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Land-Based Gamefishing in Australia
MARLIN ON THE ROCKS!

磯からマーリン!
オーストラリアのランドベース・ゲームフィッシング

By Steve Starling

 
  磯からマーリンである。そのものスバリである。なんでもオーストラリアじゃ、この手の釣りを「ランドベースゲームフィッシング」と呼ぶそうで、体力+技術、おまけに忍耐までも要求される相当にデンジャラスでヤバイ、マッチョタイプの釣りとして人気が高い。で、実際にどのくらいの確率でキャッチできるのかというと、ほとんど宝クジ的。とはいっても、1年に12尾以上はキャッチされているので、まさしく釣るヤツは釣っているという世界である。つまるところ、「岩の上にも3年」というところか…。
シドニーを中心とするニューサウスウェールズ州、及びエクスマスを北端とする西オーストラリア州の岩場では、世界でも類を見ないランドベース(陸っぱり)のビッグゲームフィッシングが楽しめる。切り立つ磯の足下はそのまま深みへと落ち込み、澄んだ暖流が岩を削るように流れるこれらのエリアでは、本来ならオフショアで狙うべきはずの大型のゲームフィッシュが、ロックフィッシング(磯釣り)という忍耐の釣法でキャッチできるのである!
といっても、全てのロックフィッシャーマンたちがビッグゲームフィッシュを狙っているわけではない。ロックフィッシャーマンのことを、オーストラリアでは「ロックホッパー」(グラスホッパーならぬ岩場のバッタ)と呼んでいるが、彼らのほとんどはスナッパーやジャック、グルーパーなどの小型魚を狙っている。ヤル気に満ちたごく少数のロックホッパーたちだけが、「LBG」と略されるランドベースのゲームフィッシング(Land Based Gamefishing)に果敢に挑戦しているのである。
 
 
LBGのスペシャリストたちは、暖流(南赤道海流)が直接ぶつかるニューサウスウェールズ州や西オーストラリア州(注:ニューギニアとオーストラリアとの間を抜けた南赤道海流は、インドネシアの南を経て、西オーストラリア州のエクスマス周辺で南からの寒流、西風皮流と出合う)の岩場へ定期的に釣行を重ねている。彼らはIGFAルールに準じたタックルを用い、巨大なライブベイトやデッドベイトを駆使して大型のオフショア・ゲームフィッシュを狙うのである。中でもスペシャリストたちのターゲットは次の数種に集中しているようだ。ツナ、イエローテイル・キングフィッシュ(Yellowtail Kingfish、学名:Seriola lalandi)、アンバージャック(Greater Amberjack、和名:カンパチ、学名:Seriola colburni)、スパニッシュ・マッカレル(Narrow-barred Spanish Mackerel、学名:Scomberomorus commerson)、シャーク、そしてビルフィッシュである…。
 

そう、ここオーストラリアでは、ブラックマーリンやセイルフィッシュがしばしばロックフィッシャーマンたちによってキャッチされている。その数は年平均で12尾以上にも上る! 過去の記録を調べてみると、ニューサウスウェールズ州のジャービス湾(Jervis Bay)内にあるチューブ(The Tubes)や、西オーストラリア州のスティープポイント(Steep Point)といった有名釣り場では、30尾以上ものビルフィッシュがキープあるいはタグ&リリースされたシーズンさえあるのだ。

 

西オーストラリア州のエクスマスから南約600kmに渡る険しい海岸線が、ダウンアンダーにおけるランドベース・ゲームフィッシングの主要なロケーションのひとつ。北オーストラリア沖を通過した暖かい南赤道海流は、この一帯で南極からの冷たい西風皮流とぶつかり、切り立った断崖の足下で激しく砕ける。このような環境こそが、この釣りを成立させるための絶対必要条件である。マーリンが特に数多くキャッチされるのは、オーストラリア大陸最西端のスティープポイント。

 
WEST AUSTRALIAN LBG LOCATIONS
西オーストラリア州 LBGロケーション
NSW LBG LOCATIONS
ニューサウスウェールズ州 LBGロケーション
 

