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MAKOS ON FLY

南カリフォルニアシャークハンティング

文/ニック・クルシオーネ
訳・構成/編集部

 
シャークフィッシング。日本では外道としてゲームフィッシングのターゲットからはすっかり問題外扱いされているシャークではあるが、米国やオーストラリアではそれ専門に狙うアングラーがいるほどポピュラーなゲームフィッシュである。ベイトを使ったコンベンショナル・タックルで狙うのが普通だが、フライフィッシング・ピューリタンたちは当然のような顔をしてフライロッドを振る。筆者ニック・クルシオーネは全米で5本の指に入るソルトウォーター・フライフィッシャーマン。今回はシャーク・フライフィッシングの危険な魅力に加えて、この釣りの要とも言える「寄せるためのテクニック」をパーフェクトに教えてくれた。

8ポンドティペットでキャッチした33ポンドのマコ(アオザメ)。8ポンドティペットによる現在のワールドレコードは、ゲーリー・ケンズレイーの25.00kg(55Lb1oz)。
  そもそもソルトウォーターフィッシングにともなう魅力や快楽、楽しみといったもののかなりの部分が、日常生活からおおよそかけ離れた環境に身を浸す喜びにあることは間違いない。波と風の音に支配された洋上に漂う時のあの感覚を、もしもフレッシュウォーターで体験しようと思えば、実に巨大な湖が必要というものだ。しかし、幸運にもこのロサンジェルスでは、そのような相当に濃密な時間が、比較的身近に体験できる。
大袈裟に「航海」を気取って頑張らなくても、1時間も走れば充分。そこは太平洋である。LAの喧噪とおサラバして、太古の時を刻む大海原の息吹を存分に感じることができるのだ。と言いたいところだが、実際は、太古の時を刻んでいるはずの太平洋も近頃では若干の狂いを生じている。というのも、不幸にも海という海はすっかり人間に犯されてしまったからだ! 海洋汚染から漁場の荒廃に至るまで、海の運命は人間の責任である。しかしながら、それでも合衆国の淡水域の悲惨さと比べれば、太平洋は未だ太古以来の神々しい姿を保っていると言えよう。
 

グレート・マコ!

この原始に生きる生物のなかでも最も有名な(もしくは悪名高いとでも言おうか、まあ判断は良識あふれる読者諸氏に任せよう)生命といえば、それはやはりサメということになるであろう。まるっきりフィッシングに縁のない人々の間でさえ、話の種として語られることもしばしばである。確かに、ビルフィッシュの類も相当に有名ではある。映画「ジョーズ」が大ヒットするずいぶん前から「老人と海」はあったのだし、昔から看板やら何やらには結構頻繁に登場していた。そういう観点から考えると、マグロという魚もなかなかのものだ。一度たりとも海を見たことのない人々も、まさかツナ缶を知らないわけはなかろう。しかしながら、カジキやマグロの威光は充分に知りつつも、サメという魚はどこか悪魔的な捨てがたい魅力があるのもまた事実だ。海洋生物としては唯一アングラーにさえ襲いかかる激しい攻撃性を秘めた魚なのだが、私が思うに、その攻撃性こそサメの最大の魅力にちがいないのだ。

もう20年以上も前のことだが、ニューヨークのモントーク沖でサメを追いかけ始めた頃に私を夢中にさせたのは、必ずしもサメの攻撃性だけが理由ではなかった。ガルフストリームが流れ込む夏から初秋にかけて、当地はシャークフィッシングのフルコースが楽しめる超一流の漁場である。ブルーシャーク(ヨシキリザメ)、タイガーシャーク(イタチザメ)、グレートホワイト(ホホジロザメ)、そしてマコ(アオザメ)といった有名どころがズラリと顔を揃えるのである。
いずれにせよ、モントーク沖でのそれはもっぱらベイトフィッシングに限られていた。釣り方にしても、ボートをドリフトさせながら寄せ餌の中にベイトを放り込むというもので、寄せ餌には粉々に砕いた液状の魚肉が使われていた。驚いたのは、その後70年代初めに南カリフォルニアに越してから教えられたシャークフィッシングのテクニックというのが、まさにこの方法であったということだ。いわゆる「ベイエリア」を中心とした当時の西海岸のフライフィッシャーマンたちのなかには、今は亡きマイロン・グレゴリーやボブ・エッジリー、ローレンス・サマーズといった重鎮たちが活躍していたのだが、彼らは皆ブルーシャークやマコなどの外洋性のサメを寄せるテクニックを実にパーフェクトにこなしていた。
西海岸においてフライによるシャークフィッシングを完成させたのは彼らであり、それ以前はまさしく未開の領域であったと言えるだろう。当時、シャークのフライフィッシングといえば、フロリダ・キーズのシャローフラットが定番エリアとしてお馴染みだったのだ。私自身もキーズのクリアなフラットにウェーディングして、ブラックティップやレモンシャークをターポンフライで楽しんだものだが、それは非常に挑戦しがいのある素晴らしい経験であった。
 
