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Fly Fishing with Lefty Kreh Techniques & Tips
レフティー・クレーのフライ・テクニック(5)

CONTROLLING LOOP SIZE
フライキャスティング理論 タイトループとロングキャスト

監修・文/レフティー・クレー
訳&構成/編集部

 
 
ソルトウォーターフライフィッシングといっても、舞台が海だというだけで、フライフィッシングであることに変わりはない。もちろん、フライを投げる。フライラインで投げる。しかも、フレッシュウォーター以上に厳しい条件の下でだ。海ではまず間違いなく風が吹いているし、ボートに乗るなら当然揺れる。それだけじゃない。ヘヴィーなフライに、信じられないほどのショートリーダー。それでも投げねばならない。そこで今回は、既存のフライキャスティング理論を一刀両断、もうセオリー通りの10時から1時とは言わせない、レフティー・クレーによる、ソルトウォーターフライフィッシャーマンのためのフライフィッシング理論。題して「CONTROLLING LOOP SIZE―タイトループとロングキャスト」。これからソノ道に足を染めようというビギナーはもちろん、中級以上の方にもぜひ一読してほしい。
 

タイトループから総ては始まる

「より遠くへ、より楽々とキャストできたら」。これはフライフィッシャーにとっての共通の願いに違いないが、海では風という厄介な問題を無視するわけにはいかない。横風を受けながらというのはまだマシなほうで、最悪だと風に向かってキャストすることになる。理想的なキャストとはタイトループのそれに極まるわけだが、実際、ループの大きさを自在にコントロールすることができれば、苦なくロングキャストが可能になる。
フライキャスティングの論理というのは、他のいかなるキャスティング(ルアー等)論理とも根本的に異なっている。ラインの先に何らかのオモリが付いていて、そのオモリがラインを引っ張っていくのが普通のキャスティングだが、フライキャスティングの場合はまったくその逆を行なわねばならない。

 
フライラインはいわば長いオモリであって、ほとんど重さゼロと言っていいフライをムチのように解きながらターゲットへと運ぶ。バックキャストからフォワードキャストに移行し、ロッドがしなり始める時、フライラインはアングラーの後方でほぼ真っ直ぐに伸びているが、やがてロッドの動きが止まると、ロッドティップを通り過ぎたラインはいわゆる「ループ」を描きながらターゲットに向かって展開していく。
フライキャスティングにおいて、この「ループ」の幅をコントロールできるか否かというのはかなり重要な点だ。ループをタイトにすればするほど、ロングキャストは楽に行なえる。つまり、フライキャスティングの上手いアングラーとは、望みどおりのループ幅でキャストできる技術を持っている人のことであり、事実、この技術を身につけたフライキャスターたちは相当に長いラインを苦もなくキャストしてしまう。風に向かってのロングキャスト、あるいは力みのないロングキャストを可能にするのは、バックキャストとフォワードキャストの両方でいかにタイトなループを作るかにかかっていると言えるだろう。

なぜタイトループが良いのか

ワイドループのキャスティングをしていながら、飛距離が伸びないのを風の抵抗のせいにするのはまったくの見当違いである。風の抵抗が飛距離に影響を及ぼす例は極めて少ない。飛距離が伸びない最大の原因は、ワイドループを描くキャスティングそのものにあるのであって、ループがワイドになればなるほど、キャスティングによって与えられたエネルギーがラインカーブに沿って分散してしまう。つまり、ループがタイトになればなるほど、キャスティング・エネルギーの分散率が低くなり、その結果としてエネルギーの大部分がターゲット方向に集中するのである。
フライキャスティングの法則では、「バックキャスト、フォワードキャストにかかわらず、ラインはロッドティップを止めた方向に向かって飛んでいく」ということになっているが、ワイドループのキャストをこれに当てはめてみると、フライキャスティングのメカニズムがより明確になる。

 
 

すなわち、ワイドループを描くキャスティングの問題点は、ラインカーブの半円に沿ってエネルギーが分散してしまうだけではないということだ。ループの幅がワイドになってしまう原因は、ロッドティップが下方向に向かってストップするところにある。つまり、キャスティング・エネルギーを運んでいるフライラインが、遠くのターゲット方向にではなく、水面(または地面)に向かって飛んでしまうのだ。キャスティングの上手いアングラーが、ロングキャスト時や向かい風など厄介な状況下にあっても、オーバーアクションになったりせずに平然とキャストを行なえるのは、タイトループによってキャスティング・エネルギーの大部分を無駄なくターゲット方向に集中させているからである。