もうひとつのランドベース・ゲームフィッシングのロケーションは、ニューサウスウェールズ州のシドニーを中心とする約600kmに渡る海岸線。この一帯もまた、西オーストラリア州と同じく、南太平洋からの南赤道海流と、タスマニア方向からの西風皮流との合流域となっている。この写真はシドニーの南に位置するジャービス湾の断崖。ジャービス湾にはチューブなどの有名ポイントが多く、マーリンとの遭遇率も高い。写真でも、ぶつかり合った潮流が潮目となり、断崖の足下から伸びているのが分かる。ジャービス湾のチューブでは、年間30尾以上のブラックマーリンがキャッチされるシーズンすらあるが、それも納得できる。
 

ビルフィッシュ用のリグには一風変わったものが使用される。ベイトにはマッカレル、スカッド(Yellowtail Scad、学名:Trachurus novaezelandiae)、ボニート、カワカワ(Kawa Kawa、Mackerel Tuna、学名:Euthynnus affinis)、マレット、ガーフィッシュなどのライブもしくはデッドベイトが使用されるが、特徴的なのは巨大なウキまたは風船を用いてベイトを表層にドリフトさせるところだ。また、西オーストラリア州のスペシャリストたちの間では、ヘリウムを注入した風船を用いて風に乗せ、より遠くにベイトを流すテクニックが流行している。この方法だと、数百m先までベイトをドリフトさせることができるのである。
ラインクラスとしては、以前は15kg(30Lb)や24kg(50Lb)テストラインが主流であったようだが、最近では最先端のロックフィッシャーマンたちによって10kg(20Lb)テストラインや時には8kg(16Lb)テストラインなどが用いられ、ライトラインによるタグ&リリースが主体になりつつある。ちなみに、1972年に初めて岩場からマーリンがキャッチされた時には、なんと6kg(12Lb)という超ライトタックルが用いられていた。もちろん、これは偶然にすぎないが…。
ロックフィッシングのターゲットとなる小型のビルフィッシュは、ボートアングラーにとってもまたライトタックルの格好のターゲットであるが、ロックホッパーたちにはボートのサポートがないという点を忘れてはならない。彼らは沖に向かって突っ走るマーリンを「追いかける」ことができないのだ!

そのため、ライトタックルを用いるロックホッパーたちの多くは、フックアップしたビルフィッシュにリールのラインを全て持って行かれるという、ボートフィッシングではまず考えられないバラシを毎年経験しているようだ。たとえ魚の大きさがせいぜい100kg止まりであっても、この種のバラシは決して驚くことではない。マーリンと1対1のバトルをするという点においては、ロックホッパーこそ、その究極にあると言える。
さらに、岩場という状況は彼らに別の悪条件をも課している。触れただけで簡単にラインを傷つけてしまうゴツゴツの岩礁、時にはアングラーまでも洗い流す外洋の荒波など、ランドベース・ゲームフィッシングには過酷な条件がズラリと揃っている。
 
