かつてタヒチの海に、ゼーン・グレイがロッド&リールで史上初めて達成したグランダー(1,000ポンドオーバー)の面影を求めて釣行したことがある。
1930年5月。サメに200ポンドばかりの上納金を納めてランディングされたグレイの1,040ポンドのパシフィック・ブルーは、バイラオ・ビーチに高く掲げられた。バイラオはタヒチのパペーテから僅か75km、ひょうたん型のタヒチの一番くびれた地峡であるタラバオの南東にある。
彼のこの記録は、ビッグゲームを語る上で、忘れてはならないものである。
そのグレイが、かつて語ったことがある。
「私が釣りをするのはクラブのためじゃない。まして、記録のためでもない。私自身が楽しく、エキサイトできるから。そしてゲームがスリルに満ちあふれているから…。しかし今は、釣り上げて自分のものにするのではなく、出来れば魚を自由に放してやりたいと思うようになった…。」
ゼーン・グレイほど世界のビッグゲーム・フィッシング・クラブの、組織創りに尽力してきた者はいない。また彼は、釣りに関するフェアプレイと、さまざまなテクニックについて多くの貢献をしてきた男でもある。海洋環境の保護についても自身の多くの著作で度々言及し、世界のアングリング・クラブを包括する組織を創設することにも情熱を注いだアングラーであった。
カリフォルニア南西部沖のサンタ・カタリナ島のアバロンはビッグゲーム・フィッシングの聖地として知られている。1898年6月1日に、チャールズ・フレデリック・ホルダーがカタリナ島沖で釣った83kg(183ポンド)のブルーフィン・ツナは、ロッド&リールで釣られた最初の記録として知られている。そして、この記念すべき記録を達成したホルダーは、その僅か2週間後に「ツナ・クラブ」の設立を仲間に呼びかけ、同地に『カタリナ・ツナ・クラブ』が誕生した。設立当初から100年以上を経た今も、同クラブはスポーツフィッシングのモデル・クラブとしてその役割を果たし続けている。実際、同クラブの「アングリングルール」は1939年にマイケル・ラーナーやヘミングウェイがIGFAのルール原案を起草した、その遙か40年ほど前に、既に存在していたのである。クラブのメンバーにより、1903年にはロッド&リールで初めてのストライプト・マーリン(マカジキ)が、また、1913年には初めてのソードフィッシュ(メカジキ)が記録された。 |