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カジキはカジキ、マグロはマグロ
   
   

もう、“かじきまぐろ”なんて呼ばせない

もう、うんざりである。テレビをつければ似非文化人風の料理タレントが“カジキマグロ”の『ペッパーステーキ』やらを嬉々として作っている。それはそれでよいのだが、会話の中でやたらと“カジキマグロ”と出てくるのが耳障りである。れっきとした氏素性がありながら、いい加減な呼称で火に炙られている“メカジキ”の切り身がなにやら哀れである。ニュース番組でも、新聞でも雑誌でも、まれに“カジキ類”の写真が紹介され、チョイと気をつけて見てみると、ご丁寧にもその多くが“カジキマグロ”と呼ばれている。さすがに“まぐろ”を“かじきまぐろ”とは呼ばないが“カジキ類”はその多くが“マグロもどき”の扱いである。由緒ある“かじき”の扱いがないがしろにされているようで、悲しい。
分類学上、カジキは硬骨魚網…スズキ目…サバ亜目と続き、ここからカジキ上科はメカジキ科とマカジキ科に分類される。メカジキ科はメカジキ属のメカジキ1種。マカジキ科はバショウカジキ属(バショウカジキ、ニシバショウカジキの2種)、フウライカジキ属(フウライカジキ、チチュウカイフウライ、クチナガフウライ、ニシマカジキ、マカジキの5種)、クロカジキ属(クロカジキ、ニシクロカジキ、シロカジキの3種)の2科4属11種に分類されてきた(※しかし、最近の分子遺伝学的検査によるDNA分析結果ではクロカジキ《太平洋》とニシクロカジキ《大西洋》を同種とする声が大きくなっている)。
一方、マグロは、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、コシナガ、ビンナガ、タイセイヨウマグロの7種に分類されている。


1984年3月16日、ハワイ島コナ沖で1649ポンドというウルトラグランダーがキャッチされた。ボートは『BLACK BART』(キャプテンはバート・ミラー)、ファイトタイムは2時間30分であった。“カジキマグロ”なんぞではない“カジキ”の雄姿である!
  巷では往々にして“カジキマグロ”などと呼ばれることの多い“カジキ”ではあるが、系統類縁関係の観点から“カジキ”と“マグロ”を比較すると、両者はそれほど近縁ではないと考えられる。結果、当然ながら“カジキマグロ”などという誤った呼称は使われるべきではない。
では、そもそも“カジキマグロ”という呼称はいつ頃から誤用されるようになったのであろうか?
一説には、「1954年3月1日にビキニ環礁でのアメリカの核実験により被爆した日本のマグロ漁船『第5福竜丸』の惨事を伝える一連の報道の中で、放射能によって汚染されたカジキやマグロを言う際に、誤って“カジキマグロ”という言葉が使用され、以後、マスコミ関係者の間でその言葉が度々使用されるようになってからだ」というものがある。私はまだ、1954年3月以前の新聞などの全データを検証して、それ以前に“カジキマグロ”という表現が使用されていたことがあるのかを調べてはいないのでなんとも言えないが、そういう可能性はあるだろう。
実際、寿司ネタとしてのマグロが、その存在感を示しだしたのはそれほど古いことではなく、東京オリンピック前後からの高度成長期を経て、バブルのなせるわざとも知らず、やれグルメだなんだのと浮かれ出してからネコも杓子もマグロ、まぐろの妙な風潮ができてしまった。安易な食や旅に関するテレビ番組が、ことあるごとに“カジキマグロ!”と垂れ流すものだから始末に終えない。こんな安易な番組やら報道が、日本の将来を担う子供達にとって良いわけがない。全体像を見る機会の少ない大型魚種に関する認識不足だとか、売らんがために思惑だとかが交錯して捻り出された言葉であるかもしれないが、どうにもこうにも耳障りである。
 
かくあれば、カジキを愛する有志たちで、愛するカジキたちの実存を正しく世に伝えるためにも、まずは“カジキマグロ”などという言葉の撲滅運動を展開したいものである。
各地で開催されている『カジキ釣り大会』なんぞは絶好のフィールドワークの場でもあり、まさにビルフィッシャーの独壇場でもあるわけである。釣られたカジキの名誉を晴らすためにも、是非ともその辺りのコメントをギャラリーの方々に伝えて欲しいものだ。カジキという巨大魚を、一般の方々が直接目にする機会など殆ど無い中で、そんなあれやこれやを正確に伝えていくこともビルフィッシャーの役目ではないだろうか?
無念の表情で検量され、吊るされたカジキに「ワァ、大きなカジキマグロ!」などという歓声は、決して野辺の送りの声とはならないはずだ。
いずれにせよ、カジキはカジキ、マグロではない。まして“カジキマグロ”なんぞでは断じてない。これからは、スーパーでも魚屋でも、まずは「メカジキのペッパーステーキを作りたいんだけど……?」という問いかけから始めたいものだ。
 

アメリカ、マサチューセッツ州、ケープ・コッド沖のクロマグロの捕食シーン。ベイトフィッシュを尾鰭からくわえたせいか、この直後には吐き出し、再度捕食している。胸鰭と背鰭を目いっぱい広げた貴重な写真だ。写真/ポール・マーレイ
 
エッセイ/ビッグクルー
   
BIG BLUE(1) はじめに、あれやこれや…
BIG BLUE(2) カジキ、その種の行方は?
BIG BLUE(3) 釣りを正当化するもの…
BIG BLUE(4) “最初の経験”に何を学ぶか…!?
BIG BLUE(5) ビルフィッシュを巡る縁
BIG BLUE(6) こんな時代に誰がした…!?
BIG BLUE(7) 巨魚を釣る資格ある者
BIG BLUE(8) 記録から検証できるもの…!?
BIG BLUE(9) ビッグゲーム、ビッグボーイ。
BIG BLUE(10) 娘たちが父に贈った一冊の本
BIG BLUE(11) 与那国の海にカジキを追う!
BIG BLUE(12) 世界有数の規模と、完成度の高いビッグゲーム・トーナメント(JIBT)が、なぜ斯くも国際的には無名なのか?
BIG BLUE(13) カジキはカジキ、マグロはマグロ
BIG BLUE(14) リリースしたカジキはマカジキ、されど 再捕されたカジキはクロカジキ!?
BIG BLUE(15) “クオリティー オブ フィッシング”その発想を育てるための、さまざまな自己規制
BIG BLUE(16) “バラシ”の体験に何を学ぶか?
BIG BLUE(17) '06 TRY AGAIN!!
BIG BLUE(18) 『BIG GAME』創刊
   
 
 
 
 
 
 
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