ファーストステージの役割

では、このようなタイトループでキャストするには何をすればよいのか。また、何をしてはならないのか。これはそれほど難しいことではない。キャスティングの基本を理解してしまえば、むしろ簡単でさえある。
まず最初に頭に入れてほしいのは、バックキャストとフォワードキャストはまったく同じ力学に支配されているという点で、バックキャストを美しく飛ばせる何かこそ、フォワードキャストを美しく飛ばすのである。この点を理解した上で、次は以下のことを認識してほしい。バックキャスト、フォワードキャストにかかわらず、キャスティングは必ずファーストステージとセカンドステージの2つから成っている。ファーストステージは続くセカンドステージへの準備を整える段階。セカンドステージは、ラインとフライをアングラーの前方または後方へ実際に運ぶための動作である。
つまり、アングラーはフライに推進力を与える前に、ラインの先端部にまでキャスティング・エネルギーを伝えていなければならない。分かりやすい例としてかなりのロングキャストを行なう場合を考えてみよう。最初のバックキャストは、ロッドティップが前方にあるフライの方向を示す状態から始めることになる。ラインスラックを取り除き、ラインを一直線にした状態からキャストを始めるわけだ。

  ここで大切なのは、後方にラインを飛ばそうとする前に、ラインの先端部がすでに動きだし、ライン全体が水面から持ち上げられているのを確認することだ。この原則を守らずに、つまり、水面から全てのラインが持上がる前に、ラインを後方へ投げようとすると失敗する。水面上のラインをいきなりバシャバシャと引き上げれば、近くの魚を脅かすことになり、また本来ならラインを運ぶのに使われるべきエネルギーもラインスラックを取り除く過程で無駄に消費されてしまう。
先述のように、フライキャスティングにおけるファーストステージの役割とは、ラインスラックを取り除き、ライン先端部までエネルギーを伝え、フライを運ぶための準備を整えることなのだ。

ループのカギはセカンドステージ

続くセカンドステージでは、ロッドの動きをスピードアップさせ、ストップさせる。これはロッドティップによるほんのわずかな加速と、それに続く急激なストップという動作であり、ロッドグリップが描く弧全体の最後の数インチを指す。
そして、このセカンドステージこそがタイトループを生み出すカギなのだ。ラインからスラックをなくし、先端にまでキャスティング・エネルギーを伝えたら、ほんの数インチ(ロッドティップ部ではなく、グリップ部の振り幅)で急速に加速し、急激にロッドティップをストップさせる。ラインが飛んでいくのは、上下左右を含めてロッドティップをストップさせた方向である。
つまり、ラインの加速に要するロッドティップの振り幅が短ければ短いほど、また、ストップを急激に行なえば行なうほど、ループはタイトになるのである。さらに、ロッドティップを速く動かせば動かすほど、また、急激にストップさせればさせるほど、ロングキャストも可能になる。

 
 

ストップ後はロッドティップをすぐに下げてはならない。これをやってしまうと、ループを下方向に引き下げてしまうことになり、ループの幅を広げる結果となる。しかし、あまりにもタイトなループはラインのもつれを引き起こしかねない。そこで、ストップの後、ロッドをほんの少し下げて、ラインがぶつからないようにするとよい。
さて、もう一度キャスティングの流れを復習してみよう。まず、ロッドをゆっくりと引き(あるいは押し出し)、ライン先端までキャスティング・エネルギーを伝えて、ライン全体を浮かせる。それから、できる限り短い振り幅でラインを加速させ、急激にストップさせる。これがタイトループのキャスティング・テクニックである。

ループ幅をコントロールする

ラインを加速させる際のロッドの振り幅と急激なストップの役割を理解してしまえば、望み通りにループ幅をコントロールできるようになる。より短い振り幅で加速させ、より速くロッドティップを動かした後にストップさせれば、ループはよりタイトになり、よりロングキャストが可能になる。

