LONG RANGE FLY FISHING バハ・カリフォルニア半島沖 ロングレンジ・パーティーボートの オフショア・フライロッディング
レポート/ニック・クルシオーネ 訳・構成/編集部
ボートを所有しているアングラーならいざ知らず、舞台がオフショアとなるとフライロッダーにとって状況は途端に厳しくなる。フライフィッシングを理解してくれるチャーターボートは少なく、料金もそれなり。それならいっそのこと本場アメリカまで行ってしまうというのはどうだろう。今回紹介するロングレンジ・パーティーボートによるフライロッディングは、カリフォルニア州サンディエゴを出港して南へ下り、バハ・カリフォルニア半島沖を約1週間に渡ってクルージングしながらオフショア・フィッシングを楽しむというもの。船はマグロ船を改造したもので、プール付きの豪華客船とはいかないまでも、ステートルームやシャワーもついたフル装備。注目したいのは、参加者の壮観な顔ぶれである。レポートを書いてくれたニック・クルシオーネをはじめ、ステュー・エイプトやデイブ・ウィットロック、スティーブ・エーベルなど、海のフライを語る上では欠かせない重要人物たちが乗り込んだのだ。最高の環境の中、誰に遠慮することなくフライが振れて、おまけにエキスパートたちと一緒に釣りができるのだから、これは絶対にお薦めだ!
ロングレンジ・パーティーボートとは?
日本風に言えば遠征専門の乗合遊漁船ということになる。カリフォルニア州サンディエゴを基地に、バハ・カリフォルニア半島沖をクルージングしながらイエローフィン・ツナ(キハダマグロ)やワフー(カマスサワラ)などを釣るもので、歴史はまだ新しい。遠征先は日程に応じておおよそ決められていて、半月にも及ぶ最長のコースではバハの南端をさらに下り、北緯19度あたりまで遠征する。釣り方としては、アンチョビ(カタクチイワシ)等のライブベイトもしくはデッドベイトをチャミングして魚を寄せ、それらをハリに掛けて流すというスタイルが主流。また、ロングレンジ・ボートはスタンダップ・スタイルを流行させる引き金になったことでも知られている。チェアのないデッキで釣るためには、ジンバルベルト&ハーネス使用によるスタンダップ・スタイルが不可欠であり、ギアの改良発達が促された。 今回は、このパーティーボートを使ってフライフィッシングにチャレンジしたわけである。
ロングレンジ・パーティーボートによるフライフィッシング・トリップ
ツナやワフーといったオフショアのゲームフィッシングがフライ目掛けて次々と襲い掛かる様は、この世に存在する全ての釣りのなかでも極上の興奮を与えてくれる。純粋に生理学の観点から見ると、これは間違いなく感覚過負荷の症状である。だが、フライロッダーにとって、この全身を貫く鋭い興奮は極上のエクスタシー以外の何物でもないのだ。ストライクと同時に、ロッドはまるで強力な磁石に吸いつけられるようにしなり、足下のラインは巨大なスプリングのようにガイドへと吸い込まれていく。だが、これはドラマのほんの始まりにすぎず、それが最終的に完結する時には、疲労感と高揚した気分とが混ざり合った形容しがたい感覚で全身が満たされるのである。
ロングレンジ用タックルはファイト重視でチョイスする
フライタックルの極限に挑戦するこの遠征釣行では、使用するイクイップメントには全てトップクオリティーが要求される。もっとも、有名なフライロッダーたちが多数顔を揃えるために、参加する誰もがせめて道具だけはと一流品を持参するようである!? リールで言えば、エーベル、ビリー・ペイト、ステュー・エイプト(今回、私は彼と部屋が一緒だった)など。ロッドはセージが目立ったが、私はオービスのオフショアロッドにオービス・オデッセイ・フライリールの組み合わせを使用した。オフショアのフライフィッシングでは、タックル、アングラーともに「質」が求められる。この釣りは繊細さとは無縁のものなのだ。
ギャレーでの夕食は談笑のひととき。
スクールサイズのイエローフィン。多いのはやはりこのクラス。