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DON MANN BIG GAME TECHNIQUES & TIPS
ドン・マンのビッグゲーム・テクニック(9)
Slow Trolling Lures & Baits
スロートローリング用ルアーとデッドベイトを併用してみる

写真・文/ドン・マン
訳/西園寺吟

 
デッドベイトをトローリングする場合のようなスロースピードで100%のアクションを発揮するルアーが登場したことで、アングラーにはさらに選択肢が増えた。
 

日本でトローリングと言えば、それはルアートローリングを意味する。ベイトを使用したトローリングはライブのみで、デッドベイトが使われることは非常に少ない。まあ、ライブベイトが比較的簡単に手に入る日本の海では、あえてデッドベイトを使用する必要もないということなのだろうが、海の向こうでは未だにデッドベイトを好む人が多いようだ。最近ではスロースピード用のルアーが市場に出回り、デッドベイトとの併用も可能になった。釣りの幅を広げる意味でもデッドとルアーのコンビに挑戦してみてはどうだろうか。

スロートローリング用ルアーの登場により
デッドベイトと同時に流すというテクニックが可能になった

長年の間、我々の常識では、デッドベイトとルアーを同時にトロールするのは無理とされてきた。デッドベイトの柔らかな魚体はハイスピード・トローリングによってすぐに身崩れを起こしてしまうからだ。ベイトの水分を絞って魚体を固くしたり、あるいはボーンフィッシュのような硬い魚体をベイトに用いる方法もあるが、それはとても一般的なテクニックとは言えない。
とはいえ、実際に海に出た際、どうしてもデッドベイトとルアーを同時にトロールしてみたいと思わせる状況に出くわす時があるものだ。だが、ここで釣り人は大いなるジレンマに陥る。大部分のビッグゲーム・ルアーはハイスピード・トローリング用にデザインされており、そのもっとも効果的な速度は7〜8ノット、中には10ノット以上に設定されているものもある。

  そのような速度でデッドベイトをトロールすると、あっという間に魚体は身崩れを起こし、釣り人はベイトの頻繁な交換に追われて疲れ切ってしまうのがオチである。バリフーなどは、それこそ瞬きしている間に、ズタズタになってしまう。生魚であるデッドベイトは保存が効かず、しょっちゅう新鮮なものに取り替えておく必要がある。夏場などは漁獲高が激減し、値段も急上昇してしまう。そのような高価な生魚をこうも頻繁に替えるのはコストパフォーマンスの上からも決して望ましいことではない。
とはいえ、デッドベイトとルアーを同時にトロールするのは無理というこれまでの常識は、現在では通用しなくなった。デッドベイトも短時間では身崩れを起こさないほどの非常に遅い速度で素晴らしい性能を発揮するルアーが手に入るようになってきたのだ。ここで私が言及しているのは、従来のスイミング・タイプのルアーではない。そのタイプのルアーは右に左に激しく動いて、すぐ隣で引いているベイトやルアーに衝突してダメージを与えがちである。スイミング・タイプは、近頃では敬遠されがちになっている。その代わりに、直線かあるいはそれに近い航跡を残すストレートランナー・タイプのルアーがもてはやされるようになってきた。
 

エクアドルのサリナス沖で効果を確認

デッドベイトとルアーの同時トロールを私が初めて試みたのは、エクアドルのサリナス沖の豊饒な海でセイルフィッシュを求めているときであった。その時も、私はいつものように、この素晴らしいファイターを見事にキャッチする地元の漁師のやり方を見習っていた。地元の海はやはり地元の漁師が一番よく知っているからである。
彼らの標準的な仕掛けは、我々が普通に行なっているセイルフィッシュ狙いのバリフー仕掛けと類似したものだが、幾つかの点に違いがあった。まず、我々のものよりも大きなフック(通常、10/0〜12/0のマーリン・フック)を使い、バリフーは私がそれまでに見た中で最大のサイズ(体長14〜16インチのホース・バリフー)を用いていた。デッドベイトへのフック装着方法は、リーダーワイヤーのショートニードルを両顎に通し、銅線でしっかりと巻き付けるという、我々のやり方と殆ど同じものである。だが、リーダーワイヤーは我々のよりも太めの#12〜#14のものを用い、その長さはたった4ftしかない。さらにその先には大物用のスイベルを経由して300Lbテストのナイロン・リーダーが連結されている。ワイヤーとナイロンを組み合わせたこのリーダー全体の長さは、およそ12〜15ftになる。
このワイヤーとナイロンを組み合わせたリーダーの優れた点は、威勢よく暴れるセイルフィッシュをランディングするとき、ワイヤーよりもずっと安全で吸いやすいナイロンを手繰れるという点にある。はなはだ合理的な考えである。

