夢を、現実のものとした男がいた。そして彼の現実を夢とする、多くの読者がいた……
想いは、想いを呼ぶのであろうか。
父を想う子供たちの、伸びやかで柔らかな愛情に包まれた一冊の本が、六十余年の歳月を経て、今、私の書棚にある。
その本が子供たちから父に手渡されたのはアメリカのどこの町であろうか。海辺か、それとも凛とした空気に包まれた渓谷の町であろうか。ただ、温かな家庭であったことだけは、容易に想像がつく。
その日は、父の誕生日であったに違いない。二人の姉妹から父に贈られたその本には、次のように記されている。
“To Dad from Edna and Alyce June 19, 1938” |