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日本でトローリングと言えば、それはルアートローリングを意味する。ベイトを使用したトローリングはライブのみで、デッドベイトが使われることは非常に少ない。まあ、ライブベイトが比較的簡単に手に入る日本の海では、あえてデッドベイトを使用する必要もないということなのだろうが、海の向こうでは未だにデッドベイトを好む人が多いようだ。最近ではスロースピード用のルアーが市場に出回り、デッドベイトとの併用も可能になった。釣りの幅を広げる意味でもデッドとルアーのコンビに挑戦してみてはどうだろうか。
スロートローリング用ルアーの登場により
デッドベイトと同時に流すというテクニックが可能になった
長年の間、我々の常識では、デッドベイトとルアーを同時にトロールするのは無理とされてきた。デッドベイトの柔らかな魚体はハイスピード・トローリングによってすぐに身崩れを起こしてしまうからだ。ベイトの水分を絞って魚体を固くしたり、あるいはボーンフィッシュのような硬い魚体をベイトに用いる方法もあるが、それはとても一般的なテクニックとは言えない。
とはいえ、実際に海に出た際、どうしてもデッドベイトとルアーを同時にトロールしてみたいと思わせる状況に出くわす時があるものだ。だが、ここで釣り人は大いなるジレンマに陥る。大部分のビッグゲーム・ルアーはハイスピード・トローリング用にデザインされており、そのもっとも効果的な速度は7〜8ノット、中には10ノット以上に設定されているものもある。 |
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そのような速度でデッドベイトをトロールすると、あっという間に魚体は身崩れを起こし、釣り人はベイトの頻繁な交換に追われて疲れ切ってしまうのがオチである。バリフーなどは、それこそ瞬きしている間に、ズタズタになってしまう。生魚であるデッドベイトは保存が効かず、しょっちゅう新鮮なものに取り替えておく必要がある。夏場などは漁獲高が激減し、値段も急上昇してしまう。そのような高価な生魚をこうも頻繁に替えるのはコストパフォーマンスの上からも決して望ましいことではない。
とはいえ、デッドベイトとルアーを同時にトロールするのは無理というこれまでの常識は、現在では通用しなくなった。デッドベイトも短時間では身崩れを起こさないほどの非常に遅い速度で素晴らしい性能を発揮するルアーが手に入るようになってきたのだ。ここで私が言及しているのは、従来のスイミング・タイプのルアーではない。そのタイプのルアーは右に左に激しく動いて、すぐ隣で引いているベイトやルアーに衝突してダメージを与えがちである。スイミング・タイプは、近頃では敬遠されがちになっている。その代わりに、直線かあるいはそれに近い航跡を残すストレートランナー・タイプのルアーがもてはやされるようになってきた。 |
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エクアドルのサリナス沖で効果を確認
デッドベイトとルアーの同時トロールを私が初めて試みたのは、エクアドルのサリナス沖の豊饒な海でセイルフィッシュを求めているときであった。その時も、私はいつものように、この素晴らしいファイターを見事にキャッチする地元の漁師のやり方を見習っていた。地元の海はやはり地元の漁師が一番よく知っているからである。
彼らの標準的な仕掛けは、我々が普通に行なっているセイルフィッシュ狙いのバリフー仕掛けと類似したものだが、幾つかの点に違いがあった。まず、我々のものよりも大きなフック(通常、10/0〜12/0のマーリン・フック)を使い、バリフーは私がそれまでに見た中で最大のサイズ(体長14〜16インチのホース・バリフー)を用いていた。デッドベイトへのフック装着方法は、リーダーワイヤーのショートニードルを両顎に通し、銅線でしっかりと巻き付けるという、我々のやり方と殆ど同じものである。だが、リーダーワイヤーは我々のよりも太めの#12〜#14のものを用い、その長さはたった4ftしかない。さらにその先には大物用のスイベルを経由して300Lbテストのナイロン・リーダーが連結されている。ワイヤーとナイロンを組み合わせたこのリーダー全体の長さは、およそ12〜15ftになる。
このワイヤーとナイロンを組み合わせたリーダーの優れた点は、威勢よく暴れるセイルフィッシュをランディングするとき、ワイヤーよりもずっと安全で吸いやすいナイロンを手繰れるという点にある。はなはだ合理的な考えである。 |
