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OFF SOUNDINGS 34
究極のスポーツフィッシャーマンを設計する

by Dave Gerr(デーブ・ガー)
翻訳/早川知加志
 
 
これは、ある一人の熱心なボート・フィッシャーマンのために設計された、個性的なボートの誕生物語である。
どんな商品や道具についても言えることだが、平均値に合わせ80%の人が満足するように企画された品物は、実は個人の要求を全然満たさない結果となる場合がえてしてあるものだ。たとえば既製服、たとえばクルマ……その反対に、特定の個人のわがままな希望のために作られた物が、意外に多くの人の要求に合致し、受け入れられる例を見ることも多い。
このボート「オフ・サウンディングス34」は、スポーツ・フィッシングに目的を絞り込み、それ以外はいっさい切り捨てたところに、一種のいさぎ良さと魅力が感じられるスポーツ・フィッシャーマン(SF)だ。ニューヨークの新進ヨットデザイナーが解き明かすパフォーマンス性能とフィッシング機能の秘密も、マイボート・フィッシングに関心のある人々にとっては、興味深く新鮮に映ることだろう。

ニューヨークの、オフ・サウンディングス・ヨット社がプロダクション生産している「オフ・サウンディングス27」スポーツ・フィッシャーマン。OS34の姉妹モデルである。photo by Off Soundings Yacht
  筆者はカスタム設計を専門とするデザイナーで、船ならサイズとカテゴリーを問わず、カヌーからメガヨットまで多くの実績を持っている。既存のボートに飽き足らないオーナーがいたら、ぜひ一度、彼に相談してはいかがだろうか。
新しいコンセプトのボートというのは誰かの頭の中の一瞬の閃きから生まれるのが常だ。今回のケースでは、その閃きは、かつては素晴らしいボートだと満足していたのに、何百時間か乗ったあと――しばしば起こることだが――もう期待したようには走れないのがわかったとき、起こったのだった。
スポーツフィッシングに真剣になると、ボートマンは入手できるうちで最高の道具類を求めるようになる。ロッドしかり、リールしかり、魚探もロランも、そのほかすべての釣り道具を最高のもので揃えたくなる。しかし、外洋の釣りで最も重要な道具はフィッシングマシーン、即ち、釣り師を沖合いはるか魚のいるところまで送り届け、釣りの座を提供し、最後に釣り師とその獲物を安全に連れ帰るボートである。
 

元潜水艦乗りで熟練したボートフィッシャーマンでもあるジム・ミーリーは、自分のフネではやりたい釣りに出るのがもう無理だと、ある日、気がついた。つまり、自分は今や本格的なフィッシングマシーンを必要としていると判断したのだった。それ以来、彼はボートショーには必ず出かけたし、造船所は何か所も訪ね歩いた。海では鷹のように鋭い視線でいろいろなSFの走りを観察し、船長をつかまえては質問を浴びせかけた。「このボートの走りはどうだい? たたきやすいか、それとも波に突っ込む方か? 横ゆれはきついのか? 後進の効きはいい方か?」
確かに素晴らしいフィッシングボートはたくさんあり、ジムも大いに気に入った艇が何隻かあった。しかし、ジムが絶対必要だと考える条件をすべて満たしたボートはとうとうなかった。「コクピットさえもう少し広ければ……」「電子機器用のスペースにほんの少し余裕があれば良いのだが……」「キャビンが窮屈でなかったら……」
ふと気がつくと、ジムは近所のとある造船所にしばしば出かけるようになっていた。それはロングアイランド(N.Y.)のマノービルにあるオフ・サウンディングス・ヨット(OSY)社で、ここでは21ftと27ftの素晴らしいプロダクション艇を造っていたが、ちょうど新しく30ft台のモデルをラインナップに加えたいと考えていたところだった。
私の設計事務所の電話が鳴ったのはそのすぐ後のことだ。OSYの社長がジムの新艇の設計依頼をしてきたのだった。彼のところでも出来るはずの仕事だが、ジムの要求をもてあましていると言うのである。少し話し合っただけで、ジムの求めているのは“究極のスポーツ・フィッシャーマン”以外の何ものでもないと私にもわかってきた。

