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DON MANN BIG GAME TECHNIQUES & TIPS
ドン・マンのビッグゲーム・テクニック(8)
Fashions for Trolling Baits Dress for Success
デッドベイトのドレッシング法

写真・文/ドン・マン
訳/西園寺 吟

デッドベイトを用いるビッグゲーム・アングラーは日本には少ない。ビッグゲームそのものがルアーと一緒に輸入された日本では、それも当然かもしれない。事実、デッドベイトを使用することに対して抵抗を感じる人も多く、「わざわざデッドベイトなんか使わなくても…」といった声もあるに違いない。実際にトライしてみるかどうかは別としても、こんな釣り方もあるということは知っておいても損はないだろう。新たな発見があるかもしれないのだから。

 
デッドベイトのドレッシングに使用される各種マテリアル。上左から、スカート、ウエイテッド・フェザージグ、「Sea Witches」、下左から、「Jelly Belly」、「Tuna Clone」、「Accetta Flathead」、ダバラー各種、「Iland Sailure」、「Little Hooker」。

タイトル写真にあるようなドレッシング・マテリアルで、バリフーをドレスアップするとこのようになる。左から、小型ルアーをセットしたもの、バブラー&スカートの組み合わせ、「Little Hooker」、ルアー&バブラー。
 

デッドベイトのドレッシングによりルアーとの境界線が消えた

オフショアー・アングラーたちは、長年の間、自分たちのトローリング・デッドベイトをドレスアップしてきた。そのファッションは時々変わることがあるかも知れないが、それでも、我々の多くはバリフーやムレットを使うトローリング・デッドベイトをあらゆる種類の色鮮やかな衣装で飾り立てている。
実際、私の観察によれば、最近、オフショアー・アングラーはどんどん増え続けているけれど、トローリング・デッドベイトを裸のままで引いている人は反比例するように激減してきたようである。つまり今日のオフショアー・アングラーのほとんどは、自然のままのトローリング・デッドベイトにスカートやバブラー(ポッパーヘッドの一種)などを付け加えたり、さらにはリーダー部分に神のみぞ知るような人工的誘因物をほどこしたりしているのである。デッドベイトをドレッシングするには確固とした理由がある。さらに、最近では天然デッドベイト派とプラスティック・ルアー派の境界線は曖昧になっている。
かつてルアー派を「プラスティック・フィッシャーマン」と批判的に呼んでいた純粋の天然デッドベイト派たちも、今では、自分たちの使うデッドベイトに色鮮やかな飾りをつけるようになったため、かつてのような批判がましい言動も影をひそめてきた。

 

エクアドル、サリナスを例にドレッシング・デッドベイトの効果を見てみよう

デッドベイトに色鮮やかな飾りをつけるような、この新しい試みが実際に成功し、実用化された例を、我々はエクアドルのサリナスに見ることができる。エクアドルの短い海岸線に住む現地民は、何世紀もの間、漁業で生計をたててきた。漁の結果によって、人の生死が左右され、勇気まで試されてきた。つい近年まで、彼らは帆走式カヌーで大物釣りをしてきた。今では、そのほとんどはファイバーグラス製になり、最新型の船外機を備えるようになった。漁に出ると彼らは今でも数日間ほどはるか沖合まで遠征し、ハンドラインと銛でカジキを仕留めるのである。毎年、海辺の村々は、海から戻れなかった漁師たちのために喪に服する。

地元のチャーターボートのオーナー、ナッド・ホルストは、サリナスに繋留した自分のボートのクルーを現地の漁師の中から採用していた。毎年、世界中から腕自慢のビッグゲーム・アングラーたちが大物の魚影を求めてこのサリナスにやってきては、彼のチャーターボートを利用することになった。
伝統的に現地の漁師たちは、マカジキ、クロカジキ、シロカジキなどを釣るためにカヌーの船尾から巨大な「ホース」バリフーを曳いており、ホルストの雇った漁師たちも例外ではなかった。長年の間、この地にはプラスチック・ルアーなどまったく普及していなかった。彼らは、ごくシンプルな天然デッドベイトを使う知識しか持たなかったが、それでも充分に効果的だったのである。
 
