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光が色彩を増し、遠くのモスクから魂に滲み入るように流れてくるコーランの朝の祈り。身勝手な旅人は“アッラー・アクバル(アッラーは偉大なり)”と唱えるだけで、このイスラムの敬虔な空気に同化し、アッラーの加護を得ようとする。――赤道直下、南緯六度。アフリカ東海岸に浮かぶ島、ザンジバル。かつてシンドバッドの末裔達が跋扈した、黄金色の光溢れるこの海は、一日に四種のビルフィッシュを釣ることも夢ではない類稀なビルフィッシュの交易路でもある。 |
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そんな紙面の片隅に、素晴らしいサイズのブルーマーリン(クロカジキ)やストライプ(マカジキ)、それにスワヒリ達の間ではスリスリ(Suli Suli)と呼ばれ、この海域では非常にポピュラーな魚――セイルフィッシュ(バショウカジキ)などの釣果が紹介されていることに私の目は釘付けになった。そして、タンザニアのペンバ島とザンジバル島周辺の海域がいかに魅力的な海であるかを紹介した『ペンバ・チャネル・フィッシング・クラブ』の記事が私の脳裏に刻まれて20年が過ぎたわけである。
この間、私は行き詰まったりよろめいたりする中で、当時果たせなかったザンジバル行きを想うことでアフリカの光を感じ、一人癒されていたわけである。 ザンジバルの最北の岬、ヌンギに素晴らしいリゾート地が開発されたのはごく最近のことである。ネットサーフィンでこのロッジ(Ras Nungwi)を知り、同時にペンバ・チャネル・フィッシング・クラブが今だ健在であることを知った時、私は20年前のあの新聞の片隅に見つけた記事の感動を再び想いおこしたものである。同クラブのベースは、ケニアのモンバサの南、シモニ(Shimoni)にありビッグゲームのシーズン、11月から3月にかけて彼らはザンジバルにボートを一隻待機させている。これはクラブが保有する4隻のボートのうち最も古いものでイタリア製、建造後30年を経た代物ではあるが、33フィートの老体はスワヒリのキャプテンとクルーによって的確にオペレートされている。 |
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32kgのセイルフィッシュとラス・ヌンギのマネージャー達。 |
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ヨーロッパから来るダイバーも多いこの島だが、ダイビング・ボートは数あるものの、本格的なオフショア・トローリングのボートは先述のボート一隻のみである。ただし事前にリクエストを出しておけば、ペンバ・チャネル・フィッシング・クラブでは数杯のボートを用意することができる。その中にはフル装備のバートラムも含まれる。いつの日か再び、せめて一週間、納得の行くまでこのスワヒリ達の海でビルフィッシュを狙いたいと思う。
朝な夕なにコーランの聞こえる街角で海を見つめ、水上レストランでビールをやりながら心を海に解き放す。強烈な陽射しが白い建物とその路地の影に強烈なコントラストを与え、この陰影がなにやらストイックな心地良さを与えてくれる。子供達の原色の歓声が聞こえ、桟橋から海に飛び込む連中がいる。ふと、チャーター・ボートはこの島には一杯で充分だと思えたりする。 |
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“ヌガラワ”と呼ばれるダブル・アウトリガー・カヌー。このカヌーは文化史的にも非常に興味深いものである。 |
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