その時、私がチャーターしたのは全長28ftほどのディーゼル・エンジン付きボート(ヌッド・ホルスト所有のチャーターボート)で、最高でも時速4ノットでバリフーをトロールしていた。当地への度々の釣行でエクアドルのセイルフィッシュが気むづかし屋であることを知った私は、もしここでルアーを同時にトロールしたら、あまり腹を空かせていないセイルフィッシュでも、ルアーが巻き起こす波立ちに興味を抱き、もしかすると勝手に動き回るルアーに怒りをかきたてられ、それに食いついてくるかも知れないと思い付いたのである。
私は“自分は何でも知っている”というような尊大な態度に思われぬように、私の貧弱なスペイン語で自分がこれから試みることを地元のクルーに手短に説明した。彼らはそれを聞いてクスクス笑いながら、私が2本のフラットラインにバードとルアーをそれぞれセットし、トロールする様子を見ていた。彼らは、私がアウトリガーにはそのままデッドベイトを付けたままにしているのを見て、明らかに喜んでいた。4本のロッドのうち、少なくとも、この2本だけにはセイルフィッシュを仕留めるチャンスが残されていると思ったからだ。
その一方で、私は、船長に頼んで速度をあと1ノット上げて貰えば、私の持つ幾つかのルアーは充分に効果的な動きをするはずであり、さらに、その前方に“Boon Bird”をおいて、それが巻き起こす波紋や泡立ちを加えれば、確実に釣果が期待できると信じていた。私は、デッドベイトとルアーの同時トロールはタブー視されているにもかかわらず、この理屈に基づいた自分のプランに自信を持っていた。

 


ルアーとデッドベイトの同時トローリングが長い間不可能とされてきた最大の理由は、デッドベイトを引く場合のスロースピードで充分なアクションをするルアーが無かったことだ。上はスロートローリング・ルアーの数々、デッドベイトとの併用では、スイミングタイプよりもストレートランナータイプのルアーが好まれる。

 

マーリンがデッドベイトよりも私のセットしたこのフラットラインの方により強い関心を示したとき、地元のクルーは初めて興奮し、大いなる興味を抱いたようだった。太平洋のうねりに乗って、ルアーに接近するマーリンの背ビレが見えると、船長はボートを急加速しながらターンし、さらにマーリンの食い気を誘った。バードの背後にブルブルと激しく震えるマーリンの尻尾が見え、次の瞬間、マーリンは一直線にその背後のルアーに襲いかかったのである。
それ以来、地元のクルーは興奮しつつも真剣な眼差しをバードとルアーに注ぎ始め、“バード”と“ポッパー”という新しい単語が彼らのボキャブラリーに加わることになった。その時から、私の持つスロースピード・ルアーはすべて“ポッパー”と呼ばれることにもなった。

スロートローリング用ルアーとは…

“スロートロール・ルアー”には幾つかのタイプがある。一つは、非常に遅い速度でも、泡立ちが良く、時折、左右に揺れて飛沫を上げる幅の広い凹状フェイスのものである。このタイプは、通常のルアーが8〜9ノットで巻き起こす泡や飛沫を3〜4ノットで得ることができる。このような凹状フェイス・ルアーは、硬質アクリル、軽量レジン、ソフト・プラスチック、木材…等々を用いて、様々なメーカーで製造されている。

  木製のチャガー・タイプには、Arbogast社の“Reto”シリーズがある。私はもっぱらこのパナマ生まれの量産ルアーを次のように改造して使っている。まずテール部(鉛が入っている部分)を糸ノコで切断する。次に、ドリルで胴体後部に孔を開け、リードフック(プロスタイルでセットしたもの)をルアーのヘッド近くにマウントできるようにするのである。
市場に出回っている数多くのルアーの中で、私が発見したもっとも効果的なルアーの一つに、Boone社の“Airhead”シリーズがある。その中でも特に、ライトウエイトの“Airhead Popper”と“Air Eye”が優れている。また、同じBoone社の硬質アクリル製の“Sundance”と“Striker”(どちらもポッパー)は、スロースピードかつショートラインで用いても泡立ちが非常に良い。その他には、Moldcraft社の“Synami Softhead Chugger”と“Super Chugger”、Bagley社の“Headknocker”…等々もお勧めできるスグレ物だ。これは、どれもクリアーな色付きプラスチックで出来ており、大量の空気を吸い込んでゴボゴボと泡を立てるようにデザインされており、スロー・トロールにおいても、ハイスピード・ルアーに劣らぬ航跡を残すことができる。マイアミのR&S Lures社から発売された、凹状のコンケイブフェイスの“オールアイ”と“ティアドロップ”スタイルのスロー・トロール・ルアーもなかなか好評だ。
 