ファイトというよりも、ほとんどバトルに近い。バトルのファイナルステージで興奮はオルガスムに達するのだ。
 
当然のことながら、カリフォルニアにキーズのようなシャローフラットは望むべくもないが、それでもカリフォルニアの沖合いはサメの漁場としては非常に恵まれていると言えそうである。(誤解をまねく恐れがあるのでつけ加えておくが、決して資源が無尽蔵だと言っているのではない。それどころか、漁業用定置網の登場によって、スレッシャーシャーク(オナガザメ)などは10年前が嘘のように思えるほどその数は激減している)実際の釣りで問題なのは、予測不可能な行動をとるサメを広い海域でどのようにして見つけるかである。例えば、サメと同じ外洋性のマグロなどでは、トリヤマやナブラに目を光らせるといった方法がごく普通に行われるが、ことフライに関して言えば、最終的にはやはりチャム―寄せ餌(ほとんどの場合、生きイワシを使う)―の使用が欠かせない。

ベイビーシャークと侮ってはいけない。この28Lbのブルーシャーク(ヨシキリザメ)は実に4Lbティペットでキャッチしたものだ。フライフィッシングで問題なのはゲームの大きさではなく、ティペットとの比率なのだ!
  例のハリウッド映画の影響であろうが、サメに対する人々のイメージは決まって「大口を開けた怒れる食人魚」といったものだ。しかしながら、例えばクジラの死骸が浮いていたりというようなことでもない限り、現実にそういったサメの姿を目にすることは非常に稀である。かつてはサバの群れを追い回すスレッシャーシャークを目撃することさえあったが、現在の状況では、ただフライをキャストしていたのでは何もおきはしない。フライなどのアーティフィシャルでサメを釣ろうと思えば、彼らを興奮させるためにも何らかのチャムが必要なのである。
唯一の例外といえば、マーリン用のルアーにマコがかかるといった場合で、マコのような外洋性肉食魚がルアーのアクションとスピードに引きつけられるのは尤もな話である。とはいえ、マコがそこらを泳ぎ回っているという状況は通常ありえない。ましてマコが稀少にさえなっている現在の状況において、チャミングをせずにフライで狙おうというのはまったく大それた考えというほかないだろう。
しかも、ブルーシャークに比べてマコは圧倒的に数が少なく、狙いをマコに絞ろうとすれば、フライを追う状態までもっていくために一層の熟考が必要となる。マコをボート際まで寄せる方法としては、前述したベイエリアの先人たちによって開発されたチャミングテクニックが現在でも頼りになる。
南カリフォルニアでは、いくつかの会社がシャークフィッシングのツアーを行なっているが、フライでということになると、やはりプライベートボートかチャーターボートを借りなければならない。ソルトウォーター・フライフィッシングの人気が最近つとに高まっているが、フライフィッシャーの満足に足るチャーターボートはそう多くはない。
 

