DON MANN BIG GAME TECHNIQUES & TIPS ドン・マンのビッグゲーム・テクニック(10) Lures Can Be Dropped Back, Too フックアップ率を確実に高める ルアーのドロップバック・テクニック
写真・文/ドン・マン 訳/近藤鶴三
ドロップバック・テクニックといえば、ライブベイトのそれを指すのが普通である。ストライク後にラインを送り込み、ベイトを呑み込ませて確実にフックアップさせるテクニックのことだが、これは何もライブベイトだけの専売特許ではない。実はルアーの場合にも非常に効果的なテクニックなのだ。ルアーの場合、普通はリールのドラッグ値を最初からストライク・ポジションに設定するが、これだとフックアップはある程度まで運に左右されてしまう。ジャレつくだけのカジキでも、ルアーをドロップバックさせれば口を使うことが多いのである。アメリカの一部のエキスパートたちの間では、このドロップバック・テクニックの登場により、今までのルアートローリングの考え方がすっかり覆されてしまったほどである。この記事を読んで、ぜひ諸兄の釣りにも革命を起こしてほしい。
ドロップバックとは何か?
ビッグゲームフィッシングにおいては「絶対にダメ」という言葉も、また「絶対に大丈夫」という言葉も決して言ってはならない。下記はその例のひとつである。
どちらの方法でも、アングラーは最初のストライクからある程度の時間をおいてフックセット(アワセ)する。どちらもナチュラルベイトへの最初のヒットがあった後にラインをフリースプールにするテクニックであり、これがすなわちドロップバックと呼ばれているものである。
ドロップバック・テクニック ルアーへの応用
一般に、ビルフィッシュは本物のベイトと硬質プラスティックの違いを感じ分けると考えられている。そのため、アーティフィシャル・ルアーの場合は、リールのドラッグを最初からストライク・ポジションにセットしてトローリングするのが普通である。したがって、フックアップも、特にヘビータックルを使用している時には、一か八かの運任せ的な要素が強い。ナチュラルベイトとは違って、ヒットした時にフックがうまく突き刺さらなければ、ビルフィッシュは硬質のプラスティックルアーを2度追いすることは滅多にないと考えられている。 しかし、そのような固定観念も、近年登場したソフトルアー(特に、流体力学者のフランク・ジョンソンのデザインによるSoftheads)によって大きく変わり始めた。 また最近では、セントトーマス島のレッド・ベイリーやサンファン在住のマイク・ビナイテスらによって、ドロップバック・テクニックをアーティフィシャル・ルアーに応用するという斬新なテクニックが試みられている。これは、マーリンがヒットした際に、硬質のアクリル製ヘッドを持つルアーにはショート・ドロップバックを、ソフトヘッドのルアーにはそれよりも少し長めのドロップバックを与えるというもので、フックアップ率を大幅に向上させることができた。
シングルフックが有利な理由
それと同時に大型のマーリン用ルアーには、これまでベテランたちが好んで使ってきたダブルフックではなく、むしろシングルフックの使用をベイリーは勧めている。リーダーをカットしてマーリンをリリースする場合、シングルフックのほうがずっと生存率が高くなるからである。
筆者紹介/ドン・マン(Don Mann)
アメリカのビッグゲーム・シーンを語る時には欠かせないライター&フォトグラファー。ただ傍観者として関わるのではなく、自らもロッドを握る。アメリカでは非常に名の知れたアングラーである。事実、すべての9ビルフィッシュを11カ月と1週間のうちにキャッチするという偉業を達成しており、IGFAに認定され、1989年のギネスブックにも名を残している。この記録は当ウェブで紹介したラス・ヘンズリーに破られるまで史上最短のものであった。また、37kg(80Lb)テストラインで810Lbのアトランティック・ブルーマーリンをキャッチしており、栄誉あるIGFA「10to1クラブ」入りを果たしている。共著に「Great Fishing Adventures」があり、「Marlin」「Fishing World」「Florida Sportsman」等に記事を連載している。