ワフー用のリグ。「Ilander」ルアーをバリフーにダブルフックでリグしたもの。

スカート&バリフーのリグ。このようにただスカートを付けるだけでも、視認性が向上し、激しい水の抵抗からベイトを守り、長持ちさせることができる。
  ところが、ホルストのチャーターボートを利用する外国のアングラーたちは、地元ではそれまで見たこともなかったステンレスのフックやクリンピング・ツール、プラスティック・ルアー、ナイロン・スカート、近代工業の産み出した新しいタックルをエクアドルの辺鄙な漁村に持ち込んできた。
ホルストのチャーターボートで雇われていた地元の漁師は、当然、これらの新しいタックルや釣法に関心を抱いた。なぜなら、漁獲数からみても、その方がはるかに効率的だったからだ。外国から来たアングラーがタックルボックスを開けて、中から様々なルアーや珍奇なタックルを取り出す度に、彼らは好奇心に満ちた目でそれらに見入ったのである。
だがそれは70年代前半の話である。今日では、カラフルなドレスをつけないでホース・バリフーを曳いているボートはサリナスではめったに見かけなくなった。その理由は簡単だ。地元の漁師は自分たちの漁獲を高めるために、これらの新しいテクニックをすみやかに取り入れたからだ。当初、これらのカラフルなドレッシングはルアー・トローリングだけに用いられていたが、次第に地元の漁師は馴れ親しんできたバリフー・ベイトにもつけてみることにしたのだ。彼らは、これまで、あらゆる種類の組み合わせをトライしてきたのである。当初、彼らはこれらのカラフルなドレッシングを、バリフー・ベイトの前部のワイヤーリーダーに通すというごく簡単な仕掛けに使った。それでも、このやり方は、従来のデッドベイトだけを単体で用いるよりはるかに、カジキの関心を惹きつけることが分かったのである。
こういったドレッシングには、目に見える効果がいくつかあった。まずひとつは色である。たとえ理由は何であれ、天然以外の色が加わることでストライク率が向上したのだ。また、そのドレッシングが鈍角ノーズを持っていたり、フェイスに孔があいているフラットノーズを持っていたりした場合、アクションや水泡の出方がより激しくなり、ベイトの視認性をさらに強化することも分かった。また、ベイトの頭部に何らかのドレッシングを被せることは、水圧による魚体の損壊を防ぐことにもなった。それによって、従来よりひんぱんにベイトの交換をしなくてもよくなったのだ。これは製氷設備のない辺鄙な土地では、非常に有利なことである。なぜなら、氷で冷やしていなければ、生魚のベイトはたちまち柔らかくなってしまい、釣り場に着いた頃にはすっかりモロくなり、すぐに魚体が崩れてしまうからだ。
70年代中頃、エクアドルのクルーたちは、まず最初にビニール・スカートを試用した。ベイトにスカートをつけるのは、他の国々では別段珍しくもなかったが、この地では新しいものだった。最初に「Sea Witches」のスカートがバリフー・ベイトに試されると、地元ではたちまちヒット商品となった。
しかし、最も彼らの関心を引いたのはスカートではなく、バブラーやルアーであった。それらをドレッシングすることでベイトの視認性が格段に向上したのである。地元の漁師たちは、さっそくこの釣法を自分たちの流儀に改めていった。
70年代後半になると、彼らはワイヤーリーダーに中通しのナス形オモリを加え、その前部にビンのキャップを加工したバブラーをつけていた。その中央には孔が開かれ、さらにその周囲にもドリルで孔がいくつも開けられていた。それをワイヤーリーダーに通し、オモリとバリフーの前端部に装着したのである。それによって、ベイトの後ろには泡立つ曳航の跡が長々とつけられることになった。
  それから数年を経て、サリナス再訪した際、私は「Moldcraft Bubllers」と様々な鮮やかな色の「Tory Accena Bally Bubllers」を鞄いっぱい持参した。クルーである地元の漁師たちの目がそれらに釘付けになった。中でももっとも彼らの関心を呼んだのは明るいオレンジ色のバブラーであった。実際、それをリーダーにつけて曳いてみると、たちまちセイルフィッシュがかかった。地元の漁師たちは自分たちが考案したと信じてきたキャップ製の手作りバブラーが、さらに鮮やかな色彩を加えられて、別の国で製造されていることに驚いているようだった。
 
