雑誌を創るということ
7月10日、雑誌「BIG GAME」が船出した。
9・11のように世界を震撼させる訳でもなく、多くの人々の弥栄(いやさか)がある訳でもなく、ストイックに且つ、ハードボイルドに荒海に乗り出したわけである。もしやもしやと、港のそこかしこに涙ぐむ美女の姿を追ったものの、そこには、いきつけの安い飲み屋の馴染みの女の顔があるだけで、僅かばかりの無責任な激励やら冷やかし、嬌声を後に船出したわけである。
「きのう、二日酔いで朦朧としていた男が今朝、マリーナを出た。どこへ? 南の島へ」。そんな話が好きであるから、波乱万丈の人生を、さり気なく生きることを演じる上でも、今回の船出は私たちには相応しいものであった。
雑誌を始めるときには、いつも思い出す苦い失敗がある。
1983年、私が小さな編集・制作会社を始めたときに「ええい、ままよっ!」と『ビーチコマー』なる雑誌を創ったことがあった。“海とロマンの情報誌”などと銘打ち、一気に3万部を刷ってしまったのである。当時は今以上に能天気な性格で、問屋(取次ぎ)に納めれば、すぐにこれくらいは捌けるだろうと信じて疑わなかったのである。なけなしの軍資金を一気にぶち込み、東販の窓口に意気揚々と見本誌を持って出かけた自分が情けない…。 |