往年の名チャーター・ボート『BLACK BART』に学ぶ そのマネージメントとハイテクニック(最終回)
これで連続11匹のマーリンを釣った!?
――マーリン(カジキ類)の釣り方にはいろいろな方法があるが、バートのとっておきのマル秘テクニックを教えてもらえないかね? 「デッドベイト(死んだ魚を餌にしたもの)を引きながら、コマセで寄せるのが最高の方法だよ。しかしハワイではコマセは禁止になっているから実際にはやれないけどね(笑)」
――10ノットのスピードでデッドベイトがちぎれてしまわないかね? 「長いこと引いているとデッドベイトの傷みは早いね。そのときは船速を6ノットにして最初からフックを付けてないデッドベイトを引くのさ。するとマーリンはデッドベイトに食いつくよ。そこで急いでフックの付いたデッドベイトと差し替える――このやり方で続けて11匹のマーリンを釣ったことがあるよ」
餌の魚群が泳ぐ速度で“ベイト”を選べ!
――するといままでバートが釣ったマーリンは、殆どがデッドベイトで釣ったの? 「いや、ルアーとベイトと同じぐらいの打率かな。もっともベイトといってもライブとデッドの両方を使い分けているけどね」
死を賭けたマーリンのファイト!
――そのマーリンはまだどこかを泳いでいるのかね? 「恐らく死んだだろう。惜しいことをしたよ。ファイトしたマーリンは全力をふりしぼって抵抗するので、体が酸性になって死んでしまう。30分以内のファイティングでも90%は死んでしまうらしい」 ――それじゃ、タグ&リリースは意味がないということになるね。 「やらないよりやった方がいいだろうが、タグしてからどのくらい長く生きるかね。しかしマーリンを殺すなら殺すでいいけど、スポーツとして殺すのはおかしいね。スポーツフィッシングなどといって殺すのはね。とくにライトタックルなどはハリで突いて突いて突き殺すようなもので、マーリンを馬鹿にしたもんだね。するとライブベイトはほとんどがマーリンを殺す釣り方だが、ばらしの多いルアーの方がいくらかマーリンの保護にはなるね」 ――でっかいマーリンは、魚体のどこにギャフを打てばいいの? 「小さいヤツは胸ビレの下に1本打てばいいが、中型なら背の中心に1本、そして頭に1本打つよ。でっかいヤツは背だけでは身がこわれてしまうから頭にも打って弱るまで待つさ」 ――バートのルアーは全部シングルフックだが、どうしてダブルフックを使わないの? 「シングルの方が完全にフックアップするからだ。ルアーを食ったときにハリ先が口の外側にがっちりと掛かるからね」
最後に
その頃(1986年当時)、バート・ミラーにぜひ会ってみたいと思っていた。 しかしいつも“バートを取材すると高い金をとられるよ”、“評判がよくないからやめた方がいいよ”などと善意で無責任な第三者の独断と偏見に惑わされていた。<br> ところが案ずるより生むがやすし――ままよとばかりにバートに直接電話したところ2つ返事でOK、バートはわざわざホテルまで訪ねてきてくれた。 ホテルの部屋の入口に現れた名にし負うキャプテンは、意外や中肉中背、眼のやさしいフツーのおじさんであった。
バートの家に飾ってあるターポンのマウント