「歳月を重ねるほど、遥か異郷の地で行なった幾多のキャンプの想い出は、ますます美しくロマンティックなものになるようだ。なかでもバーマグイでの想い出はとりわけて鮮烈なものである。村落から緩やかに立ち上る小高い緑の丘の頂上からは大洋が一望のもとに見渡せる。断崖は息を飲むほど急峻である。岩石の堆積する海岸は果てしなく続き、そこへ荒々しい波が打ち寄せ、その轟々たる激しい波浪音はいまだにはっきりと私の耳にこびりついている。……釣魚に関して言えば、このタスマン海の濃紺の海は、その激しい潮流と嵐による悪名高さと、その鯨と魚の濃密な群泳ぶりによって、私は釣魚というスポーツに新鮮かつ無根の喜びを見い出さざるを得ないのである。……」(ゼーン・グレイ著“An American Angler in Australia”より、1937年刊)
米国の著名な西部劇作家であり、ゲームフィッシングの開拓者であったゼーン・グレイは、オーストラリア南東部の海辺に佇むバーマグイの村落を初めて訪れたときの想い出を、そう書き残している。