 |
 |
|
 |
|
フライフィッシングの更なる可能性を探究する
PART1 キハダをフライで狙う
YELLOWFIN TUNA ON FLY
文/ニック・クルシオーネ
訳・構成/編集部・雨貝健太郎 |
|
ソルトウォーターのフライフィッシングは未だ発展途上である。日本のフィールド環境は決してベストの条件を提供しているとは言いがたいが、それにしてもフライのターゲットとなるゲームフィッシュがシイラとシーバスだけでは、あまりにも寂しすぎやしないだろうか。今後、「スポーツアングラーズ」は海のフライフィッシングをひとつのテーマとして、その更なる可能性を積極的に探究していくつもりだ。 |
 |
 |
 |
そこで、今回は第一弾としてイエローフィンツナとビルフィッシュを取り上げてみた。どちらも、アメリカではテクニックなりストラテジーなりがほぼ完成されている魚種である。もちろん、アメリカの方法が日本において100%通用するとは思えないが、それでも、かなりのヒントは間違いなく得られるはずである。これは「スポーツアングラーズ」が読者諸兄に贈るひとつの提案だ。
もしツナが人間の言葉を理解したなら、彼らは自分たちをこんな風に自画自賛するかもしれない。「10億年の進化の過程であらゆる身体的機能を純化させた我々は、海に住む生物の中で最も機能的で無駄がない。一生の間ずっと身体機能を最大限に働かせ、決して休むことなく泳ぎ続ける。種を存続させる他は食料の確保にエネルギーの全てを費やす。華麗かつシンプル、これこそ我々の生き方だ」
科学的な裏付けによってツナを描写しようとすると、それはどうしても面白みに欠けてしまう。かといってアングラーとして彼らを語る時には、あくまでもロッドとリールで相手にするという事実を考慮に入れた描写でなければならない。特に、ロッドとリールがフライタックルである場合には……。
そこで、この大洋の旅人に関する基礎的な知識を知ることからまず始めよう。 |
|

筆者がキャッチしたスクールサイズのイエローフィン。Photo by Ed Ow |
|
|
BIOLOGICAL ASPECT
科学者によれば、ツナは流体力学的な発達を極めるようにして進化してきたという。あまりにも稚拙な表現ではあるが、彼らは実にパワフルで敏速なスイマーである。俊敏なスプリンターであると同時に、相当にタフなマラソン・ランナーでもあるのだ。流線型のボディー形状と滑らかな体表面は、高速で泳ぐことを可能にしており、事実、ビルフィッシュとともに最も俊敏な魚と言われている。休みなく泳ぎ続ける理由は、呼吸のためであり、泳ぐという行為によってエラに酸素を送り込んでいるのである。加えて、水中での浮力に乏しい身体は泳がなければ沈んでしまうため、たとえゆっくり泳ぐにしても、少なくとも自分の身体の長さ分の距離は毎秒ごと泳がなければならない。したがって、大型のツナがのらりくらりと泳ぐ速さは、オリンピック選手の100m自由形よりも速い。それに、エネルギーの消費量も凄まじい。実に体重の25%以上に相当するエネルギー量を毎日消費する種もあるのだ。
同じく、その成長率も想像を絶するものがある。たとえば、イエローフィンの1年魚は平均して約3kgの体重があるが、2年目にはその約4倍(12kg)の大きさにまで成長し、3年目には1年魚の約12倍(36kg)まで成長する。もちろん、この成長率はツナの種類によって差があり、最も小さいブレットツナ(マルソウダ)とフリゲートツナ(ヒラソウダ)は3kg以上に成長することはない。この記事のテーマであるイエローフィンツナは最大で約180kgのものが記録されている。ちなみにブルーフィンツナ(クロマグロ)は700kgを越えるほどだ。