「究極のスポーツフィッシャーマン」を定義してみよう

究極のSFを成り立たせる要素は何か? これは議論を呼ぶこと必然のテーマである。“究極”という言葉から金ピカの90ftヨットをイメージする人がいるかもしれない。ワニ皮張りのラウンジシートや黒檀仕上げの内装を施した豪華なモーターヨットだ。そこまで行かずとも、たっぷりとしたキャビン空間のあるフライブリッジ艇を想像する人もいるだろう。しかしジムがほしかったのは、徹頭徹尾スポーツフィッシングを目的としたボートだった。彼には大洋横断の計画もなかったし、友人やチャーターのお客を20人ほど乗せ、あちこちへ出かけるつもりもなかった。彼はまた、維持費を捻出するためにチャーター・レンタルに貸し出さなければならない大型のボートは決して望まなかった。友人や家族と長期クルーズをしたり、船上生活を楽しむつもりもなかった。確かに彼もキャビンを要望したが、それはキャニヨン(※1)で時たま一晩か二晩ぐらい快適に過ごせれば十分という意味だった。
彼が最も強く要求したのはコクピット――それもとんでもなく広いコクピットだった。SFにとってコクピットは戦闘の場であり重要な作業のスペースだ。広ければそれだけ多くの作業ができる。本当の釣り師ならファイティング・チェアや手の届きやすい大きなフィッシュボックス、ベイトプレップ・ステーション、タックル収納庫、トランサムドアなどを設置するスペースがどうしても必要になる。コクピットが十分に広ければ、何人ものアングラーがそういった設備を同時に使っても互いに作業のじゃまにはならないはずだ。ジムは金ピカのバスルームには関心がない。本当のフィッシングマシーンは一個の道具だと彼は知っているのだ。本格的なフィッシングマシーンにワニ皮張りのラウンジシートや黒檀の内装がいらないのは、施盤に純金のケーシングや黒檀の台が必要ないのと同じことなのである。

※1:「キャニヨン」とは、アメリカ大陸北東部の大陸棚につらなる海底谷のことで、ツナなど回遊魚のポイントになっているところである。陸岸から4〜5時間走行しなければ行き着けない場合が多く、キャニヨンで釣るためには夜釣りも含め長時間の洋上生活を強いられる。その意味で、キャニヨンを前提としたSF(キャニヨン・ランナーと呼ばれる)は耐航性、居住性、釣り機能性、スピードのすべてを兼ねそなえなければならない。キャニヨン・ランナーがSFの理想的な姿と言われるのはそんな理由からである。

 

ボートの全長を正しく決める

まず、ジムと私はいろいろな全長のデザイン・スケッチをやりとりし、議論に時間を費やしたのち、“究極SF”の理想的な全長を34ft(10.2m)に決定した。このサイズなら荒天でも充分な耐航性を持たせられるし、快適なキャビンと広いヘルムステーション、さらに本当に大きなコクピットも提供できるのだ。エンジンについては、ジムはキャタピラーの新しい3116TAが気に入っていた。当時、発表されたばかりのこの新しいキャタピラーは、かの定評あるCAT3208TAとほぼ同馬力であるにもかかわらず、サイズは高さが1/2ft(15cm)近く低く、幅も1/2ft以上縮んでいて実にコンパクトだ。その上、3116の重量は3208より約400ポンド(約182kg)も軽いのだ。もちろんほかのエンジンを載せてもかまわないのだが、ボートの長さ、エンジン、艇の使い方が明確だったので、デザインは一気に固まった。「オフ・サウンディングス(OS)34」が、それである。

全幅は耐航性、スピードに影響する

全長の決定についで重要なのは、艇の全幅が広すぎないようにすることである。なぜなら、本物のSFは全天候型のボートでなければならないからだ。
ビーム(全幅)とルーム(艇内空間)を同義語だと思っているボートマンも多いが、実際は違うのである。ルームはボリュームであり、ボートのボリュームは即ち排水量である。たとえば、ここに同一排水量のボートが2隻あるとしよう。一隻は幅広で全長が短く、逆に他方は長くて細身である。この2隻では利用可能なルームも建造コストもほぼ同じになるだろう。しかし、2隻のエンジンが同一馬力だとすると、実は細身の艇の方が幅広艇より速く、しかも荒天下においてより楽にハンドリングでき、乗り心地も優るのである※2。もちろん、SFを本当に細長く造るわけにはいかないが、幅が広すぎればたたきやすくなるし、ローリングも鋭くきついものになりがちである。さらに、ボートの全長に比べてワイドなトランサムは、追い波や斜め後方から波を受けたとき、ブローチング傾向を増大させる。なぜなら、波が後ろ、あるいは下からトランサムに当るので、スターンの幅に比例した浮力をトランサムに与えるからだ。波に追い越されるたびにトランサムが持ち上げられ、横方向へ回転させられるわけだ。OS34のように全幅を中庸に保てば、この傾向をだいぶやわらげることができるのだ。