フックアップ直後、30kg(65Lb)のブラックマーリンが空を飛んだ! NSW州の有名ポイント、チューブにて。こんなにもショア近くでフックアップするのだ。

ロックホッパーたちによってキャッチされるマーリンは、20〜40kg(40〜90Lb)クラスの小型のブラックマーリンが多い。
 
なんと8kg(16Lb)テストラインでキャッチした22kg(50Lb)のブラックマーリン。アングラーの後方に小さなタイドプールが見えるが、ここにライブベイト用のマッカレルなどを生かしておく。
  事実、毎年60名から100名のロックフィッシャーマンたちが波にさらわれ、海に転落して死亡しているのである。その他、釣り場へのロッククライミング中に転落して死亡あるいはケガをするという事故は数え切れない。ロックフィッシング中の死亡事故を未然に防ぐための教育プログラムも盛んに行なわれてはいるものの、死への確率という点では、オーストラリアで最も危険なスポーツと考えられている!
重たいタックル類を背負い、切り立った岩場を何kmも歩きよじ登るこの釣りは、その危険性のためか、あるいは体力的な問題か、現在では主に若者たちのものとなりつつある。マーリンなどのビッグゲームを狙う本格的なランドベースのゲームフィッシングには、女性や老人の姿はほとんど見かけない。
もうひとつ、この釣りの特徴は、相当な辛抱強さが要求されるという点だ。ビルフィッシュをたった1回フックアップ(キャッチではない)するためには、平均して20日から30日もの釣行を重ねなければならないのだ! しかも、幸運に恵まれ仮にフックアップできたとしても、無事にランディングあるいはタギングできるという保証はなく、成功の確率も極めて低い。
とはいえ、これらの危険性や困難こそがランドベース・ゲームフィッシングの魅力になっていることも確かである。投資する時間と労力が大きいだけに、その報いは並みはずれている。他の釣りと一概に比較できないのは当然だが、この釣りがボートからのビッグマーリンフィッシングに劣っているとはとても思えない。ロックホッパーたちは明らかに別の世界を持っているのだ…。
 
8kg(16Lb)テストラインでキャッチしたブラックマーリン。
   

左・中・右ともに(右は、中の写真中の拡大)/NSW州ジャービス湾のチューブでキャッチした35kg(80Lb)のブラックマーリン。ロックから釣り上げられたマーリンとしては、かなり大型と言えるだろう。短く曲がったビルは、おそらく奇形と思われる。

 
LBGはまずベイトを釣ることから始まる!
そしてシャークの攻撃をかわしつつマーリンを狙うのだ
 
磯からマーリンを釣るためには、まずベイト=エサを釣る必要がある。デッドベイトであれば釣り場へ持参することも可能だが、ロック・クライミングまがいの危険すら冒さなければならないこの釣りでは、荷物は少ないほどよい。
で、釣り場に着いたら、必然的にエサを釣ることになる。なにしろマーリンがいるくらいだから、そのエサとなるベイトフィッシュには事欠かない。マッカレルやカワカワは言うに及ばず、ほとんどのポイントには南からの寒流が入っているので、サウザンブルーフィンツナ(いわゆるミナミマグロ)なども釣れたりする。釣り上げたベイトはすぐさまリギングされるわけだが、シャークなどのエサ取りも相当に多いので、ベイトはやはりストックしておくのが望ましい。といっても、ライブベイトとなると、どうやってストックしておくかが問題となる。それを解決するのがタイドプール=潮溜りである。釣り上げたベイトフィッシュは、タイドプールで保管というわけだ。
     

ベイトは主にルアーキャスティングで釣る。上右写真のように、適当な重さの中通しオモリにフックを付けただけのルアー?でもOKだ。ちなみに、右上の魚はカワカワ(マッカレルツナ)、上左はサウザンブルーフィンツナ(ミナミマグロ)。いちばん左/シャークの餌食となってしまったライブベイト。左/小型のホエラーシャークは外道か?
   
 
著者プロフィール:Steve Starling(スティーブ・スターリング)
オーストラリアの超有名フィッシング・ライター。オーストラリアの釣り雑誌『Fishing World』及びカナダの『Canadian Sportfishing』の編集者を歴任し、現在は『Modern Fishing』と『Modern Boating』の2誌でフィールド・エディターを務める。釣りのジャンルは淡水海水を問わず、6つのオーストラリア記録を持つ他、カーワイ(Kahawai、別名Australian Salmon)のソルトウォーターフライ部門IGFA世界記録を持っている(6.3kg<13Lb14oz>、8kg<16Lb>テストラインクラス、1991年6月1日、ニューサウスウェールズ州のジャービス湾にて)。また、1979年にはショアからブラックマーリンをキャッチし(オーストラリアで21人目)、さらに1981年10月にはカナダのノヴァ・スコシア沖で1,020Lbのアトランティック・ブルーフィンツナを釣り上げ、『エアーカナダ・ツナカップ』の優勝に輝いている。
 
 
釣行リポート
   
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