遠洋性の魚であるツナは、生活の場を外洋に置いている。熱帯または温帯の海で、国境など知らずに泳ぎ回っているというわけだ。たとえば、アルバコア(ビンナガ)などはカリフォルニアから日本まで、実に8,500kmに及ぶ大回游をしており、1日で平均26kmを移動する。また、標識魚の再捕例では、ブルーフィンツナが119日間で大西洋を横断し、7,770kmを移動していた事実が知られている。さらに、バハ・カリフォルニア半島の南端でタグ&リリースされたスキップジャックが、9,500km離れたマーシャル諸島で再捕されてもいる。イエローフィンツナの場合も、タグを打たれた場所から1,500km以上離れた海域で再捕される例は珍しくなく、5,000km以上の例も多い。
興味深いのは、こうしたツナの放浪が決して行き当たりばったりではないという点だろう。回游のルートが決まっているばかりか、泳層もまた一定の法則に従い決まっている。つまり、サーモクラインによって低温層と隔てられた表層部から中層部(水深10〜150mの間)を主に回游しているのだ。 |
|
|
GUANAMAR, COSTA RICA
バハカリフォルニアから中南米にかけての温水域には、イエローフィンをはじめとして、ビッグアイ、スキップジャック、ブルーフィンなどのほとんどのツナファミリーの回游が見られる。中でも、イエローフィンは最も数が多く、私自身これまでにもバハ沖などではかなりイイ思いをしているが、フライでということになると、お薦めはコスタリカである。20数年前に初めてコスタリカを訪れてからというもの、頻繁にこの地を訪ねている私だが、太平洋側のベストリゾートとして文句なしに推したいのが、キャリロ・ベイに最近できたガナマール(Guanamar)だ。
ロッジのあるキャリロ・ベイはサン・ホセから飛行機で35分のところにある。ガナマール・ロッジを一躍有名にしたのは、1991年のコスタリカン・ビルフィッシュ・トーナメント(CRBT)だった。3日間の期間中、実に1,691尾ものセイルフィッシュがキャッチされ、世界中のアングラーの知るところとなったのである。フライロッドによるセイルフィッシュはまさにグレート・スポーツだが、ツナはそれ以上に手強い挑戦相手であり、私には無視できない魅力があった。ガナマールへの釣行の数カ月前に、ロッジのフィッシング・ディレクターでもあり、有名なフライ・タイヤーでもあるジミー・ニックスと話す機会を得た。彼によれば、ロッジからほんの1マイルほどの沖合いに、ツナの巨大なスクールが頻繁に回游するというのだ。こんな話を聞いてじっとしている私ではない。私はさっそく準備に取りかかった。
ROD IS GOD
親友のレフティー・クレー(周知のとおり有名なフライフィッシング・マスターだ)はこう言っている。「まったく小型のツナみたいなゲームフィッシュはいないよ。同じ大きさの他のどんな魚よりも、ヤツラは大型なんだ」。もしも読者がツナを1尾でもラインの先に掛けたことがあるなら、クレーの言葉が決して大袈裟な誇張ではないことが分かってもらえるはずだ。実際、私がツナを釣る時のタックルといえば、セイルフィッシュに使うのと同じ12番にちょっとした工夫を凝らしたものだ。私はオービスのソルトウォーター・アドバイザリー・チームとしてフィールド・テスターをしており、この時の釣行でも、HLSターポン・トラベラー4ピースロッドと、ダイレクトドライブのD-XRターポンモデル・リールを使用した。
ソルトウォーター・フライフィッシングの中でも特にオフショア用のタックルに関しては、絶対にトップクラスの製品を選ぶ必要がある。このことはこの釣りにおいては最も重要なことだ。二流の製品では、すぐにボロが出て、ガラクタになってしまう。ツナのフライフィッシングにおいては、使用するタックルにこそ最も神経を使うべきだろう。
ティージングによってボート近くまでゲームを寄せるセイルフィッシングとは異なり、ツナの場合は、かなりの距離(時には40ft以上)をキャストすることになるのが普通だ。したがって、まず最初にロッドに要求されるのはキャスタビリティー、つまりキャストのしやすさである。 |
|
|
DIRECT OR ANTI, WHICH IS YOUR CHOICE?