デッドベイトをアウトリガー、 ルアーをフラットで流すのが基本
サリナス沖で最高の釣果を上げたスロー・トロールのやり方は、大きなスカートをつけたバリフーをアウトリガーから流し、フラットで流したバードの後ろにルアーをセットするというものだ。良い結果を出したカラーの組み合わせは、白とブルー、ホットピンクに黒、ブルーと黒…等々であった。これは“カラーの鉄則”にも適合したものだが、Reto社の鮮やかな黄色とオレンジのルアーは唯一の例外であった。殆どの場合、ストライク数もフラットラインのルアーは2対1、時には3または4対1の割合でアウトリガーのデッドベイトを上回った。
つまりこれは、泡と飛沫を上げるルアーは海面をただヒラヒラと泳ぐバリフーよりもずっと大きな関心を呼び起こすということを意味している。マーリンは、デッドベイトだけのトローリングよりもルアーとバードを同時に流すトローリングに、より興味あるいは“怒り”をかきたてられるというわけだ。そして、マーリンが大型になればなるほど、彼らはより強く関心をひかれるものに襲いかかる習性があるのである。4ノットのトローリング・スピードを保ち、デッドベイトと同時に泡と飛沫を上げるルアーを併用するこのテクニックは、エクアドルのストライプト・マーリンに対する必殺の武器というわけだ。
またルアー・トローリングだけでは釣れる自信がもてないとき、デッドベイトを同時に流してみるのもよいと思う。そのときは、もちろん前に書いたようにスロー・スピードでも泡と飛沫を作り出すルアーを慎重に選ぶ必要があるが…。
これは単なる便宜上の問題ではない。おそらく、バードと活発なルアーの両者が作り出す飛沫や水泡に秘訣があるのだ。そのような組み合わせによって起きる飛沫や水泡が魚をエキサイトさせ、食い気を誘うのだ。より良い釣果を上げるには、多種多様な選択を用意しておくことが定説になっている。とはいえ、これは様々な色のルアーを数多く用意するということではなく、つまり、ルアーとベイトを含めた、魚へのプレゼンテーション方法の多様さを用意するということなのだ。
さらに、このスロートロールにはもう一つの有利な点がある。荒れた海面を小型ボートでトロールする場合、ハイスピードでルアーを引くことがしばしば困難になる。ルアーが海面上にハネ上がってしまいがちになるからだ。そのような時、これまで述べてきたようなスロータイプのルアーを使ったり、デッドベイトとの同時トロールを行なえば釣果をグンと増すことができるに違いない。
 


デッドベイト&スロートローリング・ルアーのコンビネーションにはバード(ヒコーキ)の併用も効果的。デッドをアウトリガーで流して、フラットにバードとルアーをセットするというのが基本的な引き方。ルアーの色に凝るのもよいが、プレゼンテーションの多様さを持つというのは色以上に意味がある。

 
ルアーとデッドベイトとの同時トロールを行なう場合、ルアーはフラットラインで流すのがベストであると思われる。その方が、アウトリガーから遠く後方に流すより、ずっと大きな飛沫や水泡を作ることが出来るからだ。ロッドティップから海面への角度が大きくなればなるほど、ルアーのアクションは良くなってくる。したがって、フラットラインをタグラインにラバーバンディングするのは、しばしば逆効果をもたらしてしまう。ゆえに、ロッドティップからのごくシンプルな直引きがベストであると思われる。この原則は、アウトリガーからのハイスピード・トロールにもあてはまる。ラインクリップの位置を高くすればするほど、ルアーヘッドが海面上スレスレに走るようになり、ルアーのアクションはずっと良くなってくる。
ともすれば、ルアートローリング愛好者は色彩ばかりに関心を払って膨大な数の様々な色のルアーを集める傾向がある。しかし、実際には、色彩だけでなく、スロートロールでのアクションの良さも重要な要素なのである。ルアー・コレクションを増やす場合、是非ともそのことを考慮に入れておくべきだと思われる。あなたのタックルボックスにライトウエイトのチャガータイプ・ルアーを幾つか入れておけば、デッドベイトをトロールしたり、彼が荒れたときなど、スロースピードで使用することができるのだ。
もし、今度の釣行で保守的な釣り人がベイトとルアーを同時に使うことは出来ないとあなたに文句をつけてきたら、自分のタックルボックスを開けて、スロースピード・ルアーを彼らに見せてやりなさい。
 

筆者紹介/ドン・マン(Don Mann)

アメリカのビッグゲーム・シーンを語る時には欠かせないライター&フォトグラファー。ただ傍観者として関わるのではなく、自らもロッドを握る。アメリカでは非常に名の知れたアングラーである。事実、すべての9ビルフィッシュを11カ月と1週間のうちにキャッチするという偉業を達成しており、IGFAに認定され、1989年のギネスブックにも名を残している。この記録は当ウェブで紹介したラス・ヘンズリーに破られるまで史上最短のものであった。また、37kg(80Lb)テストラインで810Lbのアトランティック・ブルーマーリンをキャッチしており、栄誉あるIGFA「10to1クラブ」入りを果たしている。共著に「Great Fishing Adventures」があり、「Marlin」「Fishing World」「Florida Sportsman」等に記事を連載している。

 
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