるおそれさえあるのだ。

 
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フィッシングボートの基礎知識(1)
フィッシングボートの基礎知識(2)
フィッシングボートの基礎知識(3)
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フィッシングボートの基礎知識(6)
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フィッシングボートの基礎知識(8)
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