ビッグゲーム用のフライリールに関して言えば、今日では迷ってしまうほどの種類が売られている。アングラーは高品質な製品の中から好きなものを選べるわけだ。ダイレクトドライブもしくはアンチリバースのどちらでもよいが、ラインを素早くピックアップできるので個人的にはダイレクトドライブが好きだ。だが、もしもこの手の釣りの経験が少ないなら、アンチリバースタイプを選べば間違いない。15〜30Lbクラスのスクールサイズでさえ、イエローフィンの最初の走りは強烈で、200ヤードは楽に出ていってしまう。この時、ダイレクトドライブのハンドルは高速で回転するので注意が必要だ。不注意に触れると指をケガしてしまう。ほとんどのアングラーにアンチリバースが向いている理由のひとつはここにあるのだ。
何にせよリールには充分なラインキャパシティー(少なくとも30Lbラインが300ヤードは巻けること)と、スムーズなドラッグ機構の両方が絶対的に要求される。ツナは海洋生物の中でも最速のスイマーである。フックアップしたツナが一度走り出せば、スプールからはまるで巨大な高速糸巻きに引っ張られるようにラインが出ていくのである。 |
 |
 |
 |


フライにフックアップしたキハダ。胸ビレを広げた独特の遊泳姿勢で弾丸のごとく水中を突っ走る。
|
|
FAST SINKING SHOOTING HEAD
先にも述べたように、ツナは外洋の上層部を遊泳する傾向がある。だが、だからといって海面直下を泳いでいるわけではない。そこで、フライラインに関する私のチョイスはファーストシンキングのシューティングヘッドだ。トリヤマからナブラが立ち、海面で活発な捕食活動をしている時でさえ、実際の捕食の大部分はサブ・サーフェス、つまり海面下数10cm〜数mのところで行なわれているのである。フローティングラインを使ったストリーマーやポッパーの釣りは、身体中のアドレナリンを溢れさす爆発的なストライクを期待できるが、ベストの結果を得られるのは、大抵の場合シンキングラインのほうである。
シンキングラインのアドバンテージを列挙してみよう。まず最初に挙げたいのは、たとえ最も速く沈むライン(たとえばリードコアヘッドのような)であっても、着水と同時に深みへ急降下していくわけではないという点である。シンキングラインだからといって、メタルジグなどのようには決して沈まない。潮流がラインの沈むスピードを必ず遅くするからだ。したがって、たとえシンキングラインであっても、着水と同時にストリッピングを始めれば、サブサーフェスを効果的に釣ることができる。一方、フローティングラインでは深度をコントロールするようなことはできず、サーフェスに限られてしまう。もしも魚が表層下数ftで捕食していたら、フローティングではお手上げである。
第二のアドバンテージは、ほとんどのシンキングヘッドはフローティングラインよりも径が小さいという点だ。これはキャストのしやすさを約束するばかりではなく、よりたくさんのバッキングが巻けるということをも意味する。 |
|
|
RUNNING LINE, MONO OR BRAIDED
当たり前だが、シューティングヘッドにはランニングラインもしくはシューティングラインと呼ばれるラインが必要だ。いずれにせよ、この時の私のチョイスはサンセットライン社から「アムニージア(Amnesia)」という商品名で発売されていた40Lbテストのモノフィラメントであった。もしもブレイデッドを選ぶなら、ブレイデッドの伸びの少なさを補うために、ダクロンのバッキングとブレイデッドのランニングラインの間に100ftほどのモノフィラメント・セクションを設ける必要がある。
ノットについては、ランニングラインの種類に関わらず、ループ・トゥー・ループが最も簡単で強い結束方法だ。この方法はランニングラインとシューティングヘッドとの結束ばかりか、ランニングラインとダクロンのバッキングを結ぶためにも有効である。ループ・トゥー・ループの優れている点は、何といってもライン交換の簡便さにある。何しろラインを切ったり結んだりする必要がまったくないのだ。
だが、ループの作り方はそれぞれのラインの種類に応じて変えなければならない。ダクロンのバッキングとモノフィラメントのランニングラインに関しては、ビミニツイスト。ブレイデッドラインの場合はダブルオーバーハンド、いわゆるサージョンズ・ノットでよい。シューティングヘッドは、サイエンティフィック・アングラーズやオービスからすでにループつきの製品が発売されている。 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
 |
|
|
ツナ・トニック フック:イーグルクロウ254SS、マスタッド3407 #1/0〜4/0ボディー:シート状の鉛 シルバーorゴールド・マイラーチューブ ウイング:ホワイトマラブー クリスタルヘアーor/andフラッシャブー各色 アイ:レッドグラスアイorドールアイ 中、右ツナ・トニックのバリエーション2種 |
|
|
LEADER IS YOUR LEADER
リーダーシステムに関しては、ごくスタンダードなソルトウォーター用のシステムである。スポーツ性を考慮して、私はIGFAルールに基づいたリーダーを作っている。
ツナという魚はリーダーやラインに対する警戒心が低い。そこで、私自身はバットリーダーを省いてしまって、15インチのクラスティペットをシューティングヘッドに直結している。
私が使用しているリーダーシステムはざっと次のようなものである。まず、クラスティペットの両端をビミニツイストでダブルにする。次に一方のループを半分に折り、サージョンズ・ノットでループを作る。つまり、2つのループができることになる。これがシューティング・ヘッドと接続するためのループになるわけだ。