※2:細身の艇の効率の良さ、ハイパフォーマンスについては、同じ筆者による別項ウェブ記事でより詳しく解説されている(訳者注)

 
 

快適な走行性を狙ったハル・デザイン

無理のない全幅の採用に加え、オフ・サウンディングス34の船型には良いボートにとって非常に大切な要素・特徴がいくつか折り込まれている。
まず、前部デッドライズが非常に鋭いから(バウで60度)、たたく傾向は十分におさえられている。加えて前部チャインは高く持ち上げられ、これがまた、たたく傾向を押さえるのに寄与している。荒れた海面での低速操船性を高めるため(高速でも同じだが)、前部セクションには若干のコンベックス(凸型のふくらみ)を与え、十分な浮力を確保している。
フォアフットも深めになっているが、これが鋭いバウエントリーとあいまって、高速での波当りをやわらかいものにする。その結果、荒天下でもOS34は風上航のスピードを十分に維持できるはずだ。しかし、この深いフォアフットは、反面で、風下航(追波)での操縦をむつかしいものにしてしまう。そこで私としてはバウとスターンの形状、浮力を決定するに当っては慎重な吟味検討を加え、ベストなものにまとめあげたつもりだ――この作業はサイエンスというよりもアートに近い領域での仕事であった。
また、OS34はバウに大きめのフレアを持っているが、これは艇をドライに保つのに非常に有効なデザインである。このデザインはまた、バウ上部に十分な浮力を与えるから、ステムをより鋭く造ることが可能となり、荒天下に低速で走ったとき、バウが沈み込むこともなくなるのである。
チャイン/スプレイ・ノッカーは波を下方へ効率的に返してやる形状を採用した。そのためボートは非常にドライで、同時に、プレーニング時のリフト効果や航行安定性も高まることになった。このチャインは艇後部へ行くにしたがって幅が広がっているので、リフト効果はさらに高くなっているが、この部分がたたく傾向を強める心配はない。さらに好都合なことに、幅のある後部チャインは水線下へと伸びており、小刻みな鋭い横ゆれを防止するのに役立ち、ボートを非常に安定した“釣りプラットホーム”にしている。

  艇の後部セクションは中央部よりほんの少しだけVが浅くなっている(デッドライズはミジップで21度、トランサムで20度)。しかし艇後部の幅はせばめてあり、ボリュームも少なくしてあるから、深めのVのままでもデッドライズを減らしたのと同じ効果があり、トローリング時やドリフトしたときの艇の安定性を高めている。
もちろん、OS34のラインズに盛り込んだ要素はほかにも数多くある。ハルとチャインの長さ方向のバトックアングルは最適なプレーニング・トリム角度(前後方向に約4〜5度)が得られるように調整してあり、前方視界がさまたげられることはない。
 

フライブリッジは必要か

下にキャビンを持つフライブリッジ形式は艇の背を高くし、重くなり、風圧抵抗を増加させるので、オフ・サウンディングス34では採用しないことにした。おかげでOS34を低いプロフィルのスマートなボートに仕上げることができた。このスタイルには、外見ばかりでなく、風圧抵抗が減ってスピードが上がり、重心を下げてローリングもやわらかくなるという実質的な利点がある。もちろん、「釣りは少しだけでいい、クルージング主体で楽しみたい」というオーナーのために、私の事務所ではすでにFB/キャビン・バージョンのデザインも仕上げてある。しかしこのバージョンがジムの狙う“究極のSF”というコンセプトからだいぶ離れたボートであるのはいたしかたのないところだろう。

コクピットを比較する

オフ・サウンディングス34のコクピットは、コーミング間の内のり幅で10ft(約3m)を少し下回り、シヤー間の幅では10ftを少し越えるビームである。確かに幅はせまい。前述した通り、ビーム(幅)をルーム(容量)の主な指標だと受けとる釣り師は多いが、幅の数字だけ見ているとだまされることにもなりかねないので要注意である。実際は、OS34のコクピットは93平方ft(約8.37平方m)もあり、このサイズのボートとしては巨大と形容してもよいほど広いのである。参考のため、ほぼ同クラスのモデル数種とコクピット広さを比較したのが表1である。

  読者もひと目でおわかりと思うが、OS34のコクピットは市販プロダクションモデルのどれよりも広いし、一方、コーミング間の幅では平均値を大きく下回っている。当然のことながらOS34にはトランサム・ドアもついており、その幅は32インチ(約80cm)で、巨魚でも楽に取り込めるフルサイズとなっている。
 

デッキとコクピットの配置は?