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マーリンがデッドベイトよりも私のセットしたこのフラットラインの方により強い関心を示したとき、地元のクルーは初めて興奮し、大いなる興味を抱いたようだった。太平洋のうねりに乗って、ルアーに接近するマーリンの背ビレが見えると、船長はボートを急加速しながらターンし、さらにマーリンの食い気を誘った。バードの背後にブルブルと激しく震えるマーリンの尻尾が見え、次の瞬間、マーリンは一直線にその背後のルアーに襲いかかったのである。
それ以来、地元のクルーは興奮しつつも真剣な眼差しをバードとルアーに注ぎ始め、“バード”と“ポッパー”という新しい単語が彼らのボキャブラリーに加わることになった。その時から、私の持つスロースピード・ルアーはすべて“ポッパー”と呼ばれることにもなった。
スロートローリング用ルアーとは…
“スロートロール・ルアー”には幾つかのタイプがある。一つは、非常に遅い速度でも、泡立ちが良く、時折、左右に揺れて飛沫を上げる幅の広い凹状フェイスのものである。このタイプは、通常のルアーが8〜9ノットで巻き起こす泡や飛沫を3〜4ノットで得ることができる。このような凹状フェイス・ルアーは、硬質アクリル、軽量レジン、ソフト・プラスチック、木材…等々を用いて、様々なメーカーで製造されている。 |
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木製のチャガー・タイプには、Arbogast社の“Reto”シリーズがある。私はもっぱらこのパナマ生まれの量産ルアーを次のように改造して使っている。まずテール部(鉛が入っている部分)を糸ノコで切断する。次に、ドリルで胴体後部に孔を開け、リードフック(プロスタイルでセットしたもの)をルアーのヘッド近くにマウントできるようにするのである。
市場に出回っている数多くのルアーの中で、私が発見したもっとも効果的なルアーの一つに、Boone社の“Airhead”シリーズがある。その中でも特に、ライトウエイトの“Airhead Popper”と“Air Eye”が優れている。また、同じBoone社の硬質アクリル製の“Sundance”と“Striker”(どちらもポッパー)は、スロースピードかつショートラインで用いても泡立ちが非常に良い。その他には、Moldcraft社の“Synami Softhead Chugger”と“Super Chugger”、Bagley社の“Headknocker”…等々もお勧めできるスグレ物だ。これは、どれもクリアーな色付きプラスチックで出来ており、大量の空気を吸い込んでゴボゴボと泡を立てるようにデザインされており、スロー・トロールにおいても、ハイスピード・ルアーに劣らぬ航跡を残すことができる。マイアミのR&S Lures社から発売された、凹状のコンケイブフェイスの“オールアイ”と“ティアドロップ”スタイルのスロー・トロール・ルアーもなかなか好評だ。 |
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デッドベイトをアウトリガー、
ルアーをフラットで流すのが基本 |
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ルアーとデッドベイトとの同時トロールを行なう場合、ルアーはフラットラインで流すのがベストであると思われる。その方が、アウトリガーから遠く後方に流すより、ずっと大きな飛沫や水泡を作ることが出来るからだ。ロッドティップから海面への角度が大きくなればなるほど、ルアーのアクションは良くなってくる。したがって、フラットラインをタグラインにラバーバンディングするのは、しばしば逆効果をもたらしてしまう。ゆえに、ロッドティップからのごくシンプルな直引きがベストであると思われる。この原則は、アウトリガーからのハイスピード・トロールにもあてはまる。ラインクリップの位置を高くすればするほど、ルアーヘッドが海面上スレスレに走るようになり、ルアーのアクションはずっと良くなってくる。
ともすれば、ルアートローリング愛好者は色彩ばかりに関心を払って膨大な数の様々な色のルアーを集める傾向がある。しかし、実際には、色彩だけでなく、スロートロールでのアクションの良さも重要な要素なのである。ルアー・コレクションを増やす場合、是非ともそのことを考慮に入れておくべきだと思われる。あなたのタックルボックスにライトウエイトのチャガータイプ・ルアーを幾つか入れておけば、デッドベイトをトロールしたり、彼が荒れたときなど、スロースピードで使用することができるのだ。
もし、今度の釣行で保守的な釣り人がベイトとルアーを同時に使うことは出来ないとあなたに文句をつけてきたら、自分のタックルボックスを開けて、スロースピード・ルアーを彼らに見せてやりなさい。 |
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