残ったもう一方のループ(ビミニツイストのループ)にはショックティペットを結ぶ。ショックティペットは必要不可欠である。なぜなら、ツナの仲間には(ボニートを除いて)、細いモノフィラメントを簡単に傷つけられるほどの歯があるからだ。スクールサイズのツナには40Lbテストのモノフィラで事足りるが、50Lbを超える魚に対しては80Lbテストを使うことにしている。こういった太いモノフィラのショックティペットにクラスティペットを結ぶ一番簡単な方法は、イラストに示したハフネイグル・ノット(huffnagle)だ。フライとの接続には3〜4回のユニノットがいいだろう。
モノフィラのショックティペットの代わりにしばしば使用するのが、ブラックフィニッシュのワイヤー(シングル・ストランド)である。32〜73Lbテストのワイヤーであれば、ツナの歯によって傷がつくという心配はまずない。IGFAルールにも、いかなる材質のショックリーダーを使用してもよいと明記されており、12インチの長さを越えなければまったく問題はない。しかし、ワイヤーを使うのであれば、12インチもの長さは必要ないだろう。そればかりか、プレゼンテーションの際にターンオーバーを妨げる要因にもなる。だから、ワイヤーリーダーの長さは4インチで充分だ。 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
 |
|
注意したいのはむしろワイヤーとクラスティペットとの接続方法である。直接結ぶのではなく、スイベルを介して接続するのだ。#7か#10といった小型のブラックスイベルを使用すれば、ワイヤーとの接続はかなり簡単になる。スイベルを含めたワイヤーの長さが12インチを越えていなければ、IGFAルールに関する問題はない。ワイヤーをスイベルやフライに結ぶには、右のイラストに示したヘイワイヤー・ツイストがよいだろう。 |
|
|
FLIES, SARDINA & TUNA TONIC
ツナ用のフライというと、たいていのビギナーはビルフィッシュ用のフライなどを想像しがちだが、実際には巨大なハックルつきの派手なフライは必要ではない。アルバコアやボニート、スキップジャック、そしてイエローフィンといったツナファミリーに最も有効なのは、比較的小ぶりで(大きくても4インチまで)フェザーのまばらなタイプである。先にも述べたように、ツナはエネルギーの需要量が極めて大きく、ことエサに関してはイカからカニまであらゆるものを積極的に捕食するが、食性の大部分はやはりイワシなどのベイトフィッシュに頼っている。こういったベイトフィッシュの背はたいてい緑や青、またはブルーなどの暗めの色で、反対に腹の部分はきまって白である。フライをタイイングする際には、このことを念頭に巻くべきだ。
実績のある普遍のパターンといえば、やはりレフティーズ・デシーバーである。そのバリエーションとして、私は「サルディナ」パターンを使っている。サルディナはイワシの一種で、バハ・カリフォルニアや中米に豊富に見られるベイトフィッシュである。
フックは、イーグルクロウ254SSとマスタッド3407を気に入って使っている。ツナには1/0から4/0のサイズが適当だ。フックポイントは4面を45度の角度できちんと研いでおくことを忘れないように。また、バーブをわずかに潰して、鋭いポイントとのギャップを少しでも少なくするという工夫も必要だ。こうしておけば、刺さりがよいばかりか、アゴの肉の部分に必要以上の大きな穴を開けずに済む。今回のコスタリカ旅行のパートナー、エド・オウは、ポッパーで掛けたナイスサイズのイエローフィンを惜しくも釣り逃したが、それも45分のファイトの末にフックがツナのアゴに穴を開けてしまったことが原因だった。彼のフックはバーブがそのままだったのである。 |
 |
 |
 |
「サルディナ」パターンは簡単にタイイングできる。4〜6枚のホワイト・サドルハックルと、2枚のブルー、あるいはブラックのサドルハックルを左右それぞれアイから1/2インチ後ろに巻く。ハックルの長さはシャンクの約2倍強。それから、シルバーフラッシャブーを数本、ハックルの約半分の長さで巻く。トッピングとして、グリーンとブルーのクリスタルヘアーかフラッシャブー(2種類を混ぜてもよい)を使う。最後にミディアムサイズのグラスアイかドールアイをアイの後ろに固定すれば完成である。私のパターンすべてに言えることだが、仕上げとしてヘッドを5分硬化のエポキシで固める。耐久性を高めるためだ。
ツナ用のスペシャルフライとして私が考案したのが「ツナトニック」である。(編集部注:「ツナトニック」はレフティー・クレー著『ソルトウォーター・フライパターン』の中でも紹介されている)フックは先述の「サルディナ」と同じものでよい。ただ、沈みをよくするために薄いシート状の鉛でボディーを形成する。ワインボトルの首などに巻いてあるアレだ。それを半分に折り曲げ、シャンクに固定したら、ベイトフィッシュの腹部を真似てテーパー状にカットする。一番太い所でも5/16インチ以内にすること。次にシルバーマイラーをそれに被せて両端をスレッドで固定し、ボディー全体を5分硬化のエポキシで固める。エポキシが乾いたら、フックの約2倍の長さでホワイトマラブーを巻き、ブルーかグリーンのマラブーを少量トッピングする。代わりに別の色のマラブーを巻いてもよいだろう。最後にミディアムサイズのグライアイかドールアイを取り付け、エポキシで固めれば完成だ。
「サルディナ」「ツナトニック」ともに非常に効果的なパターンである。今回のガナマールにおいても、ある午後などは、12〜20Lbのイエローフィンを7尾もキャッチすることができた。 |
|
 |
|
|
FIND SOME SIGNS!