オフ・サウンディングス34の左舷側、コクピット前端には引き出しと物入れ付きのタックル・カウンターが置かれている。どのボートでも釣り用ギアはすぐに数の増えるものだが、ここならそれも全部入ってしまう。カウンターの上はシンクで、下にはデッキ・ウォッシュダウン用のホースがリール巻きでしまいこまれている。右舷側のコクピット前端はイケスになっている。ヒンジ付きの折りたたみ式ベイトプレップ・カウンターがついており、持ち上げれば広い作業台になる。コクピット・ガンネルの下は両舷とも釣行時につかうロッド・ストレージになっている。長期保管用ロッドラックはキャビンの中に設けられていて塩や湿気とは無縁だ。ダイネットとVバースの天井に、竿をしっかりと固定できるラックが取り付けてある。
ブリッジデッキのステアリング・ステーションは、右舷に横幅のあるヘルムシートを置き、左舷にはクッション付き5ft(約1.5m)長のクーラーが座席の役割を果している。ブリッジデッキの床は大きく開くのでエンジン保守は容易である。コクピット内からブリッジへ上るときは横幅3ft(0.9m)のステップを踏んで行くが、このステップはタックルボックスのふたを兼用している。このコクピット/ブリッジデッキ形状の特徴は、たとえトランサムドアがいっぱいに開いていて大波が打込んだとしても、水はコクピットに閉じ込められキャビンは浸水をまぬがれるというところにあり、安全面からいって大変効果的である。
ヘルムステーションそのものは、このサイズ、タイプの艇では標準的なものだ。しかし、本格指向のSFが必要とする電子機器類はすべて収納できるように、目の高さ位置に幅6ft(1.8m)のラジオボックスをハードトップ下に取り付けてある。
ウインドシールドはスモークのレクサンを使ったワンピースで、上部にはモールディングを付けるか頑丈なパイプを取り回すように考えている。それをつかめば荒れた海でもしっかり自分の体をホールドできるばかりでなく、周囲にストーム・エンクロージャーを取り付ける場合はその取り付け場所として利用できる。

 

ツナかマーリンか。ベストのタワーを選ぶ

オフ・サウンディングス34には、フルサイズのツナタワーを装着するに充分な安定性があるが、われわれはツナタワーよりも低めの「マーリンタワー」を取り付けることにした。たいていの釣り師は、どちらにすれば良いのか、決断に苦しむものだ。より背の高いツナタワーの方が視界は良いし、レーダーも遠くまで届く。また魚も探しやすい。
しかし残念なことに、マーリンタワーに比べツナタワーはローリングがきつくなる。風圧抵抗も増し、艇は遅くなる。強い横風を受けたときは操縦がより難しくなる。背が低く軽いマーリンタワーなら、視程は確かにツナタワーより落ちるが、ローリングや風圧抵抗の面でより良いボートになるはずだ。

 

キャビンのアレンジとエンジンのアクセス

オフ・サウンディングス34のキャビンにあるダイネットは、テーブルを降ろせば6ft4インチ(約190cm)のダブルバースにかわる。前部のVバースの方は長さ6ft6インチ(約195cm)で幅が2ft(60cm)と十分な大きさがあり、フィラーウェッジを置けばキングサイズのベッドに変わってしまう。ヘッド(トイレ)は独立しており、シャワーは背を立てて浴びることができる。キャビン内にはほかに冷凍冷蔵庫付きの大きなギャレーやハンギングロッカーが完備してある。室内高さは6ft4インチと余裕十分である。
ブリッジデッキの下にはキャタピラー3116エンジンが2基、きれいに収まる。エンジンルームは船の横幅いっぱいを使っているが、ブリッジデッキ床の3枚のパネルを上げてしまえばエンジンへ完璧にアクセスできるようになっている。中央のパネルはいつでもすぐ上げられるし、ヘルムシートとクーラーをどかせば、他の2枚も簡単に上げられる。

オフ・サウンディングス34のスピード

経験豊かなジムは、オフ・サウンディングス34の巡航速度を無理せず20〜25ノットと計画していたが、しかし最高速度は30ノット以上を要求していた。たとえ満載状態で走ろうとも、OS34のスピードはジムの要求に充分応えられるものである。(表2参照)

