DON MANN BIG GAME TECHNIQUES & TIPS ドン・マンのビッグゲーム・テクニック3 By Don Mann・Translatioin/Tsuruzo Kondo
ライブベイト<Live Baiting Marlin> 時にライブベイトが抜群の効果を発揮する理由
カツオなどのベイトフィッシュが比較的容易に入手できる日本の海では、ライブベイティングによるマ−リンフィッシングは非常に現実的かつ効果的なメソッドと言えるだろう。ただし、トローリングスピードが異なるなどの理由から、ライブベイトとルアーを同時に流すことはできない。したがって、アングラ−はいつ、どこでライブベイトに切り替えるべきなのかを知る必要があるわけだ。今回は、ライブベイトに適したシチュエーションとはどのような時なのかを検証した上で、一般的なリギング法と各地で実践されている様々なテクニック&ティップスを紹介してみよう。
ライブベイティングの利点と欠点 <advantages & disadvantages>
魚の内臓に与える傷が致命傷になることはまったく疑問の余地がない。
すべてのビルフィッシュは捕食魚である。捕食魚とは、すなわち、他の魚類を捕らえ、それを食して生存する種類の魚のことだ。 ゆえに、究極の捕食魚であるこのビルフィッシュを釣りあげたいならば、最も効果的なベイトは、生きている魚類、つまりライブベイトであるという論理が成り立つ。 ビルフィッシャーにとっては、ライブベイトの他にも、ルアーまたはデッドベイトという2つの選択肢が残されている。そのいずれを用いるのかは、その時々の状況による。 例えば、ベイトフィッシュの豊富なエリアや居心地のいいエリアにビルフィッシュがいる場合には、ライブベイトは最も効果的と言える。一般的に言って、ベイトフィッシュが多く集まるのは、次のような要素が当てはまる場所だ。海底の根やドロップオフ(ビルフィッシュも集まりやすい)、河口付近、入江や港湾付近に伸びる水色が変化する一帯。オフショアの場合は、複数の潮流がぶつかる潮目、急激な水温変化やホンダワラなどの海草が確認できる海域など。
しかしながら、ビルフィッシュをフックアップさせる上で、ライブベイトが最も効果的な手段になる場所、時間、状況は確かにあるのだ。以下に、そのような状況を検証してみよう。
ライブベイトが有効な状況とは <times, places, and circumstances>
ライブベイティングは、前もって念入りに計画した遠足のようなものだ。
ドロップオフや水色の変化する場所でのライブベイティングは、前もって念入りに計画された遠足のようなものだが、アングラ−はその時々の状況に応じてベイトフィッシュの使い分けをしばしば行なう。融通のきくアングラ−であれば、その日の状況に有効なベイトフィッシュの情報をどこからか得て、見事に魚をキャッチするだろう。
毎年、春から夏にかけてのフロリダキーズで船舶無線を聞いていると、ドラド(シイラ)をフックアップしたが、ファイトの途中でマ−リンに食われてしまったというような交信が飛び交う。海面に漂うホンダワラの下から突然姿を現したマ−リンが、アングラ−のフックに掛かっているドラドを横取りしたというわけだ。こんな時、ベテランならすぐに現場へ急行して、小型のドラドを釣り、大型のマ−リンフックとダクロンラインでリギングして、海面に漂うホンダワラに沿ってトローリングを始めるだろう。うまくいけば、そのライブベイトにブルーマ−リンが食いついてくるはずである。(大型のフックをドラドの鼻の前に掛けるやり方は、このような場合にだけ用いる) 小型のドラドを口にくわえたブルーマ−リンが、濃密なホンダワラの下から飛び出す瞬間は、まさに息を飲む光景であり、目の前で自分の仕掛けたフックがマ−リンの口にセットされる様子はエキサイティングな経験である。空中に舞い上がる金色の海草はスペクタクルであると同時に、ラインに絡みついたそれがテンションを加えることにもなり、抵抗すればするほどマ−リンにとっては大きなハンディキャップとなる利点もある。