  ロッドグリップに与えられたわずかな動きが、ロッドティップでは増幅され、非常に大きな動きになるという事実は、意外にも一部のエキスパートたちを除いて自覚しているアングラーは少ないようだ。例えば、ロッドを垂直に立てて、前後に振ってみるといい。グリップではたった2インチの振り幅でも、ティップは6〜8ftの距離を前後することになるのだ。言い換えるなら、タイトループを実践するためには、自分の手をいかに少なく動かすだけでよいかということだ。
では、タイトループに要求されるロッドの振り幅というのは、実際にはどのくらいなのだろうか。これを知るには、実際にやってみるのが手っ取り早い。まずロッドティップから30ftほどラインを出し、フォルスキャストを始める。加速からストップまでのロッドティップの振り幅をしだいに短くしていくと、それに合わせてループもタイトになっていくのが分かる。この加速からストップまでのストロークを、ほとんどの人が手首を使って行なっているようだが、同じことを手首ではなく、ヒジだけを使って行なってみる。手首を動かすほど、ループはワイドになり、手首を使わずにヒジを動かすほど、タイトになっていくのだ。また、ロングキャストを行なう上では、いかに急激にロッドをストップさせるかも重要で、この点に関しても、手首を使うより、ヒジを使ったほうがより急激にストップさせることができる。
しかし、タイトループは万能ではない。時にはタイトループではマズイような状況もある。例えば、シンキングラインや重いフライ、あるいはごく短いリーダーを使用する場合などは、概してワイドループのほうがキャスティングしやすい。先述したように、ループ幅を決定するのは、加速からストップまでにロッドティップが動く距離である。つまり、ストロークの長さを変えてやれば、ループ幅はコントロールできるわけである。
 

タイトループとロングキャスト

だが、ロングキャストはタイトループだけによって完成されるものではない。タイトループを作ろうと努力することによって、先に上げたいくつかのコツが身につき、全体としてキャスティングが完成されていくわけである。つまり、まずはループのコントロールを習得するのが先決ということだ。そこで、ループをコントロールするための4つのファクターをもう一度確認しておく。
1. ラインは、ロッドティップを止めた方向(上下左右を含めて)に向かって飛ぶ。
2. ループ幅は、キャストのセカンドステージ、つまり加速からストップまでにロッドティップが動いた距離によって決まる。
3+4. 上記の1と2は実は同じことを言っているということを理解する。
ループ幅をコントロールできるようになったら、次なる目標はロングキャストの完成である。では、ラインの飛距離を決定するのは何か。これはもう加速スピードと急激なストップ以外の何物でもない。
ロッドティップが速く動けば動くほど、急激に止まれば止まるほど、ラインの飛距離は伸びていく。これも実際に自分でやってみたほうが分かりやすい。まず、セカンドステージにおける移動距離(ロッドの振り幅)を短くしてタイトループを作る。次に、振り幅をそのままに、しかしロッドを動かすスピードは遅く、ストップも急激に行なわないようにする。タイトループを描いたラインはゆっくりと進み、決して遠くには飛ばないはずだ。次に、同様にタイトループを作り、今度はロッドを速く動かして、ストップも急激に行なってみる。すると、ループ幅は変わらないのに、前回よりも飛距離が伸びるようになる。最後は、同じようにタイトループを作り、ロッドの動きは可能な限り速くし、ストップも可能な限り急激に行なう。はたして、どうなるか。そう、ループ幅はそのままに、飛距離は2回目よりもさらに伸びるのである。

さて、以上がフライキャスティングの論理である。向かい風や重いフライをものともせずロングキャストを決めたいなら、以上のことを理解し実践できなければならない。混乱した頭を整理するために、最後にもう一度おさらいしてみよう。
バックキャスト、フォワードキャストにかかわらず、キャストの前半(ファーストステージ)はラインを一直線に伸ばしてロッドにパワーを乗せるための準備段階。しかし、ロッドが描く弧全体の割合を見ると、この準備段階の振り幅が大部分を占める。
 
  筆者紹介/レフティー・クレー Bernard “Lefty” Kreh
ソルトウォーター・フライフィッシングを愛する人で彼の名前を知らない人はいないだろう。その著書はどれも有名で、ビデオ出演本数も並はずれている。おそらく、アメリカで最も有名かつ成功しているフィッシング・ライターではないだろうか。また、彼の考案によるフライパターンも数多く、中でも「レフティーズ・デシーバー」は普遍的なスタンダードパターンとしてあまりにも有名である。主な著書には、「Fly Fishing In Saltwater」「Fly Casting with Lefty Kreh」「Salt water Fly Patterns」「Spinning Tips」「Advanced Fly Fishing Techniques」「Longer Fly Casting」などがある。
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