後刻、私は長さ9インチのスカートを持つティアドロップ形のマーリン用小型ルアーを持ち出した。すると、クルーたちは、そのプラスチックのスカートを3インチほど切り取り我々のホース・バリフーのワイヤーリーダーにルアーを取りつけたのである。このやり方は、ベイト・フィッシングとルアー・フィッシングの両方に素晴らしい結果をもたらした。短くされたルアーは、ドレッシングされたベイトの前にぴたりと収まり、水流からベイトを守りつつ、曳航されるときには大きな水飛沫を立て、クネクネした航跡を長々と残した。私はその翌年にもサリナスへ出かけた。その時までに、彼らは色々と試行錯誤した結果、マカジキには薄緑色か黄緑色がベストであり、クロカジキとシロカジキには青と白、あるいは明るいオレンジ色か赤色系統がベストであることを割り出していた。

ビルの下側に赤いスカートが見える。これは果たしてデッドベイトの効果か、あるいはスカートの効果か? スカート&バリフーにストライクしたストライプト・マーリン。エクアドルにて。
 

市販のドレッシング・マテリアルを検証する

それから20年近い歳月が経過した今日では、偉大な成功を収めたデッドベイトの前につけるルアーの一覧表は、オフショアー・タックル界の紳士録のような感じで読むことが出来る。Moldcraft社の「Softhead Little Hookers」、Acceta社の「Flat Top Jelly Belly」、Tournament Tackle社の「Iland Lures」…等々は、バリフーの前につけられて、どれも素晴らしい釣果を残しているのだ。特に、Acceta社の「Flat Top Jelly Belly」とMoldcraft社の「Softhead Little Hookers」は、波だっているときなどに、ナス形オモリをつけて使用するのにぴったりである。Tournament Tackle社の「Iland Lures」はすでにオモリが内蔵されているので、別のオモリをつける必要はない。しかし、波立ちが激しくなったときには、むろんナス形オモリも付け足すことが可能である。こうすると、荒天用に最適のものとなる
ベイトと組み合わせて使うルアーの中で、この他に人気のあるものは、日本式のフェザージグとその仲間であるキラキラしたマイラー、ナイロン・ジグの「No Alibi」シリーズ……等がある。両者ともカラフルで重さも充分だが、水飛沫を上げるようなアクションはあまりなく、カジキよりもツナ・フィッシングに適している。

複数を組み合わせるやり方はさらに効果的だ。バブラーはスカートの前部に使用することが出来る。それはバリフーとムレットの魚体の上に軽くかぶさりゲームフィッシュの関心を惹きつける。スカートをリーダー・ワイヤーに通すときは、リーダーの上端部で互いに絡まぬように一枚づつ通してゆくようにする。そしてリーダーの下端部は、単純に、あまったリーダー・ワイヤーのショートポストの部分に標準的なセイルフィッシュのファッションでドレッシングする。通常は、この部分には銅線が用いられる。
カジキや他のオフショアーのゲームフィッシュに対して効果的なアトラクターは、まだまだ他に沢山あるはずであり、色、アクション、重さなどを考慮しつつ、新しい試みをするのも充分に価値のあることであろう。
私の個人的見解を述べれば、ルアー対天然ベイトの論争は、今日では無意味になったように思われる。これまで書き連ねてきたことからも分かる通り、今日では、ルアーの進歩は即ベイト・ドレッシングの進歩につながっているからである。
 
こうして見ると、以前は明確に隔てられていたベイトフィッシングとルアーフィッシングの境界線が曖昧になってきているのがよく分かる。
 

筆者紹介/ドン・マン(Don Mann)

アメリカのビッグゲーム・シーンを語る時には欠かせないライター&フォトグラファー。ただ傍観者として関わるのではなく、自らもロッドを握る。アメリカでは非常に名の知れたアングラーである。事実、すべての9ビルフィッシュを11カ月と1週間のうちにキャッチするという偉業を達成しており、IGFAに認定され、1989年のギネスブックにも名を残している。この記録は当ウェブで紹介したラス・ヘンズリーに破られるまで史上最短のものであった。また、37kg(80Lb)テストラインで810Lbのアトランティック・ブルーマーリンをキャッチしており、栄誉あるIGFA「10to1クラブ」入りを果たしている。共著に「Great Fishing Adventures」があり、「Marlin」「Fishing World」「Florida Sportsman」等に記事を連載している。

 
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