繰り返しになってしまうが、ツナはセイルフィッシュやマーリンとは違う。ツナがビルフィッシュのようにティーザーを追うことはめったにない。したがって、いかにしてツナとコンタクトするかが問題になるわけだが、ほとんどの場合、それは視覚に頼ることになる。海面でのナブラを別にすれば、ツナの存在を知らせるサインは2つある。ひとつはトリヤマ、もうひとつはイルカの群れである。
ガナマールで過ごした3日間のうち、これらのサインのない日は1日もなかった。トリヤマについては改めて説明する必要もないだろうが、イルカについては説明が必要かもしれない。商業漁業者の間ではすでに定説化していることだが、しばしばイエローフィンはイルカと行動をともにし、捕食活動も同時に行なう。今回の釣行では、実際にそれを確認することができた。
また、素早く移動するツナの群れに接近するためにも工夫が必要だ。接近方法は特に目新しいものではなく、昔から効果が証明されている方法である。つまり、可能なかぎり群れを驚かさずに接近するというものだ。もしもフルスロットルで群れに突っ込んだりすれば、群れを沈めてしまうだけである。また、たとえ群れに近づくことが不可能でも、他にも手はある。群れの動きを予測して、その通り道で待ち伏せすればよいのだ。
SIMULATE THE BAITFISH
リトリーブに関しても、たいていのアングラーが信じているものとは反対の方法が効果的だ。なにも火花が散るほどのスピードでリトリーブする必要などないのだ。ツナの関心を引くのは並みの速さのリトリーブである。
長年に渡る経験の中で、私は逃げ惑うベイトフィッシュの泳ぎ方を多く目にしてきた。明らかなのは、それは一定の速度ではないという点だ。今回の釣行での例を1つ挙げてみよう。流木の下に群れていたベイトフィッシュに向かって、イエローフィンが襲いかかった時である。素早い閃光を水中で放ちながら、あらゆる方向からベイトを襲っているようだった。ベイトが逃げようとする時、それはきまって狂ったように方向を変え、ジグザグに泳いでいた。
フライのリトリーブはこのようなベイトフィッシュの逃げ惑う動きを真似るべきだ。各ストリップ間の短いインターバルで一瞬のポーズを置くのである。突然の引き込みは、まさにその次の瞬間にやってくるはずだ。貪欲な捕食本能を持つツナは、そんなリアルな動きをするフライをみすみす見逃したりはしないだろう。
ENJOY YOUR BATTLE!
ツナフィッシングの面白さはストライクさせる段階にあるのではない。それは長く強烈な最初のランの後のバトルにあるのだ。このバトルの段階まで持っていくことができなかったという例を挙げればキリがない。最初のランでバッキングをすべて持っていかれることは決して珍しくないのだ。横に走る魚に対してはボートで追いかけるという手もあるが、真下に潜られてはなす術もない。イエローフィンの場合は特に大小のサイズが混ざっていることが多く、1人が10Lbのスクールサイズを掛けている横で、もう1人が100Lbオーバーのゴリラサイズを掛けるという事態も起こり得る。
ちなみに、フライによってキャッチされた最大のツナは、1999年2月に20Lbティペット・クラスでマーク・キテリッジが釣り上げた37.00kg(81Lb9oz)のイエローフィンである。もしも、記録更新を狙うつもりなら、ガナマールはお薦めだ。
|
|
筆者紹介/ニック・クルシオーネ(NICK CURCIONE)
犯罪学の教授。アメリカ西海岸におけるソルトウォーターフライフィッシングのパイオニア。LAのロヨラ・メリーモント大学で教鞭を執るかたわら、米国「フライフィッシャーマン」誌や「カリフォルニア・アングラー」誌等で盛んな執筆活動を行なっている。かの名著「フライフィッシング・イン・ソルトウォーター(レフティー・クレー著)」でも、ウエストコーストのパイオニア的存在として紹介されており、ハリー・カイム亡き後のソルトウォーター・フライフィッシング界を継承し、新たな可能性を探り続ける孤高のスポーツアングラーである。 |
|
|
|
|
|
|
|