 
 

30ノット以上のスピードが得られればポイントへもすばやく行けて釣果は上がるし、天候の急変にも対応できる。ボート仲間の間でもある程度鼻を高くすることができるというものだ。

燃料容量、航程、そして重量トリム

オフ・サウンディングス34は清水容量75ガロン(340リットル)、燃料容量は標準タンクで300ガロン(1360リットル)を予定している。これらのタンク類はOS34の浮力中心近くに配置されているので、空であろうと満タンであろうと、トリムの変化は最小におさえられる。さらに、燃料タンクを前後に分けたので、後部タンクから前部へ(その逆でもよいが)ポンプを使って燃料を移せば、トリムをさらに修正することも可能だ。
この「複数タンクシステム」は釣行のとき便利だ。往きは後ろのタンクを使い切るまで安心して走っていられる。後部タンクが軽くなった分は釣果の重量でバランスされることだろう。帰りは前部タンクの燃料を使って楽に帰って来れる――容量は前部タンクの方が多いのだから、余裕をもって帰れるというわけだ。

排水量は常に変化する

ボートマンはボートの排水量が固定していると考えがちである。しかし実際には、積載状態により排水量は始終変化しているのだ。オフ・サウンディングス34の計画排水量は14,630ポンド(6,640kg)だ。しかし氷や燃料、水を載せ、何人ものクルーが乗り込めば、最大で15,500から16,000ポンド(7,030〜7,260kg)の排水量で走ることになるだろう。氷を積み込まず、燃料やクルーが少なめなら、OS34の排水量は13,500ポンド(6,120kg)まで下がるだろう。

操船性能が最重要

本格的なSFは、低速においても、また魚とファイトしランディングするために後進をかけた場合でも、常に高度な操船性を発揮しなければならない。そのため、より操船性を高めるため、オフ・サウンディングス34には通常より若干大きめの舵を採用している。このラダーはトランサム後部いっぱいに取付けられ、釣り糸や魚を傷つけないような配慮を加えられている。
重量を最大限に軽減するため、OSY社はOS34のFRP艇体にバルサ・コアを採用している。このサンドイッチ構造は同時に、静かな走行と堅牢な艇体を実現し、断熱性を向上させるのには最適の工夫だ。結露のトラブルも防ぐことができる。
OS34のハルはハンドレイアップで作られ、ユニ・ディレクショナルのEグラスをバイアクシャルに使用し、マットは1.5オンスを採用している。

結論。もしも私がサカナだったら……

すべてを考え合わせて結論すれば、オフ・サウンディングス34はただ一つの目的のために研ぎすまされたフィッシング・マシーンそのものと言うことができよう。
もしも私がサカナで、OS34のようなボートがこちらに向かってくるのを見たら、すぐに観念し自分からコクピットへ飛び込むことだろう。(それじゃスポーツフィッシングの楽しみがなくなってしまう!)

 

筆者:Dave Gerr

設計事務所ガー・マリンを主宰するニューヨーク在住のヨットデザイナー。プレジャーボートから業務艇まで、またパワーボートもヨットも手がけ、これまで3.2mのカヌー、ジェットドライブ・ランナバウト(60ノット)、18.2mレーシング・ヨット、30mメガヨットなどのほか、多数のクルーザー作品を発表している。
ヨットデザインをウエストローン・スクールで学んだほか、プラット・インスティテュートで工業デザイン、ニューヨーク大学で物理学を修めた。
ライターとしての活躍もめざましく、フネの本質を的確に、かつわかりやすく表現する筆力には群を抜くものがある。すでにヨッティング、クルージングワールド、スモールボートジャーナルなど全米のマリン雑誌に100以上の評論を寄稿している。著作は3冊ある。自作用セイルボート・デザイン各種を解説したPocket Cruisers for the Backyard Builderと、エンジンとプロペラの力学についてわかりやすく解説したPropeller Handbookで、どちらもインターナショナル・マリン・パブリッシング社(米、メイン州)から出ている(洋書店で注文すれば日本でも入手可)。
本稿は、D.ガー氏の3冊目の著作The Nature of Boats(ボートの本質)からの抜粋である。

 
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OFF SOUNDINGS 34
フィッシングボートの基礎知識(1)
フィッシングボートの基礎知識(2)
フィッシングボートの基礎知識(3)
フィッシングボートの基礎知識(4)
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フィッシングボートの基礎知識(6)
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