ライブベイティングのリギング <do it quickly!>
慣れたアングラーであれば、一連の作業を10秒以内で行なうことができる。
これまでは、スキップジャックツナ、ドラドなどのベイトについて書いてきたが、マ−リンに有効なライブベイトは他にもたくさんある。ボニートをはじめ、小型のブラックフィンやイエローフィン、ブレット、フリゲートなどのツナ類、ならびに各種のマッカレルがそうだ。また、ハウンドフィッシュやボーンフィッシュ、レインボーランナーなども、やむを得ない場合にはライブベイトとして使われることもある。だが、最も頻繁に用いられるのは、やはりツナ類である。 ダクロンラインを用いた一般的なライブベイト用リグは次のようなものだ。1人がベイトフィッシュを釣っている間に、もう1人はそのリグを用意して待っていなければならない。したがって、リグは前もって作っておく必要がある。 使用するベイトフィッシュの大きさに合わせたサイズのマ−リンフックを、太めのモノフィラメントリーダー(300〜500Lb)にスリーブで接続したものが、標準的なリグだ。フックサイズの基準としては、ブレットツナやボニートなど小型ベイトの場合には、10/0か12/0。より大型のスキップジャックやツナ類には、13/0、14/0でも大き過ぎることはない。このフックのベンド部分に、10Lbテストのダクロンラインで作った5〜6インチ大の輪を結び付ける。その輪のもう一方には、リギングニードル(12番くらいのワイヤーの端を輪にした自製リギングニードルでもいい)を結びつける。このように用意したリグを、ベイトフィッシュを釣っているアングラーの手近な場所に置いておく。 ベイトフィッシュは素早く丁寧にキャッチしなければならない。ツナ類は口や皮が少し切れただけでも、すぐに大量の血を出してしまうからだ。できれば、トレブルフックよりもシングルフックを使ったほうがいい。ベイトフィッシュを慎重にランディングしたら、丁寧にフックを外して、濡れタオルで魚体を包み込む。この時、目をふさぐと、あまり暴れない。
慣れたアングラーであれば、ベイトフィッシュをキャッチしてからの一連の作業を10秒以内で完璧に行ない、ベイトフィッシュを弱らせずに海中へ戻すことができる。もし不安なら、ダクロンの輪を使う代わりに、小さめのグルーパーフック(7/0くらい)をマ−リンフックのベンドに装着しておいてもいい。装着方法は簡単だ。グルーパーフックのアイをプライヤーで開き、マ−リンフックのベンドに当てて、また元のように閉じるだけだ。ただし、互いのフックポイントは逆方向を向くようにすること。釣り上げたベイトフィッシュの口に、このグルーパーフックを刺すだけで、ダクロンと変わらないプレゼンテーションが可能になる。 また、場所によっては、ベイトフィッシュとビルフィッシュが同じ海域にいないこともある。ハワイ島コナのスキッパーたちは、この問題を解決するために、コックピットのホースを巧みに利用している。岸寄りでキャッチしたツナを、さらに沖のエリアまで持っていかなくてはならない時、彼らはツナを濡れタオルに包んで抱え、その口にホースを当ててフルスロットルで急行するのである。酸素を含んだ新鮮な海水がベイトフィッシュのエラを通り抜けるため、目的の場所に到着するまで、5〜10分程度なら弱らせずにすむのである。 むろん、最も理想的なのは、ツナのような大型のベイトフィッシュを弱らせずに生かしておけるだけのライブウェルを装備することだが、そのようなボートは滅多にない。 このように数々の難題があるものの、巨大なマ−リンが10Lbもあるようなツナをくわえこむ光景は、ビッグゲームフィッシングにおける至高の経験と言えよう。コンディションさえ許すなら、ライブベイティングは試してみるだけの価値はある。ルアーとはまた別の面白味が見つかるだろう。