カギはチャミングにあり

一方プライベートボートを持っている人の場合、ナビゲーションはさておき(普通、サメは特定のストラクチャーにつくこともないので、ピンポイント的なエリアを気にする必要もない)、気になるのはチャミングであろう。アンチョビやボニート、マッケレル、サーディンなどを使うが、いずれもミンチ状にすることが重要だ。
分かりきったことを言うようだが、チャムの目的はずばりサメを集めることにある。そこで、効果的にサメを寄せるための具体的な方法だが、大切なのは潮流のなかにチャムの帯を作るように絶え間なく撒き続けることである。もしも途中で途切れたりすると、サメはボートまで辿り着けなくなってしまう。チャムの量は釣りをする時間の長さに応じて決定するが、充分に用意しておくにこしたことはない。チャムは半ガロンのミルク容器(日本にはないが、1ガロンが3.7リットルなので、半ガロンは1.85リットル)に詰めて冷凍しておくとよいだろう。この容器にして10本あたりが1日の消費量である。ポイントに到着したら、1〜2本分のチャムをビニール袋か何かに入れて海に浸し、水温で解凍する。撒き方としては、量はあくまでも少しずつ、流れに帯を作るように行なう。少し振りながら撒けば、うまく散らばせることができる。
海中にチャムの帯を作ったら、次のステップは待つことである。(その間もチャムは絶やしてはならない)マコフィッシングのカギは、マコを見つけることではなく、マコにアングラーを見つけさせることだ。普通、夏から秋のシーズン中の平均待ち時間(マコが姿を現わすまでの)は1〜2時間といったところ。一昨年は異常なほどの高水温に見舞われたが、それが幸いしてマコフィッシングにとっては実に素晴らしいシーズンであった。ブルーシャークよりもたくさんのマコを釣ったというのは、南カリフォルニアで20年以上もシャークフィッシングをやってきて初めてのことだった。現在でもブルーシャークの数は多く、安定していて、ボートの周りに3〜4尾が泳いでいることなど珍しくもない。しかし、究極はやはりマコなのだ。集まってくるサメの中でマコは決まってたったの1尾であり、その1尾こそ私が全ての努力を集中させる魚なのである。
エンジンを止めてボートをドリフトさせると、全ての邪魔物は消え、ブルーシャークに続いてマコが近づいてくる。切り刻んだボニートに紐を結んでスイムステップから流し、絶え間なくチャミングを続ければ、サメはかなりの間ボートの周囲をうろついているものだ。その時こそ作戦を決行する時である。状況はすべて目の前にあり、激しい興奮がアングラーの感情を高ぶらせるのである!
フローティングラインを用いた基本的なテクニックはチャム(ボートから15〜30ftが理想)の真ん中にフライを漂わせるというもので、通常、サメがチャムを食べ始めれば何のためらいもなくフライを口にするはずである。したがって、この種のフライフィッシングにおいては、手の込んだフライは一切必要ない。チャムの肉片に付着した血はたちまちのうちに溶けてしまい、肉片は白っぽく見える。そこで、私はほとんどのフライをそれに似せて巻いている。少量のバックテイルあるいはフィスヘアーと、3〜4枚のネックハックル(2〜4インチ)をシャンクの両側に止めたタイプに実績がある。フックの品質には気を使わなければならないが、私はイーグルクロウD67の#3/0〜5/0で安定した結果を得ている。


ニック・クルシオーネ(NICK CURCIONE)
犯罪学の教授。アメリカ西海岸におけるソルトウォーターフライフィッシングのパイオニア。LAのロヨラ・メリーモント大学で教鞭を執るかたわら、米国「フライフィッシャーマン」誌や「カリフォルニア・アングラー」誌等で盛んな執筆活動を行っている。かの名著「フライフィッシング・イン・ソルトウォーター(レフティー・クレー著)」でもウエストコーストのパイオニア的存在として紹介されており、ハリー・カイム亡き後のソルトウォーター・フライフィッシング界を継承し、新たな可能性を探り続ける孤高のスポーツアングラーである。
  ブルーシャークに比べてマコはより食肉魚的な性格が強く、注意を引くためにただチャムの中に漂わせる以上のことをしなければならないこともある。具体的には3つのテクニックが考えられるが、いずれもマコがセレクティブになった時などには非常に効果的である。ひとつの方法は、1〜2インチ角に切ったボニートかマッケレルの切り身を1つ海面に強く叩き付けるようにして投げつけ、その切り身をマコに食わせる。この「投げては食わせる」という一連の動きがパターンとして完全に確立するまで繰り返す。そのようにして4〜5回繰り返した後、切り身の代わりにフライをキャストするのである。切り身でそうしたように、今度はフライを海面に強く叩きつければ、マコは何の違和感もなくフライを口にするというわけだ。
もうひとつの方法は、フックなしのラインに生きたマッケレルをセットして、ティージングするというものである。マコが寄ってきたら寸前でティーザーを引き離し、苛立たせるわけである。その際、マコは驚くべきスピードでティーザーに向かってくるので、ティーザーを食べられてしまわないよう充分に注意をしなければならない。もしもティーザーを与えてしまえば、サメの興味と動きを止めてしまうことにもなりかねない。寸前のところでティーザーを引き離したら、その鼻先にフライをキャストしてやればよい。
マコはワールドクラスのゲームフィッシュである。使用するタックルにも最大級の強さが要求される。南カリフォルニアに多い40〜50ポンドクラスには、#12タックルが望ましい。リールは少なくとも30ポンドのバッキングが250ヤードは巻けるものが必要。ロングキャストはしないので、フライラインもフルの長さは必要ない。ウエイトフォワードをカットするか、シューティングヘッドを使用すれば、それだけ多くバッキングを巻くことができる。
たとえサメが美味な魚であっても、見境なく殺してはならない。小型のマコはリリースのいい練習相手と考えるべきだろう。いずれにせよ、フライタックルではたいしたダメージは与えられないのだから、リーダーを切ってしまうのが最良の方法である。
「the mako is the aristocrat of sharks.(マコはサメの貴族である)」とは、かのゼーン・グレイの言葉である。太平洋を放浪する貴族の顔を拝みに出かけてみるのも悪くないのではないだろうか……。
 
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