BILLFISH ON FLY(5)
LARGE SAILFISH OF QUEPOS, COSTA RICA
コスタリカガルサ・ベイと ケポスのセイルフィッシング
By Jack Samson 訳・構成/編集部
同行のビリー・ペイトは、フライによるセイルフィッシングのビデオ撮影のため、すでにケポスを訪れていた。2週間の滞在中に彼のティーザーを追ったビルフィッシュの数は実に180尾を数えたという。そのうち、ペイトは120尾にキャストを試み、50尾のセイルフィッシュをキャッチ、すべてリリースしている。この数が決して平凡な記録でないことは、この釣りの経験者であれば容易に理解できるだろう。
「セイル!」メイトのボブがタワーの上から叫ぶとドン・トンプキンズが瞬間的にスロットルを上げ、右舷のアウトリガークリップからスクイッド・ティーザーをリリースした。ガンネルから長めのティーザーロッドを引き抜いた私の横ではビリー・ペイトが12番ロッドを構えている。ナイスサイズのパシフィックセイルフィッシュはサーフェスでスキッピングするストリップベイトに繰り返しアタックを仕掛けている。「準備はいいか、ビリー」。キャストしたフライはセイルの真横、約5フィートのところに着水。セイルはグルリと反転した…。今回の「ビルフィッシュ・オン・フライ」はコスタリカはガルサ・ベイとケポスのパシフィックセイルフィッシュを紹介しよう。
フライによるビルフィッシングの先駆者、 そして世界で最もたくさんのビルフィッシュを フライで釣っている男、それがビリー・ペイトだ。 愛用のリールはもちろん「ビリー・ペイト」。
SKITTERING LEAPS OF SAILFISH ビリー・ペイトがロッドを数回強く煽った途端 セイルは空中に躍り上がり 見事なまでのスキッタリングジャンプを繰り返した
その巨大なセイルフィッシュが、フックレスのストリップベイトに姿を現わしたのは、31ftのランページ「エイミー・マリー」に乗り、波長の長い太平洋のウネリに揺られている時だった。ロケーションはコスタリカの西海岸、ガルサ・ベイの約20マイル沖である。
ARZA BAY ガルサ・ベイ沖。この3日間釣りは概してスローだった。 満月からすでに1週間。月齢は決してベストとは言えない。
ビリー・ペイトと私の2人が、「バヒア・ガルサ・フィッシング・チャーター」のドンとセイルを狙って、これが3日目のことだった。この3日間、釣りは概してスローだった。満月からすでに1週間が経っており、月齢は決してベストとは言えなかったが、それでも私たちは結構な数のセイルフィッシュをフックアップさせ、ティーザーを追うブルーマーリンの姿さえ数尾確認していた。 翌日は、そこから南へ約150マイル離れたケポスへ立つ予定だった。ドンと彼の妻キムが経営するガルサ・ベイのフィッシングチャーターは実に素晴らしかったが、湾には防波堤のようなシェルターが何もなく、沖からの高波がまともに押し寄せるのが問題だった。ピアーがないので、真新しい2艇のランページはショアから約100ヤードのところに係留されており、テンダーでボートへ行き来するたびに、私たちはスリルを超えた恐怖を存分に味わわなければならなかった。 実際、私たちはその3日間のうちに2度も転覆していたのだ! 一度はゴムボートで、二度目は穴の開いたローボートだったが、太平洋から押し寄せる巨大な寄せ波に立ち向かおうと試みて見事に失敗したという点では違いはなかった。ペイトも私も泳ぎは得意だったので無事だったが、積んでいたロッドやリール、カメラなどの荷物は当然ながらカナヅチで、私たちのように無事というわけにはいかなかった。
QUEPOS, SLEEPY TROPICAL 百軒ほどの民家と小さなホテル。丘の上にへばりついた中米のスモールタウンは トロピカルな雰囲気と心地よい眠気を誘った。
翌日は予定通り朝早くケポスに飛び、9時には現地に到着した。私たちはそこでベテランのスキッパー、ビル・ガノンと落ちあうことになっていた。彼はストライクの27フィート・センターコンソールを駆り、「スポーツフィッシング・コスタリカ」というチャーターボート会社を経営している。ストライクのボートは細身で速いことで知られていて、ケポスのハーバーを出てからわずか30分のうちに、アングラーをセイルフィッシュの海域へと連れていってくれる。 ガルサ・ベイでのテンダーの転覆事件からも分かるように、コスタリカの西海岸を釣る場合、マトモな港があるかどうかというのは、マトモなボートやマトモなスキッパーがいるかどうかよりも時に重要な問題になりうる。その点、ケポスには長年に渡り大型の商業漁船などによって使われてきた良港があるので安心だ。商業船舶さえ停泊できるほどの巨大な埠頭もあり、小型のスポーツフィッシングボートが係留するスペースには事欠かない。 ケポスの町は、埠頭から少し北に上がったところに位置している。百軒ほどの民家と小さなホテル、レストランなどがひとかたまりになり、丘の上にへばりついた、トロピカルな雰囲気と心地よい眠気を誘う中米のスモールタウンである。
20 FOLLOWED, 12 HOOKED UP 地理的な位置関係が幸いしてケポス沖の気象は穏やかだ。 ここでの3日間、チェイスは20尾、 フックアップは12尾であった。
初日、ペイトと私は4尾のセイルフィッシュをフックアップし、2尾のブルーマーリンのチェイスを確認した。2尾のブルーマーリンのうち1尾は、フライロッディング向きの手頃なサイズだったのだが、残念ながらフックアップには至らなかった。 地理的な位置関係が幸いして、ケポス沖の気象は年間を通して穏やかである。コスタリカの北部沿岸では、12月から4月にかけて強風が吹き荒れるのだが、ケポスでは東西に伸びる山脈が風防の役割を果たし、風が吹き込むことはない。 同行のビリー・ペイトはその年の2月、フライによるセイルフィッシングのビデオ撮影のため、すでにケポスを訪れていた。2週間の滞在中にティーザーを追ったビルフィッシュの数は実に180尾を数えたという。そのうちペイトは120尾にキャストを試み、50尾のセイルフィッシュをフックアップ、全てリリースしている。この数が決して平凡な記録でないことは、この釣りの経験者であれば容易に想像できるだろう。
私たちは3日間をケポス沖で過ごしたが、ティーザーをチェイスしたのは20尾、フックアップは12尾であった。一度など、小型のブルーマーリンがいい追いを見せ、もう少しでフックアップというところまでいったのだが、ティーザーにバイトした時に30Lbのティーザーラインがブレイクしてしまい、チャンスを逃してしまった。しかし、このティーザーラインのブレイクは偶然ではなかった。その1時間後、今度はセイルフィッシュがチェイスした時にも、やはりティーザー用の30Lbモノフィラがブレイクしてしまったのだ。これら一連のラインブレイクは、ビリーと私にそのラインを欠陥品だと判断させるには充分だった。私たちはティーザー用のリールに巻いてあったラインを全て50Lbに交換した。
ビル・ガノンとティーザーについて 話し合うビリー・ペイト。ケポス沖では、 ビルフィッシュの他にも、ツナ、ドラド、ワフー、 アンバージャック、ルースターフィッシュなどが 1年を通して狙える。